EP 8
蹂躙、それは子供たちの遊び場
爆煙が晴れゆく倉庫の中。
そこは、慌てふためく「赤錆団」の構成員たちで溢れかえっていた。
「な、何だ!? てめぇら!」
「警察か!? いや、子供だぞ!?」
武器を構える大人たち。その前に、金髪の少年が優雅に歩み出た。
土埃一つついていない制服、凛とした佇まい。
「僕の名はクラウス・アルヴィン。アルヴィン侯爵家の嫡男だ」
クラウスは剣を抜き、切っ先を敵に向けた。
「武器を持て、下郎共。……正々堂々とかかってくるがいい」
「あぁ!? 貴族のボンボンかよ! 舐めんなあああ!!」
一人の男が怒号と共に、懐から『魔導銃』を取り出した。
引き金が引かれ、殺意のこもった魔力弾が放たれる。
「死ねぇ!!」
だが、その弾丸がクラウスに届くことはなかった。
「あぁん、危ないなぁ」
甘ったるい声が響いたかと思うと、ドンッ! という衝撃音が響いた。
魔導銃の銃身が、「何か」に蹴り折られてひん曲がっていたのだ。
「は……?」
男が呆然とする目の前には、誰もいない。
いや、天井だ。
「遅いよ、おじさんたち」
キャルルが壁を蹴り、天井の梁を足場にして疾走していた。
その速度は、音速の壁――マッハ1を超えんとする領域。
兎族の脚力と、『タロー・ワークマン』製安全靴のグリップ力が生み出す超高速機動。
「み、見えねぇ!」
「どこだ!? どこに行きやがった!」
男たちが視線を彷徨わせる。
その隙だらけの背後に、キャルルが降下した。
「ここだよっ☆ ――『月影流・流星脚乱舞』!!」
ドカッ! バキッ! ゴスッ!!
キャルルの体が残像となる。
右の敵を飛び蹴りで吹き飛ばし、その反動で壁を蹴り(三角飛び)、左の敵の延髄に踵落としを決める。
地面に着地することなく、空中でピンボールのように跳ね回りながら、次々と大人たちを沈めていく。
「ぐはっ!?」
「あがっ……!」
一瞬にして5人が宙を舞い、白目を剥いて崩れ落ちた。
「キャルル! 俺様の獲物を残しておけよ!」
続いて、破壊神イグニスが巨大な斧を片手に突っ込んできた。
彼は逃げ惑う敵の集団を見つけると、ニヤリと笑い、大きく息を吸い込んだ。
「ガハハハ! まとめて消し炭にしてやるぜ! ――『大火炎』!!」
ゴオオオオオオオッ!!!
イグニスの口から、扇状の紅蓮のブレスが放射される。
それは倉庫内の木箱やバリケードを一瞬で灰に変え、敵たちを熱波で飲み込んだ。
「ぎゃあああああ!!」
「あちぃぃぃ! 燃える、燃えるぅぅぅ!」
「お助けええええ!」
直撃こそ避けたものの、服に火がついた男たちが悲鳴を上げて転げ回る。
地獄絵図だ。
「……野蛮だな。服が焦げる臭いがする」
そのカオスの中、クラウスが静かに剣を掲げた。
「フィニッシュは僕だ。これ以上、無様に踊るな」
彼の剣身に、青白い雷光が収束していく。
アルヴィン流剣術、対集団制圧技。
「――『サンダー・フラッシュ(雷光閃)』!!」
バリバリバリバリッ!!!
クラウスが剣を振るうと同時に、高圧電流が床を走った。
鉄製の床材が導体となり、逃げ惑う敵たちの足元から電流が駆け上がる。
「「「アバババババババババ!!!」」」
漫画のような悲鳴と共に、残っていた10人以上の構成員が一斉に感電し、直立不動で痙攣した。
そして数秒後。
全員が黒焦げのアフロヘアーになり、口から煙を吐いてバタバタと倒れた。
シーン……。
静寂が戻った倉庫には、子供たち3人と、ピクリとも動かない大量の大人たちが転がっていた。
「……ふぅ。準備運動にもならないな」
クラウスが剣を納め、髪をかき上げる。
その背後から、俺がフライパンを持ってのんびりと現れた。
「お疲れ。……調理完了だな」
あまりにあっけない幕切れ。
ルミナス少年探偵団の初陣は、完全なる蹂躙劇で終わったのだった。




