EP 7
突入開始、正面玄関は爆破するもの
「邪魔者は消えた。……さあ、パーティーの始まりだ」
俺は震える大人たちを背に、アジトである巨大な倉庫の正面に立った。
分厚い鉄の扉が、俺たちの行く手を阻んでいる。
ピッキング? 合鍵?
そんな面倒なことはしない。料理も戦闘も、下準備は派手にやるのが流儀だ。
俺はマジックポーチから、一張りの弓を取り出した。
『ネット通販』で購入した、競技用コンパウンドボウ(魔改造済み)だ。
俺は弦を引き絞り、矢を添える。
呼吸を整え、丹田に力を込める。
「――闘気よ、纏え」
俺の体から、黄金色の闘気が噴出し、矢に螺旋状に絡みつく。
「……炎よ、爆ぜろ」
さらに、イメージするのは高火力のコンロの青い炎。
魔力を上乗せし、矢じりに圧縮された爆炎を宿らせる。
ギリギリと弓が軋む。
エネルギーが臨界点に達した。
「行くぜ! 必殺! フレイム・アロー(紅蓮爆矢)!!」
ヒュンッ!!
放たれた矢は、もはや矢ではなかった。
紅蓮の炎を纏った流星となり、一直線に鉄扉へと吸い込まれる。
ドゴオオオオンン!!
凄まじい轟音と共に、爆風が巻き起こる。
分厚い鉄の扉は飴細工のようにひしゃげ、蝶番ごと吹き飛んだ。
もうもうと立ち込める黒煙と熱気。
正面玄関だった場所には、巨大な風穴が空いていた。
「へっ、派手だなぁ」
その熱風を浴びて、イグニスが楽しそうに笑う。
竜人族の彼にとっては、この程度の熱さは心地よい風のようなものらしい。
「……リアン。もっと知的に出来ないのか? 隠密行動という言葉を知らないわけじゃあるまい」
隣でクラウスが剣を抜きながら、呆れたように眉をひそめる。
俺は弓を肩に担ぎ直し、鼻を鳴らした。
「ドアノック代わりさ。それに、中の温度を上げておけば、悪い菌(犯罪者)も消毒できるだろ?」
「あぁん、もう! 私、サウナに入りたくないよぅ! 毛皮が痛むじゃん!」
キャルルが長い耳をパタパタさせながら文句を言う。
確かに、ウサギに高温多湿は厳禁だ。
「文句を言うな。……秒で片付ければいいだろ」
「ちげぇねぇ!」
イグニスが背負っていた巨大な両手斧を軽々と振り回した。
彼の腕力なら、戦車すら叩き斬る重量級の武器だ。
「行くぜぇぇ!! 一番乗りぃぃぃ!!」
「あ、こら! 抜け駆けはずるいぞイグニス!」
イグニスが雄叫びを上げて煙の中へ突っ込んでいく。
もはや作戦もフォーメーションもあったものじゃない。ただの暴走機関車だ。
クラウスは深いため息をつくと、優雅に剣を構え、スタスタと歩き出した。
「……野蛮な。まあいい、露払いは任せよう」
彼は煙の向こうで慌てふためく敵の気配を見据え、冷徹に呟いた。
「我が剣の錆になれ」
最強の突撃隊長二人が、アジトの中へと消えていく。
俺はキャルルに目配せをした。
「俺たちも行くぞ。……狩りの時間だ」
「らじゃーっ!」
俺たちは爆煙を突き破り、敵陣の真っ只中へと躍り込んだ。




