プロローグ~クラス最底辺の俺は、死亡フラグが見える~
※本作は「誰かを救う選択」が、必ずしも正解にならない物語です。
アスターは、クラスで一番どうでもいい存在だ。
成績は平均以下。運動はできない。友達もいない。
昼休みはいつも一人で席に座り、スマホを見ている――ふりをしている。
誰とも関わらない。
それが、俺の生き方だった。
理由は単純だ。
人に触れると、その人が死ぬ未来が見えてしまう。
最初に見たのは、小学生の頃だった。
転んだ拍子に手を掴んだクラスメイトの首が、赤い線で断ち切られる映像が、脳裏に流れ込んできた。
数週間後、その子は交通事故で亡くなった。
偶然じゃない。
そう確信してから、俺は人との接触を極力避けて生きてきた。
――なのに。
「大丈夫? アスターくん」
その声と同時に、柔らかい感触が腕に触れた。
スズラン。
2年生の中で一番有名な、誰にでも優しい少女である。
クラスの天使と呼ばれている存在だ。
こんな俺にまで声をかけてくれるのだから、天使以上の存在だろう。
視界が、暗転する。
夜の校舎。
崩れ落ちる建物。
血に染まった地面。
どの未来でも、スズランは確実に死んでいた。
息が詰まる。
「……触るな」
反射的に、彼女の手を振り払っていた。
スズランは目を丸くし、それから少し困ったように笑う。
「あ、ごめんね。具合悪そうだったから」
違う。
悪いのは、俺だ。
彼女が離れた直後、ポケットの中でスマホが震えた。
見覚えのない通知が表示される。
《死亡フラグを確認しました》
《対象:スズラン》
《世界難易度:Lv1》
意味は分からない。
だが、一つだけ理解してしまった。
――この少女を助けようとすれば、世界が壊れる。
それでも。
何も知らずに笑っているスズランから、
俺は、目を逸らすことができなかった。




