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宗一の屋敷にて

宗一と紫音は月明かりに照らされながら、静かに竹林の中を歩いていた。二人の足音だけが響く中、紫音は先程までの喧騒と全く異なるこの静寂に、少しずつ戦国時代の現実を感じ始めていた。


やがて、竹林を抜けた先に小さな屋敷が見える。月明かりに照らされたその屋敷は、古びてはいるが丁寧に手入れがされている様子だった。宗一は先に屋敷へと入り、灯りをつけると振り返って紫音を手招きした。


「さあ、入れ。今夜は冷える。体を休めるといい。」


紫音は促されるまま屋敷の中へ足を踏み入れた。畳敷きの居間に通され、古風な造りの空間に思わず目を奪われる。


しばらくすると、台所の方から鍋を持った宗一が現れた。


「大したものではないが、腹は満たせるだろう。」


そう言いながら、彼は慣れた手つきで夕食の準備を整えた。鍋の中から立ち上る香りは、素朴だが温かみのあるものだった。

紫音は、まさか戦国時代でこうして人と食卓を囲むことになるとは思わず、不思議な感覚を覚えた。


二人は食事を取りながら、ゆっくりと会話を始めた。


紫音は「……これから、どうすればいいのか、正直分かりません。」と箸を持つ手を止め、宗一を見つめる。

「現代に帰りたいのはもちろんですが、どうやって帰ればいいのかも……。」


「そう焦るな。まずは事の経緯を整理し、手掛かりを探すことだ。」

宗一は真剣な表情で紫音に向き直る。

「そなたが言っていた。妖怪を払った後に時空を越えたのだと。その妖怪たちの中には、時を操る術を知る者もいるやもしれぬ。」


紫音はその言葉に驚き、そして希望を見出したような表情を浮かべた。


「妖怪が……帰る方法を知っているかもしれない……?」宗一を見つめ少し考えると

「でも、どうやってそんな妖怪を探せば……?」と聞き直した。

自分の顔を軽く触りながら「拙者も、同じような境遇だ。」

「妖怪を退治した際、呪いによってこの顔にされてしまった。それ以来、異様な力を持つ者たちとの縁ができた。妖怪たちの中には、尋ねるべき者がいるかもしれぬ。」


紫音は彼の猫の顔をじっと見つめながら、その言葉の重みを感じた。

宗一自身も、妖怪によって人生を狂わされた存在だ。その彼が助けると言ってくれていることが、紫音の胸を温かくした。


「わかりました……。ありがとうございます。あなたの力をお借りして、一緒に方法を探したいです。」


「よし、決まりだ。」

宗一は少し笑みを浮かべながら紫音を見つめ

「まずは近隣の村で情報を集めるところから始めるとしよう。妖怪の噂があれば、それを追う。」


二人の間に、静かだが確かな信頼が生まれた瞬間だった。紫音は、こんな不思議な状況であっても宗一の存在が心強く思えた。


夜が更け、二人は居間に置かれた灯りの下で語り続けた。現代の話、戦国時代の話、そしてお互いの境遇。笑い声も交えながら、紫音と宗一の絆は少しずつ深まっていった。

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