回生
「お前が、ここに呼ばれた理由。分かるな?」
島に平穏が訪れ、島民に笑顔がとり戻った。
アセビが根絶された。
アセビの治療薬を、天月玲央が量産させたのだ。
「えぇ、分かってます」
一か月前の学園と港倉庫の騒動は、多くの血を流し、島民に不安を与えてしまった。
その上、俺自身は何の役にも立たなかった。
むしろ、足を引っ張ってしまった。
島民を安心させること、警察のメンツを保つため。
俺は偽物の犯人を作り出そうとした。坂崎奏斗。彼らには本当に申し訳ないことをした。
「では、手短に……本部正幸。お前を降格処分とする」
「降格だけなんですか⁉ 左遷とかは……」
「なんだ、左遷されたかったのか?」
「いえ……」
「お前はこの島の人間に信頼されている。だから、この島の人たちの信頼に、死ぬ気で応えろ。良いな」
「……はい!」
あの後。死んだはずの赤羽紫苑は生きていた。
けれど、彼はこの島から逃げてしまい。きっとこれから本土の警察が彼を追うだろう。
島に放たれた、犯罪者たちは天月玲央の霧雲組が一掃。
全員、本土の刑務所に強制送還だ。
一連の騒動の犯人として、長谷川リナが逮捕され、彼女もいっしょに連れていかれた。
警察に出来たのは、後処理だけ。
警察としてのメンツは丸つぶれ。今は学園と港倉庫の修理作業をして、何とか信頼の回復を図っている。
「はぁ、これから頑張らないとな!」
学園の荒れ具合は相当ひどい。夏休みが終わるまでには、何とか修復させないとな!
***
「オヤジ、加藤の件どうなりましたか」
「お、来たね向井。あと、事務所の中ではオヤジって呼ばなくていいよ。オレまだそんな歳じゃないし、年上にそう言われるとなんかね……」
俺は、天月との殴り合いの後。加藤の身柄を警察から譲ってもらった。本来なら、不可能な話だが、天月さんの権力をフルに使って何とかなった。
俺の家族を襲った犯人は、島に来た犯罪者、そのボス二人によるものだった。
加藤に拷問の末、吐かせた。……天月さんが。
そしていま、俺は加藤とボス二人と対面していた。
「天月さん、これは?」
「君の家族を傷つけた三人」
俺の目の前に立つ、三人は言い表せないほど惨い姿になっていた。
「まだ生きてるよ、でもこいつらには死んでもらう。俺のシマで好き勝手やって、向井の家族に手を出したんだ。当然だよね」
天月は普段は優しい。だから忘れてしまうが、こいつはヤクザだった。
でも、どんなときでも人のことを思える優しい人だ。
だって、俺の気持ちを汲んで、こいつらを生かしておいてくれたのだから……
*
「向井。お前の目的はもう果たせた。これからどうするんだ?」
三人を殺し、燃やした後。天月は聞いてきた。
殴り合いが終わってから、俺は天月さんの元で養ってもらっていた。
家が壊されていたから……。
「俺は……」
天月さんには、この一ヵ月本当に良くしてもらった。
「天月さんの、霧雲組の一員になりたいです」
「分かった。俺達は来るもの拒まず去る者追わずだ。好きにしな」
「天月さん! 来たよ!」
「おぉ! 葵、元気だったか?」
天月さんの人望はすごい。
葵たちとも仲良かったらしい。
「事件の事、話せずに悪かったな。俺が話してれば港倉庫に行く必要なかったんだろ?」
「しかたないよ。紫苑さんのこともあったんだし」
「そういってくれるとありがたいよ」
「向井さん!」
「ん? どうした、葵」
「奏斗さんから伝言! 「もう、人に向かって銃撃つなよ」だって」
「もちろんだろ」
奏斗、もう島を去ったのか。
まぁ、仕事も終わったんだし当然か。
「次会う時は、酒飲み合いたいな……」




