無敵
「俺の家族を襲った、奴らの事を知っているか」
人気の少ない、路地裏。
島の外から来た犯罪者が多くいる。
こういう、ゴミはひかりの当たらない影に集まる。
「加藤という男のことを知っているか」
何度も、何度も、何度も何度も何度も何どもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんどもなんども
あの瞬間の夢を見る。
涙を流した、娘の姿は。俺の心を蝕む。
俺が、守ってやると言ったのに。俺の存在意義だったのに。
俺は守れなかった。俺は、復讐に残りの人生。その全てを捧げた。
「し、知らない! 本当だ! だから、ゆるしてくれぇ」
死に直面すれば誰だって、素直だ。
でも、だれも加藤とのつながりを持たない。
「……加藤の元に行くしかないのか」
俺は、俺自身を制御できない。
きっと、あいつを目の前にしたら、奴を殺してしまう。
俺を止めてくれる、奏斗も今はいない。
でも、行くしかない……。
「お前、一体何人俺の仲間を可愛がれば気が済むんだ?」
その姿は見覚えがあった。けれど、名前も分からないし、誰だったかも思い出せない。
「だれだ、お前」
「天月玲央」
あぁ、思い出した。たしか、紫苑を殺した男。
でも、紫苑は実際は死んでいない。 つまり、こいつは紫苑の協力者。
「悪いけど、こいつらは俺の仲間で、お前の期待には応えられないと思うぞ」
「そうか……悪かったな」
紫苑の協力者だろうと、こいつが悪か正義か。
そんなのはどうでもいい。
こいつらは、俺の期待に応えられないというのなら、価値はない。
「おい、待てよ」
「あぁ?」
「俺はこいつらのトップでよ、紫苑との約束の為にわざわざ、島の外から来てもらってんだ。それなのに、こんなことされて、こいつらに申し訳がねぇし、俺のメンツが立たねぇ」
「で?」
「俺とタイマンしろ。もちろん、お前が勝ったらお前の欲しがっている情報を教えてやる」
「手加減はしない。お前のメンツをつぶしてもいいんだな」
「もう、俺に潰されるほどのメンツなんてないよ。あるのはくだらないプライドを背負ったこれだけだ」
天月は服を脱いだ。
その背には、侍の入れ墨。
「俺のこの背には上杉謙信が彫られている。大切な人達を守り続けた、武神だよ」
「俺はこれを彫った時に誓った。大切な者を守るために戦うってな」
「御託はいい。お前の信念もプライドも、復讐という怒りには叶わねぇんだよ」
銃は使わない。こいつは脅さなくても、話すだろう。
「いくぞぉ!」
天月はその右腕を大きく振るった。
俺も、右腕を振るい、天月の顔に向かって放った。
「「ぜってぇ負けねぇ!」」
右拳を振るい、左拳をぶつける。
泥臭い、殴り合いで、額がはじけ血が流れる。
それでも、互いに一歩も引くことはなく、ただ互いにダメージを蓄積していく。
「オヤジ!」
天月は、部下からオヤジと慕われている。
背中に彫られた上杉謙信。
その特徴は、この島の極道組織「霧雲組」に一致した。
島の歴史と共に歩んできた、極道組織。
島の人を大切に思い、島の人たちの為にその力を振るう、
島の外では警察と極道は犬猿の仲。敵同士のような関係だが。
この島では違う。共に島の平和を保つ仲間なのだ。
少し前に組長さんが変わってからはその名を聞かなくなっていたが。
こいつは、天月玲央は霧雲組の組長なんだ。
「だとしても、俺は負けない!」
「オレも負けられないんだよ!」
血しぶきが舞う。でも、だれも止めることはできない。
痛みが全身を駆ける。でも、あいつらに比べたらこんな痛み……。
「これで最後だぁ!」
二人の為にも、俺は踏み込んで、全身で全力で、振りかぶる。
天月はそれを受けに入る。
右手に、痛みが響く。ドカンと、大きい痛みだ。
痛みで体は一瞬硬直する。体が悲鳴を上げているんだ。
わりぃな、これで最後だ
振りぬいた拳は、天月を吹き飛ばした。
オヤジ! そう叫んで、取り巻きは天月の元にかける
「……アッハハハハ! 久しぶりにお前みたいなやつにあったよ」
「俺の負けだ。約束通り、お前に協力してやるよ」
俺に、仲間が出来た瞬間だった。




