戦況
あぁ、まだ体が痛い。昼の怪我も応急処置程度しかしていないから、傷が開いてもおかしくないな。
奏斗たちの会話は、通信機で聞こえてはいたが、聞いてて大分頭こんがらがって来たな……。
一度、整理するか。
***
アセビ、島民千人にも満たないこの小さな泉五島で蔓延する人為的に作られた、ウイルス。
感染したら、最後。必ず死ぬ。
治療法はない。感染を防ぐ術はない。
アセビの感染=死
それはこの島に植え付けられた恐怖だった。
ある時、この島の医者である赤羽紫苑が治療薬を完成させたと言った。
その話を聞いた、天月玲央は、治療薬欲しさに紫苑を殺害。
しかし、治療薬はそこにはなかった。
紫苑は生前、治療薬を島の各所に隠していたという。
争いが起こる事を予期して。
その噂は一夜にして、島全土に広まり、島は一夜にして混沌に包まれた。この島にある五つの治療薬を巡って……。
治療薬の一つは島の中央部にある学園に隠されていた。
それを巡って、葵、颯太、香織の三人で、加藤が率いる敵を倒し治療薬を一つ。獲得。
その治療薬は、颯太に使用し彼はアセビの呪縛から逃れられた。
学園内で、葵は奏斗と知り合う。
奏斗は紫苑に依頼され、島に来ていた。
学園での騒動のあと、アセビは人為的に作られたものではないか。
そう、葵たちは推測立てた。
その推測が正しいと判断するためには、情報が足りなかった。
紫苑は生きている。限られた情報の中で、結論が出た。
奏斗なら紫苑に接触が出来るかもしれない。
その一心で、依頼で指定された場所。港倉庫に彼らは向かった。
*
港倉庫には、奏斗ではなく、俺が葵たちに同行した。
奏斗は、学園で知り合った向井と名乗る男の復讐に協力するため、葵たちとは別れた。
葵たちは、香織を新しく仲間にして、四人で行動をしていた。
全員で、港倉庫に着いたとき。事件が起きた。
紫苑の仲間の長谷川という看護師と多くの島外の犯罪者が、港倉庫にいた。
長谷川は、紫苑の日記と仕事道具を島の外で廃棄してほしいと渡してきた。
その後、犯罪者の不意打ちで、俺は敵につかまった。
葵たちが助けてくれて、倉庫内の犯罪者は撃退し、犯罪者たちのボスの二人も警察と協力することで捕らえることが出来た。
紫苑の日記は、俺がややれた時に奪われた可能性が高い。
あれがこっちの手にあったなら、こうはならなかったのかもしれない。けれど、過去に「もし」はない。
今できることを全力でやるだけだ。
港倉庫での騒動が終わって数時間もしない間に、葵君が一人灯台に向かったと香織ちゃんたちから連絡が入った。
奏斗とオレは通信機でいつでも連絡を取れるようにし、俺と、伊織ちゃんは灯台の近くの森で待機していた。
通信機から聞こえた紫苑の話はこの事件の点と点を結んでいった。
まず、アセビを作り出したのは紫苑。
しかし、アセビとは妹を助けるためにつくった治療薬の、失敗作。
それを長谷川が複製し、広めたのがこのアセビの真実だった。
長谷川と紫苑はおそらく、過去で接点があり。
これは推測に過ぎないが、長谷川は紫苑のことを恨んでいる。
その結果、紫苑の妨害を行っているんだと。
情報をある程度聞いた後、奏斗は紫苑の前に姿を現した。
そこで、二人である約束をした。
奏斗は紫苑に一切の危害を加えない。
その代わり、紫苑は奏斗に自分の知っている情報をすべて渡す。
その時、誰かが通報し灯台に警察がやって来た。
紫苑は警察に捕まる訳にもいかないから、灯台から逃げ出した。
***
……なかなかにクソみたいな状況だな。
俺の仕事は紫苑を追って、紫苑の持つ情報を得る事。
おそらく、紫苑の持っている情報の中にはアセビの治療薬のこともあるんだろう。
なら、絶対に逃がしたらダメだな。
「三人とも! 少しペース上げるよ。ついてきて!」
俺は、紫苑の元に駆ける。




