始動
「遅かったね、長谷川……いや、森永って呼んだ方がいいかな?」
「いえ、長谷川でいいですよ」
「そっか……」
痛い、痛い、痛い痛い痛い……。
長谷川に刺された箇所から熱を感じる、でも、体は震えるほど寒い。
あぁ、もう死ぬのかな……。
いつ死んでもいい、そう思ってはいたけど……。
香織との約束も果たせなかったな。
――香織、先に行くね……
「さてと、長谷川」
「なんですか? 紫苑さん」
「死んでくれる?」
乾いた破裂音が真っ暗闇の中、響く。
俺はその音にもう、恐怖も感じなかった。
俺の意識は、無くなった。
***
「はぁ、君たち最悪なタイミングで来ちゃったね」
灯台の展望デッキに横たわる二人。
血の匂いが、電子タバコの味を劣化させてくれる。
気分は最悪。そこで倒れる女のせいで俺の人生は、狂わされたのだからな。
「君は確か葵君のお友達……、名前は確か奏斗君だっけ?」
「同年代の野郎に、君付けなんてされたくないね、恥ずかしい」
意外だな、もっと怒りを露わにすると思っていたのに……。
「そっか、なら呼び捨てでいっか。でも、この場を見られた以上そう簡単に終わるとはいかないよね」
葵君の仲間は、香織ちゃんと颯太君、伊織ちゃん。
それと、向井さん、奏斗君、夜くんだっけ?
その中でも、一番めんどくさいやつだね……。
「状況的に君が勝てるわけないけどどうするつもり?」
「この島の混乱を引き起こしたのは僕さ、頭のいい君ならこの言葉の意味を理解してもらえるとありがたいけど」
「自分の命引き換えに、この島をさらなる混乱に落とせるって?」
「そういうこと」
「……脅すには相手が悪くないか? 俺は結局この島がどうなろうと関係ないんだぞ?」
揺らがない。これは、さすがにゲームオーバーかな……
「しかたない、僕の負けだよ」
この状況を切り抜けるには、こうするしかない。
「おっけ、じゃあ暫くは俺の監視下にいてもらおうか」
なんで、ここで君が来るんだか……。
「「颯太」」
颯太くんは、俺に向かって駆けてくる。
殺意高いねぇ……。全く困ったものだね。
「止まれ!」
「奏斗君いいねぇ、ありがたいよ」
奏斗君が颯太君を止めてくれた。
「奏斗さん! どうして!」
「今の君は冷静じゃない。話しても理解はできないよ」
「お前も、そこを動くなよ? 少しでも怪しい動きをしたら殺す」
「おぉ、こわ」
さて、どうやってここを切り抜けようか。




