地獄
奏斗は言った。
「みんなと合流しよう」
俺は、拒絶した。奏斗の誘いを……。
復讐と言う目的を果たすまで、俺は葵くんに会う気はない。
「なら、一つ頼み事してもいいか?」
「物による」
「この島に大量の犯罪者がいるらしい。そいつらをできるだけ捕まえてほしい」
「……」
俺は、何も言うことなく奏斗と別れた。
俺の目的は二つ。
俺からすべてを奪った加藤とその仲間を殺すこと。
それと、この島を守る事。
決意は決まった。
*
「お前、見ない顔だな」
夜闇に沈んだ町。商店街の路地裏。
深くフードを被った男がいた。
その顔はあまり見えない。でも、その目を見ればわかる。
俺と同じ目をしているから。
「……ッチ」
男は、襲い掛かって来た。
「バンッ!」
男は一瞬で動きを止めた。
誰だって、銃を突き付けられたら動きは止まる。
それこそ、奏斗みたいなやつらは例外だが。
「死にたくなければ、話聞かせてもらおうか」
復讐にも、何にも情報は必須だ。
「まず、一つ。お前は誰の指示でここに居る」
「……」
沈黙か、なら答えは一つ。
吐かせればいい。
「じゃあ、足一本」
容赦なく、男の足に向かって発砲する。
夜の静寂を破裂音が木霊する。
男は低い声で唸る。
「話す気になったか?」
「言うかバーカ!」
もう一度、音が響いた。同じ個所を狙って。
「次は、反対の足だな」
ただ、妙だ……。
こいつ、震えている。痛みじゃなく、恐怖で。
「今死ぬのと、裏切って死ぬのどっちがいい」
だから、確証を得るために鎌をかけてみた。
「い、言わない……」
目も泳いでるし、この動揺。こいつらを動かしているボスがいるのは確実。
「じゃあ、苦しみの中で死んでいけ」
苦痛を与え続けた。後悔するまで。
傷つけ続けた。情報を吐くまで。
流れる血は、俺に返り血となってベトッと張り付く。
心底、気持ち悪い。
昇りつつあった月が沈み始めたころ。
男はとうとう観念した。
「俺達は、レオナさんたちに誘われてこの島に来ただけなんです!」
「レオナもどうせ誰かから誘われたんだろ? その人間のことをきいているんだ!」
こいつらは、おそらく加藤から誘われてここに来た。
どこかで、きっと加藤につながる道がある。
その道のさらに先に、家族を苦しめたやつらがいるはずなんだ。
「そこまでは知らない。俺は、本当に誘われただけなんだ!」
「そうかならいい。じゃあ次だ、俺の家族を襲ったやつらの事知ってるか?」
絶対にいつか、殺してやる。地獄に逃げようが地獄よりも圧倒的な苦しみを与えてやる。
***
「刑事さん、この島の向井という人間は危険だ。警戒しときな」
――あいつは復讐に走っているからね。




