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ダレガタメニ  作者: 猫宮いたな
港倉庫戦争
38/50

連鎖


「な、なんで……。一体だれが……」


***


「今日は、みなさんに人命救助について授業を受けてもらいます」


 学園で、行われている特別授業。

 学院の全校生徒、教師含む、約五百名が体育館に集合していた。 


 その中に彼女はいた。看護師の長谷川リナ。

 俺がこの島に来てから一年がたった頃、やって来た。


 彼女は異常と思えるような執着心があった。俺に対しての。

 行動一つ一つ、どこか嫌悪や不快感を感じるほどに不気味だった。


 彼女は、決してプライベートを明かさない。

 それどころか、仕事以外で誰ともかかわろうともしない。

 俺以外の人間には全く。


 逆に、俺に対しては積極的に距離を縮めようとしている用だった。


「じゃあ、そこにいる君! 私の助手として手伝ってくれるか?」


 長谷川が指名したのは、中等部の女子。

 長谷川はその子に心臓マッサージを丁寧に教えた。

 一見、おかしなところはない。


 人間のそこにある思惑なんて知る事などできないのだから。


「じゃあ、協力してくれた君には、このお薬型のラムネをプレゼントしよう!」


 特に問題もなく、特別授業は終わった。その時は……。



「先生! 娘を助けてください!」


 特別授業から数日後。

 ある日唐突に、一人の少女が急患として運ばれた。


 その症状は、絶対にありえないものだった。


「これは……」


 俺は、ある研究をしていた。とある病気の薬の研究を。

 妹の病気を治す為に、寝る間も惜しんで研究をした。


 でも、完成なんて夢のまた夢。


 それでも、いくつかの薬を作り出した。未完成品。

 一つは、激しい吐き気を催す。

 一つは、アナフィラキシーショックを起こし、命の危機にもなりえる、危険な劇薬。

 一つは、ただの風邪薬。


 そして、運ばれてきたこの子はその薬と同じ症状があらわれていた。



「先生、娘は⁉」


「症状は落ち着きましたが、暫くは安静にしてもらいます」


「……そうですか、ありがとうございます」


 俺の心は、落ち着かなかった。

 ほぼ確実に、俺の薬のせいでこうなっているんだ。

 それがバレれば、妹の病気はどうなる?


 それでも、何も知らないご両親は安堵し、病室を去った……。


「……先生、今の子どうでしたか?」


「長谷川……。命に別状はない、ただ暫くは安静にしてもらうよ」


「よかったですねぇ……。死ななくて」


「‼ お前! 何言ってんだよ‼」


「えぇ~? 危険な薬の管理もできていない先生が悪いんじゃないですかぁ~?」


「お前が、奪ったのか!」


「確かに、私が薬を奪いましたよ? でも、考えてみてくださいよ~。人の命を奪ってしまうかもしれない劇薬の管理もできない、そもそもそんな危険な薬を作った医者と、それを間違えて与えた看護師。世間的にはどっちが悪いと思いますか~?」


「……ッチ」


「先生は、妹さんの為に仕事を失うわけにはいかないですもんねぇ~」


 その全てを知ったようにすべてを見透かしたように何かを語る。

 俺は、その時に悟った。彼女には逆らえないと……。


 最悪はそれだけじゃなかった。

 俺は自分の薬を量産しやすさを求めて、簡単な作りのものだった。

 それが良くなかった。薬はあっという間に長谷川によって量産されてしまった。


 その薬は人を傷つけるために利用され続けた。長谷川の手によって。

 予防接種と言い、多くの島民に薬を投与し続けた。


 俺は、長谷川に対抗するために、薬を作り始めた。

 しかし、その薬を作るのは難航した。 


 負の連鎖は、止まらない。

 徐々に、その傷口は広がり、どんどん塩を塗りこまれていく。


「薬の症状、悪化しちゃってるね~」


 それは、想定すらしなかった最悪だった。

 原因は分からない、ただ、薬を接種された人達の症状が急激に悪化していったのだ。

 

 もともと、命を脅かす危険はあった。でも、正しい対処さえすれば、命の危険はない。そのはずなのに、一人また一人と、命を失う人が増えていった。


 もう、俺に止めることなんてできなかった。


***


「僕はね、あの時から終わったんだ。だから……」


「じゃあ、全ては長谷川のせいだっていうのかよ!」


「いや? 長谷川を暴走させたのは、僕の責任だ」


「は?」


「あれ? 今の話で理解できない?」


「何が」


「ま、いいよ。どうせ君は終わりなんだし」


「……クソ野郎」


 僕の目の前に立つ葵君は、力なく倒れた。

 

「決着だよ、葵君」


 葵君は、長谷川に刺され、血を流し倒れた。

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