復讐 閲覧注意
目の前に映る景色は、きっと夢だ。
これが、夢じゃないというのなら、これは、一体何なんだ?
生臭い、不快感のある匂い。そこに交じっている、鉄錆の匂い。
薄暗い部屋の、奥には倒れる二人の人影。白と赤の液体が、部屋中に広がる。
ここは、島の南部。奏斗の協力もあり、やっと、家族がいる場所を見つけることが出来た。
山の中に、一つだけ建てられた廃墟。
その中に、嫁と、娘はいた。
その身を穢され、命を奪われた状態で……。
裸で、投げ捨てられ、体中に、痣や縄で縛られた痕。
涙の痕も消えず、残っている。
きっと、多くのクズに、暴力を振るわれたのだろう。
傷の一つ一つは、決して深くない。
でも、全身に、数えきれないほど、刻まれている。
きっと、長い時間、苦しみを与え続け、絶望を与え続け、命がなくなれば、そのまま放置。
……娘はまだ、十八だったんだ。これから、島の外で画家になるという夢を残したままだったんだ…………。
嫁には、ずっと苦労させていた。まだ、恩を返してすらいないのに……。
血涙が流れた。握りしめた、拳は血がにじんだ。
唇は、噛み切られ、血が止まらない。
俺は、猟師。人が人の営みを、安心して行えるように。
奪われる命が、一つでも減るように。
俺は、彼女達を抱きかかえ、歩み出した。
「こんな所じゃ、ゆっくり休めないもんな、家に帰ろう……」
復讐に染まる、この心は、誰にも止められない。
たとえ、目的を果たしても、地獄の底に落ちようとも。
俺は決して、止まらない。
*
葵君たちから、メッセージが届いた。
「この島に、犯罪者たちがいるかもしれない。気を付けて」と。
俺の目の前に立つのは、身ぐるみをはがされ、木に縛られた男。
ここは、街から遠く離れた森の中。
どれだけ叫ぼうが、仲間は来ない。
「俺の家族を、俺の宝を、奪った人間を知っているか」
「知らない! 本当に知らないんだ!」
両手足合わせて、指二十本。爪を剥ぐ痛みは想像を絶するものらしい。もう顔面グチャグチャで、醜く涙を流している。
「お前は、島の外で犯罪を犯したんだよな」
「は、はひ……」
「一体、何をしたんだ」
「痴漢です……」
「お前は、被害者の子が、苦しむなんて思わなかったのか!」
グチャっと、音を立て、男の眼球がつぶれる。
絶叫する男を、ぶん殴り、無理矢理黙らせる。
「お前は、生きる価値のない人間だ。死ね」
「それは、ダメだ」
俺の横にいた、奏斗は、猟銃を掴み、静止する。
「……」
黙って、猟銃を下げる。奏斗が言うことはきっと正しい。
俺はバカだから、奏斗の言うことを信じるしか、方法はないんだ。
「おっさん。今から自首して来い。お前がやったことは、ただの犯罪じゃない。人の命を奪うかもしれない、大罪なんだよ」
奏斗の圧に、犯罪者は、漏らしやがった。
恐怖で、失禁か……。
お前が感じた、恐怖を……。
あの日から、怒りが収まることはない。
飯も喉を通らない。眠ることもできない。疲労がたまっていくが、気も休まない。
ストレスから、ガリガリと爪を立て、全身を掻きむしる。
血が滲み、傷がつき、真っ赤になる。
「おい、向井。 颯太君から、メッセージが来た」
「……」
「葵くんが、いなくなったって」




