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ダレガタメニ  作者: 猫宮いたな
港倉庫戦争
36/50

復讐 閲覧注意


 目の前に映る景色は、きっと夢だ。

 これが、夢じゃないというのなら、これは、一体何なんだ?


 生臭い、不快感のある匂い。そこに交じっている、鉄錆の匂い。

 薄暗い部屋の、奥には倒れる二人の人影。白と赤の液体が、部屋中に広がる。

 

 ここは、島の南部。奏斗の協力もあり、やっと、家族がいる場所を見つけることが出来た。

 山の中に、一つだけ建てられた廃墟。


 その中に、嫁と、娘はいた。

 その身を穢され、命を奪われた状態で……。


 裸で、投げ捨てられ、体中に、痣や縄で縛られた痕。

 涙の痕も消えず、残っている。

 きっと、多くのクズに、暴力を振るわれたのだろう。

 

 傷の一つ一つは、決して深くない。

 でも、全身に、数えきれないほど、刻まれている。

 

 きっと、長い時間、苦しみを与え続け、絶望を与え続け、命がなくなれば、そのまま放置。


 ……娘はまだ、十八だったんだ。これから、島の外で画家になるという夢を残したままだったんだ…………。

 嫁には、ずっと苦労させていた。まだ、恩を返してすらいないのに……。


 血涙が流れた。握りしめた、拳は血がにじんだ。

 唇は、噛み切られ、血が止まらない。


 俺は、猟師。人が人の営みを、安心して行えるように。

 奪われる命が、一つでも減るように。


 俺は、彼女達を抱きかかえ、歩み出した。

 

「こんな所じゃ、ゆっくり休めないもんな、家に帰ろう……」


 復讐に染まる、この心は、誰にも止められない。

 たとえ、目的を果たしても、地獄の底に落ちようとも。

 俺は決して、止まらない。



 葵君たちから、メッセージが届いた。

 「この島に、犯罪者たちがいるかもしれない。気を付けて」と。

 

 俺の目の前に立つのは、身ぐるみをはがされ、木に縛られた男。

 ここは、街から遠く離れた森の中。

 どれだけ叫ぼうが、仲間は来ない。


「俺の家族を、俺の宝を、奪った人間を知っているか」


「知らない! 本当に知らないんだ!」


 両手足合わせて、指二十本。爪を剥ぐ痛みは想像を絶するものらしい。もう顔面グチャグチャで、醜く涙を流している。


「お前は、島の外で犯罪を犯したんだよな」


「は、はひ……」


「一体、何をしたんだ」


「痴漢です……」


「お前は、被害者の子が、苦しむなんて思わなかったのか!」


 グチャっと、音を立て、男の眼球がつぶれる。

 絶叫する男を、ぶん殴り、無理矢理黙らせる。


「お前は、生きる価値のない人間だ。死ね」


「それは、ダメだ」


 俺の横にいた、奏斗は、猟銃を掴み、静止する。


「……」


 黙って、猟銃を下げる。奏斗が言うことはきっと正しい。

 俺はバカだから、奏斗の言うことを信じるしか、方法はないんだ。


「おっさん。今から自首して来い。お前がやったことは、ただの犯罪じゃない。人の命を奪うかもしれない、大罪なんだよ」


 奏斗の圧に、犯罪者は、漏らしやがった。

 恐怖で、失禁か……。


 お前が感じた、恐怖を……。


 あの日から、怒りが収まることはない。

 飯も喉を通らない。眠ることもできない。疲労がたまっていくが、気も休まない。

 ストレスから、ガリガリと爪を立て、全身を掻きむしる。

 血が滲み、傷がつき、真っ赤になる。


「おい、向井。 颯太君から、メッセージが来た」


「……」


「葵くんが、いなくなったって」

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