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ダレガタメニ  作者: 猫宮いたな
港倉庫戦争
35/50

終末


「ねぇ! 今そっちに葵いない⁉」


 夜、月も沈み始める時間に、香織さんから電話がかかって来た。

 その電話は、いつの間にか葵が消えてしまったということらしい。


 22時を最後に、香織さんは眠ってしまい、日をまたいでしばらくした時に目が覚めた、香織さんは葵が消えたことに気が付いたらしい。

 

「こっちには、来てないよ。葵には、もう連絡した?」


「連絡したけど、返信がこないの!」


「じゃあ、本当にどこに行ったかも分かんないのか……」


「……お兄ちゃん、どうしたの?こんな時間に」


「ん?友達から電話」


「ふ~ん」


 部屋の外から、妹が声を掛けてきた。

 もう時間的にももう寝るのだろう、どこかその声は気だるそうだ。


「今から、俺は少し出ていくからその間頼むぞ」


「え⁉ 今から」


「すぐ帰るよ」


「ほんと?」


「うん、ほんと」


「香織さん? そんな話だから、今からそっち向かう」


「分かった、中央商店で合流しよう」


「あいよ」


 香織さんの電話は切れ、俺も本格的に探す準備を始める。

 何があってもいいように、コンパクトナイフや、ライター、ガス管。ロープに、ある程度の強度を持った麻袋。

 そのほとんどが、葵が考えた武器ばかりだ。

 

「ねぇ……お兄ちゃん。本当に大丈夫なの?」


「ん、どうしたんだよ」


「心配に決まってるよ、最近、家に帰ってくるたびにどこか怪我して……。心配してるのに、大丈夫、何でもないの一点張り、私たちが不安にならないと思う⁉」


「そっか……。ごめんな、心配かけて。でも、本当に大丈夫だよ。俺には頼りになる仲間が、何人もいるんだ」


「それって、こないだの伊織さんとか?」


 学園での騒動の後、一度、伊織を俺の家に招いたことがあった。

 家で、香織や葵のことを真剣に話し合ったんだ。

 でも、まさか、伊織のことを名前まで覚えていたとはな……。


「あぁ、そうだよ」


「そ、私はあの人がそこまで信頼できるとは、思えないけどね」


「それは、お前が伊織のことを知らないからだよ」


 俺は、それ以上の会話をせず、家を出た。

 外は、街灯は少なく、やんわりとした明かりがあるだけ。

 先も見えない、この先に進むのは、どこか気が進まなかった。

 この先は、本当の終わりになってしまう気がして……。


 それでも、葵には多くの恩がある。命の恩人だ。

 まだ、その恩も返せていないのに、ここで逃げるなんて、俺にはできない。

 

 その一歩は、酷く重く、先に進むのが困難だった。

 でも、その一歩は、進むほどに、俺の覚悟をより強固なものにしていった。



「颯太君!」


 夜の暗闇の中に、香織さんはいた。

 大きく手を振る彼女は、この暗闇を照らす光の様だった。

 でも、その中でもきっと心の奥は計り知れないほどの苦痛に苦しんでいるんだろう。俺なんかには想像なんてできないし。想像したくもない。


 香織さんの顔を見ると、涙で目はひどく晴れて、耳まで、指の先の一本まで、真っ赤な純色。

 言葉にできない悲痛な叫びが、俺の心の奥にまで突き刺さるようだ。


「ごめん、待たせたね」


「……いや、急だったし仕方ないよ」


「ま、もとはあのバカ葵のせいだ。さっさと見つけて、一発ぐらいぶん殴ってやろうぜ」


「ところで、イオは?」


「一応、呼んでおいた。でも、すごい胸騒ぎがするんだ」


「奇遇だね、私もだよ」


「……早く、葵を探し出そう」


「そうだね」


「俺達と別れたあと、何かあいつ、変なことしてなかった?」


「……一つ、私たちが帰る途中、コンビニに寄ったの。で、その時葵は誰かと話してた、だれかまでは見えなかったけど、それ以外、変わった様子はなかったよ」


「じゃあ、可能性があるとしたら、灯台じゃない?」


「灯台……。さっき港倉庫で話してたもんね」


「葵は、香織さんのアセビを直すっていうのが第一目標で、それを果たすためには生きている紫苑さんを捕まえて薬を作ってもらうのが一番だ」


「葵……」


「それに、あいつは人一倍正義感の強いやつだ。この島の混乱の責任を取らせようとしているかもしれないよな」


「なら、急いで向かわないと!」


「そうだね、ただ、助っ人も呼ばないと」


「助っ人?」


「奏斗さんと、夜さん。それと向井さんもね」


「それはいいけど、みんな待っている時間なんてあるの?」


「いや、正直今回は港倉庫以上に先が読めない。できるだけ早く行きたいね」


「なら、他のみんなにはもう灯台にいるって言って、先に二人でもいいから行こうよ」


「そうだね。でも……本当に二人だけで行く覚悟はある?」


「うん、大丈夫だよ。一緒に生きて帰ろう」


 俺達は、ただ静かに灯台へ向かった。

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