真実
手錠で、拘束された。二人の男。
それと向かい合うのは、血だらけの二人の男。
さっきまで、夜さんと、刑事さんは生きるか死ぬかの戦いの中にいたというのに、根性だけで立っている。
「お前は、病院に行け。今回のことは黙っていてやるから」
「そうは、いかないよ。 仕事もあるし」
そう言って、夜さんは名刺のようなものを刑事さんに差し出した。
それを見ると、刑事さんはため息をし、それ以上何も言わなかった。
「しゃあない、じゃ始めるか」
*
「まず、お前らの目的と、ボスについて吐け。どうせ、計画したのはお前らじゃないだろ」
二人は顔を見合わせ、しばらくの思考の後、ゆっくり口を開いた。
「俺達は、長谷川と名乗る女に従っていた」
「長谷川だぁ?」
夜さんがポリポリと頭を掻く。
「さっき、俺の仕事で会った女も長谷川だ」
「仕事?」
「あぁ~……。 葵くん、話しちゃってもいいかな」
「はい、情報は共有しといたほうがいいと思いますし」
「じゃあ、言うと、俺の仕事は、この島の医者の男からのものだった。仕事の内容は、預けられた荷物を島の外で廃棄すること」
「その預けられた、荷物ってのは?」
「医者先生の私物らしい、俺も中身は確認して、犯罪になるようなものは無かった」
「そうか……」
「ちなみに言うと、俺はこの子どもたちにここまで案内しておらった。 仕事には全く無関係だ」
「……話続けてもいいか?」
レオナは、気だるそうにしている
「あ?あぁ頼む」
「長谷川の目的は、明日以降島で大きな騒ぎを起こしてほしいと言うことだった、1週間したら、島の人間も、物資も好きなようにすればいいと」
騒ぎを起こしてほしい?犯罪者たちに意識を向かわせることで、何か長谷川にメリットがある?
「夜さん、長谷川と別れてから、長谷川はどこに向かっていった?」
「長谷川なら、今頃灯台にいるだろうな」
その時、手錠につながれたもう一人。マサトが声を上げた。
「あいつの目的は、この島から逃げ出すこと……」
「なに?」
「まず前提として、紫苑という、医者は死んでいない。数日もすれば、わかるだろうが、あの死体は顔が潰してあるだろ?」
「確かに、あの死体は、顔もつぶされ、全身骨折していた」
「あれは、紫苑に似た人間を見つけ、俺が殺した身代わりだし」
「俺達も、長谷川も、お前ら島の人間も……。全員、紫苑の手の上で躍らされているんだよ」
「紫苑の目的は、なんなんだ?」
「詳しいことは分からない。ただ、紫苑には、病床に伏せる妹がいるらしい。そして、長谷川は、そんな紫苑に、特別な感情を持っていた。犯罪を犯すのに、なにも理由なんていらない。ただ感情の赴くままに、暴れるだけだ」
*
「とりあえず、急いで灯台に向かおう」
「でも、ここからだと、今向かっても夜になるよ」
「それに、私たちはいいけど、進藤君たちは大丈夫なの?家族の事とか」
「友達の家に泊まるっていえば、一日ぐらいなら」
「……おい」
港倉庫の隅、俺達が話をしているところを、刑事さんは聞いていたらしい。その顔は、怒りを露わにしていた。
「ここから先は、餓鬼の出る幕じゃない。てめぇらは、帰ってママの乳でも吸ってるんだな」
「じゃあ、ママのいない俺達は、誰の乳吸えばいいの?」
「あぁ?」
俺の挑発に、さらに顔を真っ赤にした。
ま、子供相手に挑発されちゃ、警察としてのメンツもないだろう。
ただでさえ、今回の件は、この島の警察としての信用はがた落ち。
いま、島が混乱しているという中で、警察が機能しないなんて、あってはならないからな。
「今日のことは、俺達の失態もある、だから見逃してやろう。ただ、次はないぞ?」
大の大人の、それも警察の本気の圧。
そんなの、怖くないわけがない。今にも、ちびりそうなぐらいだ。
でも、俺は決して引かないし、引くことも許されない。
俺は、香織、颯太を、伊織を、大切な人を助ける。そのためには、薬の在処を見つけ出し、紫苑の起こした、この一連の事件の謎を知る。だから、俺は引かない。負けない。
それが、俺の決意なんだ。
相手が誰だろうろ、関係ないんだ。




