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ダレガタメニ  作者: 猫宮いたな
港倉庫戦争
27/50

哀怒


「颯太」


「葵か、大丈夫か?」


「もう大丈夫、心配かけてごめん」


「いや、いいよ」


 港倉庫を一望できる、倉庫から少し離れた防風林の一角。

 そこに、颯太と伊織がいた。

 

 いた、というより、俺がここに呼んだんだが……。


「ひとまず、俺と香織は港倉庫に行くけど、二人はどうする?」


「そりゃ、行くに決まってる」


 颯太の答えにうんうん。と伊織も頷く。二人の顔はどこか、迷いがなくなってまっすぐな目をしている。


「じゃあ、作戦会議だ!」


 俺は肩に担いだ、丸まった大洋紙で、林の向こうの小屋を指す。

 それを見た、二人は俺の横に並び、一緒に小屋に向かって歩き出した。



 少し、かび臭いジメジメとした小屋。

 たしか、ここは昔、海の家だったらしい。

 でも、観光客が少なかったり、潮風などを防ぐために防風林を作ったときに、林の管理小屋になったけど、結局使われなくなった、子供たちの秘密基地のような場所。

 小屋の中には、大きな少し古ぼけて埃の被ったソファーや、海の家の時から使われているだろう、折り畳み式のパイプのテーブル。それと、いくつかのパイプ椅子。

 俺は、小屋に入るとすぐにテーブルに大洋紙を広げる。

 そして、大洋紙にくるまれていた、金属バットが姿を現す。


「そのバットって?」


「ゴミ捨て場にあったのパクって来た」


「それ犯罪」


「もう、俺は犯罪者だからな、これぐらいどうってことは無いよ」


 颯太の懸念を、そう返して、油性ペンで、大洋紙に情報を書き込む。


「とりあえず、今の俺たちの目的。それを明確にしよう」


「……まぁ、そうだな」


 颯太は、俺の言葉が気に食わなかったのか、少し考えこむように顎を撫でていた。

 颯太からしてみれば、俺が犯罪者だなんて認めたくないのだろう。学園の時からこいつはいつもそういうことを考えているようだし。


「まず、俺達の目標は、今島に来ている犯罪者たちをこの島から追い出すこと」


「そもそも、どれくらいの数いるかも、向こうの目的もまだ曖昧だからね、追い出す前にまずは情報を集めないと」


「まぁ、そうだな。今のところ情報がほとんどない」


「ならさ、夜さんに情報集めてもらわない?」


「でも、夜さんが素直に情報教えてくれると思う?」


「というと?」


「いや、まず、夜さんは奏斗さんが助っ人として呼んでくれた人なんでしょ?」


「そうだね」


「てことはさ、普通に考えたら、私たちを争いに近づけないように来ているんでしょ?なら、このこと知ったら危険だからとか言って、情報くれなさそうじゃない?」


「あ~」


「……ダメもとでも聞いてみようよ」


 口を開いたのは、伊織。

 再開してから一言も発していなかったから心配していたが……。


「もう、これ以上、この島で争いが起きるの、私は許せない」


「伊織……」


「……わかった。夜さんに聞いてみよう」


 香織は、伊織のその言葉で心を決めたようだ。

 もともと、伊織も、颯太も、香織も。みんな同じ気持ちだ。でも、そこに向かう為の道がみんなバラバラだった。

 それを、伊織がそろえてくれた。

 

「じゃあ、連絡待ってる間、準備しようか」


「準備?」


「学園よりも荒れるかもしれないからね」


 俺が、取り出したのは一本の缶。

 それをみて、気持ちが昂る男と、ため息をつく少女。

 

「それは!火炎放射器⁉」


「さすが、正解だよ」


「最高じゃないか!」


「さらに、今回はこれもおまけ」


 俺が指さしたのは、大量の酒瓶。

 酒はよく燃える。人間ブランデーだ。

 ガス缶とライターで、もう俺達の感情は最高潮。そこに酒瓶も加われば、もう敵なんかない。


「よく持ってきてくれた。葵」


「火炎放射器は男の夢だからな」


 あはは、と冷えた笑いをこぼす、香織と伊織をよそに、俺達はノリノリで準備を進めていった。



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