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ダレガタメニ  作者: 猫宮いたな
港倉庫戦争
26/50

焦涙


 港に止まった一台のパトカー。

 サイレンの音を響かせている。


「颯太。私たち捕まっちゃうのかな……」


「いや、大丈夫だよ。きっと……」


 その音は、私たちのメンタルをじわじわと抉っている。

 でも、葵君は、私たちより辛い状況にある。

 葵君を助けるために、香ちゃんは走った。

 いまみんな、何かしら頑張っているんだ。


 なら、私にできることをやらないと……。


「私、もう一回港倉庫に行く!」


「何のために行くの?」


「あそこには島の外の危ない人がたくさんいるんだよね?」


「うん、多分……」


「なら、その人たちを島の外に追い出せば、解決するよね」


「確かにそうかもしれないけど、警察が来てるんだし、俺達は動かない方がいいよ」


「でも、それじゃあ、私たちは何もできないの?」


「伊織。落ち着いて。《《今は》》待とう」


 何もできない、もどかしさ。

 強く吹く潮風。音を立てて揺れる草木。

 物音一つが、肌に触れる感覚が、視界に入る自然が、

 焦燥と、いつも通りの日常とのギャップ。

 それがさらに感情を引き立たせる。


「でも!こないだも葵君任せだったからあんなことになったの忘れたの?」


 あの、学園での戦いの時。

 私は肩を銃で撃たれた。

 

 そのとき、葵君は感情を荒げていた。

 私のために怒ってくれた。


 倉庫の中でも、私たちのために、汚れ役を買って出た。

 

 なのに、私は葵君に何かしてあげれた?

 葵君と、颯太の後ろに隠れて、やるべきことを香ちゃんに任せっきり。

 私は、何もできていない。


「伊織」


「な――」


 後ろから、颯太がハグをしてきた。

 温かく、少し力強く、不器用な抱擁。

 その不器用さが逆に、安心させてくれる。


「伊織の気持ちは、痛いほどわかるよ。俺もきっと同じ気持ちだ」


「――だから、焦らなくていいんだよ」


 ……あれ?どうしてだろう……。

 涙が止まらない。


「泣きたいだけ泣いていいんだよ。いつでも俺が傍にいてあげるからね」


 我儘言ったのに、こんなに優しくするなんてずるいよ……。

 止めようと思っても、もう涙が止まらない。


「我儘言って、ごめん! 私足手まといだから、みんなの役に立たないとって!」


 涙が止まるまで、ずっと颯太は私をハグし続けてくれた。

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