乱入
涙を流したことで、だんだん心も落ち着いてきた。
もし、こいつら以外にもここにきているとすれば、ここも安全とはいえない。
あれだけ大きな音を無視するような奴らとも思えない。
「別の場所に移動しよう。どこか安全な場所に」
「じゃあ、夜さんに連絡入れておくね」
「ありがとう」
颯太がすかさず手伝ってくれる。伊織と香織は俺の肩をとり、支えてくれる。本当にありがたい限りだ。
数分前通った道と同じ場所を戻る。梯子は何とかして、自分で降りた。
というか、一人でも動けるのだが、なかなか言い出せない。
梯子を下りた後、裏口の方へ進み扉に手をかける。
その時に感じた、一瞬の違和感。
その違和感は、この状態の俺にとって見過ごせないものだったが、その時はもう遅かった。
錆びついた扉が、ザザザと錆がこそげ落ちる音とともに開いたのだ。
扉の先にいた相手は、若い黒髪の男。どこか痩せて弱弱しく見える。
「お前、島のガキか」
そこにいた人間は、その言動からして敵であることはすぐに分かった。
でも、足が動かないのだ。
「あんたは誰?ここ、俺達の秘密基地なんだけど」
「そうか、でもこれからはここに来ない方がいいぞ、というかこの島から逃げた方がいい」
「どうしてですか?」
「この島は、犯罪者たちが占領しようとしてる。中には傷害事件で捕まったやつとかもいるらしい」
「それをどうして伝えてくれたの?」
「俺は、ここに連れてこられただけで、そもそも犯罪も犯していない、普通の人間なんだ」
「そうなんですか……なら、あなたも早く逃げた方がいいですよ」
「僕は、もう少しここにいるよ、僕には大人としての責任があるからね」
その男は、道を開けてくれた。
男と別れたあと、しばらく進んだ時、遠くの方に数台のパトカーがこちらに向かっているのが見えた。
そのパトカーをみて、ひどい胸騒ぎを覚えた。
あそこにいたのが全員犯罪者なら、警察なんか呼ぶはずがない。
なら、誰が通報したのか、一体何のために通報したのか。
きっと、さっきの男だろう。
俺が殺した男達をみつけたから、通報した。
そう考えるのが自然だ。
捕まるかもしれない。そう思うと、また心臓が強く跳ねて、恐怖心が思考を占領する。人を傷つけたこと、人を殺したこと、それは償うことは俺の責任だ。でも、もし捕まれば、俺が殺したことが本当になる。
それが、ひどく怖かった。
だから、俺は一人で逃げ出した。




