激化
俺の目の前に立つ男。奴は人を殺せる人間だ。
あの黒い眼がそれを思わせる。
一体、こいつは何者なんだ?
「おい、お前。ここの人間か?」
数分前、俺の目の前に現れた男はそう尋ねた。
その男はおれのことを警戒しているようだった。
「仕事でここに来ただけだ。俺は島の外の人間だ」
外の人間。その言葉を聞いたとき男はいきなりナイフをもって襲ってきた。
俺は、男の攻撃を横っ飛びでよけた。
しかし、この男いきなり襲ってきた。なんなんだ?
「何のつもりだよ」
男は俺が避けることを想定していなかったようでその黒い眼を小さくしていた。それに加え、余裕のある俺の姿をみて、怒りの感情が生まれているようだ。
「今から死ぬ人間に話すことはない」
「はぁ、あんまり暴力沙汰はよくないが。しょうがない」
深呼吸をして、金の入ったアタッシュケースを地面に置いた。
向こうから始めたんだ。自己防衛だよ。
俺は花村夜。坂崎奏斗の相棒で、いつかあいつを殺す男。
こんな野郎に負けてやる優しさは俺にはない!
俺は、男に向かって駆ける。それと同時、懐からナイフを取り出した。
「悪いね。俺たちもアングラの人間なんだ」
ここで、こいつを殺すのは少しまずいからな。腹だけ刺しといた。
多分死ぬことはないだろ。
「お前には、少し聞くことがあるからね、ついてきてもらうか」
男の長い髪をつかんで近くの倉庫に入る。
尋問の時間だよ。楽しみだね。
*
「あいつら、何言ってんだ……?」
島の人間は奴隷だと、言った。何かやばい何かが動いているのは確実だ。
おそらく、こないだの学園の時よりも大きい何かが……
「それにしても、本当に夢みたいな話だよな」
「全くだよ、犯罪者だけの島を作って、その中なら何してもいいってよ」
何を言っているか、理解はできない。でも、怒りが湧いてくる。
こいつらの言っていることがほんとなら、俺たちは、奴隷になって、この思い出の島が、壊される。どうしても、耐えられない。許せない。
「香織……」
「ダメ。今は我慢して」
香織は、落ち着きのあるその声でそう呟く。
「でも……」
「まだ、あの人たちが言っていることが本当かわかんないんだから何もできないの」
「わかった……」
いつも、そうだ。俺が間違えた道に進もうとすると、必ず止めてくれる。俺の後ろで首根っこつかんでダメと言いてくれる数少ない人。
だから、俺は……
「この島、いい場所だよな。Wi-Fiもちゃんとあるし、住む分には困るものはないし、聞いた話だとガキも多いらしいいしな」
「俺は、ガキには興味ないね」
「今は、ガキでも奴隷になったら、自分好みにでいるんだぞ?興奮しないわけないだろ?」
「たしかに」
ゲラゲラと、いい気になって笑っている二人の男。
「いやぁ……何なのあいつら……」
伊織が流した涙。それを無視することは、俺には無理だ。
壁に立てかけられて、ロープで固定されている木材。
持っていた、ナイフでスパンッと切る。
支えの亡くなった木材を軽く、男たちのほうに向かって蹴る。
そうなれば、木材は男たちに襲い掛かる兵器に早変わりだ。
「死ね」
それは、島の存亡のかかった戦いの火蓋となるのだった




