解決
「これで今度こそ俺達の勝ちだね」
進藤くんは嬉しそうにそう呟いた。
「いや、まだだ。」
俺は葵くんの顔を思いっきり殴った。
葵くんの顔から、鼻から、口にも、血が流れた。
「何してんの!?」
その場にいた全員が驚愕し固まった。
しかし、伊織ちゃんが俺を止めた。
俺もその手を止めた。
葵の目には涙が溜まっていた。
「目は覚めたか?」
俺は聞いた。
葵くんは伊織ちゃんを傷つけられた怒りで暴走していた。それこそ、薬のことも何もかも忘れて
「ごめん、俺、、」
恐怖に怒り、悲しみ。様々な感情が巡り、
自分でも気持ちの整理がつかないのだろう。
「大丈夫だよ、トラブルはあったけど、結果的には良かったと思うし」
進藤くんは言う。
進藤くんはその体を自分一人の力で動かして、俺たちの元に来た。
火事場の馬鹿力なのか、何なのかは分からないが、さっきまでの進藤とは思えないほどだ。
「伊織、怪我は大丈夫か?ごめんな俺のせいで」
「全然大丈夫じゃないよ!でも、それ以上に葵くん!これ以上私を心配させないで!」
伊織ちゃんはぽろぽろと涙をこぼす。
その顔は言い表せないほど真っ赤に染っている。
「ごめんね、でも、もう心配はかけないから」
「約束」
伊織ちゃんの出した小指に葵くんも合わせるように小指を合わせる。
指切りげんまんとか、青春だねぇ、
「葵くんも落ち着いたし、加藤、お前が持ってる薬を出せよ」
「薬なんて持ってない。薬欲しさに殺し合いをさせたかっただけだ。」
「そっか、」
俺はやつの顔を蹴り抜いた。
向井は俺が仕掛けることを察したかのように加藤を俺の方に投げ出し、後退り。
毎日猛獣の相手してるだけあって動きははやい。
もしかしたら、身体能力だったら、俺と大して差は無いかもしれない。
まぁ、今はそんなことはいいんだ。
「じゃあ、薬がある場所は知ってるか?」
鼻っ柱を蹴り抜いたせいか顔面沈没して、血に濡れてぐしゃぐしゃになった顔はさっきまでの腹立つ顔から、多少はマシになったようだ。
だが、中身は変わっていないようだ。
「知ってるわけないだろう。俺は非感染者だ!貴様らと一緒にいて移されてたまるか!」
「そっか、」
今度は指を立てて腹に刺す。その痛みは尋常ではない。
武の道に進んだ人間がこうやって武を行使することはあんまり良くないことだけどまぁ、しょうがない。
「アセビは人からの感染はないってもわかんないのかよ」
「そんなもの確証がないだろう。それに人からの感染じゃないなら感染源は一体なんだって言うんだ!」
「じゃあ?試してみるか?」
「一体何をだ!」
「俺実は末期の感染者だからさお前といっぱいお話すればお前に移るよね?」
「やめろ!このクソガキ!」
「「暴れんなっての」」
暴れる加藤を向井が抑えて俺がもっかい叩く。
そうすると諦めたのか大人しくなった。
「進藤くんもそこら辺にしときな」
俺は腰に手を回し、ロープを取りだした。
ロープは利便性が高いからいつも20m分は持ち歩いている。
そして向井と共に上裸にして木に括りつけといた。
これで加藤との戦いは今度こそ終わった。
空はもう明るい朝日が登ってきていて、また今日が訪れたことを実感させた。