準備
「お兄、今度私栃木の方まで走ってくるんだけど一緒に行かない?」
2日前、妹は俺に聞いてきた。
妹の趣味は多く。そのうちの一つがバイクでドライブすること。俺も中型の免許を持っているから、たまについて行くが今回はいけない。
「ごめん。今回はパス」
「えぇ〜、一緒に餃子とか苺食べに行きたかったのに〜」
「すまんて、じゃあ今度俺がスイパラ連れてってやるよ」
「スイパラってあの?」
「あのスイパラ」
「許す」
「許された」
俺は仕事の依頼を受け、泉五島という島に行かないと行けなくなったからだ。
俺は数年前から俺と妹。あとは学生時代からの友人の4人と、あと、時々もう1人俺の幼馴染が協力してくれる。ほんとに時々だけど。
まぁ、このメンツで依頼を受けてそれを解決する
子猫探しから恋愛相談までなんでもござれの
何でも屋ってのをやっている。
「まぁ、今回の依頼で出てくるからお土産ぐらいは買ってくるよ」
「食べ物がいいな」
「ずっと食べてばっかじゃ、太るよ?」
「うるさいっ!いいもん!」
ぺちぺちと重要書類で頬を叩くのやめてもらいたいなぁ。
「ところで、今回の依頼のことで頼みたい事があるんだけとさ」
「夜さんなら今迷子猫を探しに行ってるよ」
夜と呼ばれるのは、花村夜。さっき話した友人のうちの一人で、元々喧嘩三昧だった奴をボコボコにしておれのダチってことにした。
まぁ、喧嘩も強いし信用もできる俺の相棒的な奴だ。
基本的に仕事の内容は至ってシンプル。依頼されたことを法律の範囲内で解決するというもの。
たまにやりすぎちゃうことはあるがまぁ、愛嬌よ。
で、今回の依頼は
『3日後、泉五島に来て欲しい。詳細は島に着いたら話す』
なんだか、俺らのことを下に見てるような依頼文で少しイラッと来たが報酬は10万からってことで受ける価値はあると判断した。
普通はもっと丁寧に敬語とか使うんだけどな。
なんでタメ口なんだよ。
ただ、問題として、内容が分からない中で10万なんていう大金が報酬になっていることに違和感がある。
だから、夜に依頼主である『赤羽紫苑』という男について調べて貰いたいのだが、、
普通に考えてなんでもやるからってそんな大金をかけて何かやるほどの仕事じゃないってわかるでしょ、10万なんて体育祭の保護者の席取り20回分ぐらいだぞ。
てか、体育祭の席取りに5000円もかける程か?とは思うけど、最前列の最高の席を用意して欲しいってことなのかな、
「じゃあ、夜が帰ってきたらこの書類整理させといて」
そう言って俺はパンパンに膨らんだファイルを妹に任せた。
本当なら自分で渡すべきなのだが、依頼の約束の時間的にそろそろでないと間に合わない。
島じゃなかったらもっとゆっくりできるのに、
「もう行くの?」
「もうそろ出ないと便の時間がな」
「じゃあ、行く前に荷物の確認ね」
「書類とノートパソコン。ペンは持った?」
「持った」
「着替えは?」
「持った」
「歯ブラシとか、化粧水とかは?」
「もっ、、、、てない。」
「バカ兄貴、必要なものだよ!忘れんな!」
「はい。ごめんなさい。」
そんなたわいのない会話で笑いながら改めて準備をした。
「送っていくよ、見送らせて」
「ありがと、じゃあ俺がいない間ここ頼んだわ」
「おっけ、頼まれた!」
そうして、俺は依頼主の元へ向かった。
空はまだ暗くてビルの隙間からうっすらとオレンジ色に染まり始めた空が見えている。