表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

第15話

 それから数年後、私達は結婚することになりました。何故そうなったかというと、お互いに惹かれ合っていたからという理由の他にありません。そして結婚式を挙げた日の夜、ついに鬼ヶ島から鬼が攻めてきました。

 目的は勿論、私達を殺すためです。それを聞いた時には流石に焦りました。何せ相手は人間ではなく化け物ですからね。勝てるはずがないと思ったものの、ここで諦めたら殺されるのは確実です。だからこそ必死に抵抗しましたが、多勢に無勢ということもあり全く歯が立たず追い詰められてしまいました。そんな絶望的な状況の中、彼が桃太郎の力に覚醒したのです。


「俺の前世は桃太郎だったんだ! さあ、かかってこい!」


 その言葉と共に次々と敵を蹴散らしていきました。その様子を見ていた私は驚くばかりでしたが、それ以上に嬉しかったです。何故ならこれで助かったと思い込んでいたからです。

 ところがそう上手くはいかず、敵の一人が私に向かって襲いかかってきたのです。もう駄目だと思いましたが、間一髪のところで彼に助けられました。


「大丈夫か?」


 そう言って手を差し伸べてくれた彼の手を取りながら立ち上がると、そのまま二人で逃げようとしたのですが、そこで邪魔が入りました。

 それは敵の総大将である酒呑童子です。


「ここで会ったが100年目とはまさにこの事だな」


 彼は私と彼を交互に見た後でニヤリと笑うと、いきなり攻撃を仕掛けてきたのです。何とか攻撃を躱したものの、完全に避けることはできずに傷を負ってしまいました。

 それを見て激昂した私は反撃に出ましたが、呆気なく返り討ちにされてしまい殺されそうになったその時でした。突然体が光に包まれたかと思うと、今まで感じたことのない力が湧いてきたのです。それと同時に頭の中に誰かの声が聞こえてきました。


「我が名は茨木童子なり! 今こそ力を貸す時だ!」


 その言葉を聞き終えると同時に意識が遠退いていったのですが、次に目が覚めた時には私も不思議な力で変身していました。しかもその姿はかつて退治されたとされる鬼の姿になっていたのです。

 それを見た酒呑童子は動揺を隠し切れない様子でしたが、私は構わずに攻撃を続けました。すると次第に形勢逆転していき、最後には敵を全滅させることに成功したのです。その様子を見ていた彼は驚いていたようでしたが、やがて私の方を見ると笑顔でこう言ってきました。


「よくやったな」

「ええ、後は残党を討伐するだけよ」

「そうだな……よし、行くぞ!」

「分かったわ!」


 こうして最後の戦いが始まりました。最初は苦戦していましたが徐々に優勢になりつつあった時でした。急に体の力が抜けていき、立っていることもままならない状態でした。

 一体何が起きたのかと思っていると、いつの間にか目の前に敵が迫っていたことに気づき慌てて避けようとするも間に合わず、攻撃を受けてしまったことで倒れ込んでしまい身動きが取れなくなってしまいました。

 その様子を見ていた彼はすぐに駆け寄ろうとしてくれたのですが、その前に別の鬼が現れて邪魔をしてきたのです。

 そのせいで足止めを食らっている間に敵に捕まってしまった為、このままではまずいと思った私は必死に抵抗するものの、やはり力の差があり過ぎて振り解くことができませんでした。

 その間にも状況は悪化する一方で、とうとう絶体絶命の危機に陥ってしまったのです。

 すると次の瞬間、どこからか声が聞こえてきたと思ったら眩い光が放たれて辺り一面を照らし出しました。あまりの眩しさに目を瞑っていると、ふと自分の体に変化が起きていることに気づいたので確認してみると、なんと全裸になっているではありませんか。

 そのことに戸惑っていると、今度は身体中に激痛が走ったかと思うと同時に何かが生えてくるような感覚に襲われたのです。その痛みに耐え切れず悲鳴を上げていると、少しずつ痛みが和らいできたような気がしました。

 そこで恐る恐る目を開けてみると信じられない光景が飛び込んできたのです。何とそこには角の生えた鬼になった自分が立っていたのですから驚きのあまり言葉を失ってしまいます。

 しかしそれも束の間のことで、今度は自分の意志とは無関係に動き始めたかと思えば、目の前にいる敵を次々と倒していきました。その光景を見て驚いていると、突然視界が真っ暗になって意識を失ってしまったのです。



 その後のことは覚えていませんが、目を覚ました時には全てが終わっていたことだけは確かでした。というのも目が覚めると同時に全てを思い出したからです。

 それは前世の記憶であり、自分が何者だったのかということについても理解することができました。

 さらに驚いたのは生まれ変わった今の世界が前世とは全く違う世界だったことです。まさか性別や種族まで違うとは思わなかったので戸惑いましたが、とりあえず今は現状を受け入れるしかないと判断して割り切ることにしました。

 ただ一つだけ気になることがあったのですが、それは私が男だったという点です。確かに体は女ですが心は男のままなので、もしあのまま転生していたらどうなっていたのかと考えるだけでゾッとします。恐らく男性恐怖症になっていたことは間違いないでしょうし、下手したら自殺していたかもしれませんからね。そう考えると本当に良かったと思います。


 ちなみに現在はとある学園に通う女子高生として生活していますが、この学校に入学したのは偶然ではありません。実は入学試験を受けた際に前世の記憶を取り戻したのをきっかけに、ある計画を実行する為にはどうしても必要な条件だったので、あえて受験することにしたのです。

 それが何なのかというと、ずばり女子校に入学することだったんです。その理由については後で説明するとして、まずは自己紹介をしたいと思います。私の名前は姫島美鈴といいます。どうぞよろしくお願いしますね。


【終わり】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ