話を聞いて? 〜寡黙な彼との素敵な出逢い☆〜
「おはようございます」
私は、必ず彼に笑顔で『おはよう』を言います。
王城での文官の仕事で失敗して最悪な気分でも。
お腹が痛くて、起き上がりたくないほどどんよりした日でも。
どんな時だって、必ず言うようにしています。
挨拶は大切ですから。
「聞いてくださいます? 今日は――――」
「ねぇ、聞いてますの?」
「……だんまりはやめて下さいっ!」
時々、喧嘩をしてしまいます。
「おはようございます!」
でも、次の日の朝はちゃんと笑顔で挨拶。
「……」
「……おはよう」
彼は、返事を返してくれません。
「むなしいです」
「同棲、楽しくなかった?」
「……同棲…………むなしいです」
「なんでよ?」
――――なんで、だとぉ⁉
「なんでも、クソもあるか! 二十過ぎて、男性バージョン・ビスクドールのヤツに、毎日毎日毎日毎日っ! 話しかけて楽しいわけあるかぁぁぁ!」
……ごほん。
少々言葉が乱れてしまいました。
ちょっとイタイ趣味の持ち主──幼い頃からの親友に、全長二五センチの茶髪な彼を投げつけた。
「いったぁぁぁぁぁい! 名前はジョシュアくんだってば!」
「問題はそこじゃねぇぇぇぇぇぇ!」
仕事が辛い、誰かに愚痴りたいと、親友に話しましたら、そっと『ジョシュアくん』を渡されました、「毎日話しかけな。彼は何でも聞いてくれるから」とサムズアップしながら。
端っから却下するのもね、とか思った私が馬鹿でした。
この人形、確かに何でも聞いてはくれましたが…………しこたま、すこぶる、ゴリッゴリに虚しいだけでした。
一週間も続けた私、すごいと思う!
親友は、この『ジョシュアくん』と二年もお付き合いしているらしいのです。
「に……ねん」
私にはこの趣味は――――小さな彼は、まだ早すぎたようです。
…………いや、早すぎるというか適性が無かった……んだと思いたいです。
切に!
─ おわり♡ ─
………………すいませんでしたぁぁぁぁぁ!