奴隷になった日⑦
ジークライア王国の聖女の護衛をしろと言われてから……次の日。
俺は、この小屋の中の、掃除に励んでいた。
しっかりと掃除をして綺麗になったほうが、気持ちがいいからな。
あのゴミみたいな地下を経験しているからこそ綺麗にしときたいのだ。
はぁ、掃除ができるってのは、なかなかいいもんだな。
前世では掃除なんて禄にしなかったから結構汚かったが、今の俺なら綺麗好きといえるぐらいには細かく掃除が出来ているだろう。
そういえばずっとなんとなくスキルを使ってきたけど、詳しくは見てなかったんだよな。
掃除しながらだが、少し見てみるか。
名前 カリル
種族 龍人?
スキル
鑑定 改竄 思考加速 状態異常耐性 苦痛耐性 体力自動回復 忍耐 気配感知
水操作 神級氷水魔法 龍眼 龍の逆鱗 自動魔力回復 神龍化
ふむ、久々に見たがこれってどれくらい強いんだろうか。
まぁ、今はスキルは自由に使っていいと言われているし、丁度いい機会だ。
色々試したり、調べてみるか。
やっとここにきて、異世界転生した感が出てきたか。
いや、既に異世界転生ってよりは、異世界最底辺まで落ちた、といったところか。
はぁ、まぁでももうわがままは言っていられないか。
とにかく、調べることからだな。
先ずは、体力自動回復や魔力回復は文字通りの効果だな。
まぁ、そんな沢山回復はしないから、これは使って熟練度が上がるのを待とうか。
そう、この世界のスキルには熟練度が存在する。
どんなに強いスキルでも熟練度が低ければ弱いということもあると知った。
まぁ、地下であの爺に教えられたことだがな。
鑑定にどれくらいの練度かは、書いていないが…………。
まぁでも、鑑定にもそんなこと書いてあるし。
それと、今までそういう物だと思っていて、気にならなかったが、常時発動型のスキルもあるのか。
これは教えてもらえなかったが、恐らく自動回復や龍眼、気配感知、忍耐は常時発動されている。
理由は、鑑定みたいに頭の中で考えなくても、常に気配を感じることが出来るからだ。
そして決定的になったのが、この龍眼。
このスキルが増えてから、動体視力が異常に上がった。
そりゃぁ、もう、どこかの忍者のごとく見える…………おっと、残念ながら勾玉はついていないぜ!
うん、一人で何をやっているんだか。
ま、まぁ、それだけじゃないんだけどな。
簡単に言うと、魔力を大量に流せば少し先の相手の体の動き、魔力の動き、つまり少し先の未来が見えるということだ。
これは生物に限らず無機物の未来も見ることが出来る。
正直ぶっこわれのスキルだ。
が、まだ資格がないという事で使えない感じだ。
ぶっ壊れだが、ある意味は今の所、よく見えるという効果しか発揮していない。
他には、忍耐なのだが、正直鑑定で見てみても、能力のことは分からなかったんだよなぁ。
なにせ、あらゆる痛みを耐えることが出来るとしか書いていないんだもんなぁ。
痛み…………そう痛みだ。
きっと拷問や俺の心が完全に壊れたことによってできたスキルなんだろうが…………もうやめだ! やめやめ、思い出したくないんだ。
次のスキルを確認しよう。
新しく入った水操作なんかは、文字通り水さえあれば、魔力を送って操ることが出来る。
まぁ、熟練度も低いしあんまり使えはしないが。
神級魔法に関しては、リヴァイアサンの魔法だ。
魔法は、初級と来て中級、上級、最上級、伝説 神級とあるらしいが。
神級は、固有魔法らしく千差万別だと鑑定には書いてあった。
だが、リヴァイアサンの魂が入り込んだお陰で、伝説級以外の氷と水の魔法は使えるようにはなった。
魔法の数はそんなにないけど…………。
それから、龍の逆鱗は命が瀕死状態になった時に始めて発動させることが出来るスキルだ。
効果は単純で、ステータスが1.5倍になる。
最後に、神龍化なんだが…………これに関しては、まだわからない。
鑑定の説明では、龍人の内に眠る神龍の力をすべて引き出す。ただし、資格がなければ使うことはできない。
ということらしい?
どうやら俺にはまだ資格がないから使えないと…………。
資格って言われてもなぁ、俺はリヴァイアサンの事すら知らないんだけどなぁ。
まぁ、でも調べた感じはやっぱり、ただスキルが強いってだけでは意味がない。
どれだけ努力してきたかよって増えるスキル、苦痛の中で手に入る耐性、生まれ持ってのスキル。
それらの全部があって、使いこなし、初めて強くなれる。
まぁ、今の俺は奴隷だから強くなったところで兵器のままなんだけどな。
それから俺は、初級魔法で作り出した水を水操作で操りながら、小屋についていた土やら埃やらを洗い流して掃除をした。
後は、急に執事の奴が俺のところに来て、昼食をもって来たと思いきや、お嬢様の命令で家の庭を掃除しろと言われ、竹箒などを渡されて、昼飯を食べたら初めろとの命令だそうだ。
少し休めると思っていたんだが…………はぁ。
命令されたからには、俺の拒否権など存在しない。
今日の昼飯は、冷えた骨付き肉と硬いパン一つと冷めた薄い味の具材がたくさん入っているスープが一杯だった。
だが、今の俺はそれだけでも涙が出るほどおいしく感じていた。
こんなにおいしいのかと、こんな味がしたのかと、ちゃんとしたご飯は久しぶりだと。
急いで食べてはいたが、しっかりと味わって、この際堪能した。