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奴隷になった日⑥

 一万もいた兵は、俺が放った神級魔法コキュートスにより半分は凍らせて殺し。

 神級魔法ポセイドンにより地形を変え、凍った兵士を水の力で完全に抹消した。

 

 敵側に与えた被害は甚大なもので、俺を中心に湖も出来たことから足止めにもなっており、俺自身になかなか攻め込めないようだ。

 

この戦いも終わりが見えて来たな。

 俺自身の、魔力はもう少しで尽きてしまうが…………剣をふるう体力は十分にある。

 

 敵国の兵士たちは、逃げる者もいたが、そいつらは予定通り、風竜の精鋭軍に殺されているようだ。

 あれはワイバーンなんだろう、風魔法を使いながら道をふさいでいる。

 

 周りから、化け物だの悪魔の子だの言っている奴がいるが、そうかもなと思った。

 

 正直否定はしない。

 なぜなら、少し役に立てていることが嬉しいと感じている自分がいるからだ。

 

こんな事で、外に出られて完全な自由という訳ではないが、今はこの状況が何よりも楽しい、嬉しい。

 俺は悪魔の子でもいい…………もしそれで、少しでも自由になれるのなら。

 

 この瞬間、本気でそう思っている自分に嫌気がさしながらも、再び頭を空っぽにする。

 私情を挟めばきっともう戦えなくなる。

 

 そこからの俺は、ただ残っている兵士を切り殺す、本物の悪魔になった気分だった。

 

 戦いから感じることのできる愉悦に浸りながら、ただ笑いながら敵を殺す。

 自分が自分ではないような、そんな感覚。

 

少し前の、俺ならこんな感覚起きなかっただろうけどな。

 もうあの時の、俺はいなくなったのかもしれない。

 普通ではなく、異常…………。

 

 斬って、斬って、斬って、斬って人を斬り続ける。

 何度も何度も囲まれては、抜け出しながら、俺を守りながら斬り続けた。

 

 ガイリアの兵士が武器を落とし、降参したかのように縋っていた。

 それでも、俺は迷わず首を撥ねる。

 

俺が受けた命令は、殲滅だ。

 そこに俺自身の感情が入る余地などなく、ただ命令を遂行する兵器。

 

 俺自身、何度も斬られた…………が、俺にとって痛い事はいつもの事だ。

 いつの間にか、俺の体や刀、臥朧が真っ赤に返り血で染め上げられた頃。


残り半分はいたであろう、魔導王国ガイリアの兵士達は既に百を切っていた。

 目の前には、戦意を喪失した兵士達がただ、下を向いて地面に座っている。

 そんな異様な光景だった。


 どこに指揮官がいたのか、いつ殺したのか分からない…………ただ、殺した。

 

 少しの達成感と、心の底から湧き出てくる虚無感が俺を襲うばかりだった。

 そして、開戦から一人で戦い続けて半日。

 

 魔導王国ガイリアの一万の軍を、まだ子供である俺は、完全に殲滅した。

 

 

 

 

 「よくやった、カリル。流石我が国の、兵器だ」


 「有り難き幸せです」

 

 俺は今、自軍の陣地で寛いでいたビンケットのもとに帰って来ていた。

 報告や今後のことを話すからと、俺のことを待っていたビンケットの部下が俺を連れて行ったというと感じだ。


 どうやら、ビンケットは部下から逐一報告は受けていて、戦況は分かっていたらしく。

 あまり驚いた様子はなかった。

 

 俺自身、ここで簡単に死なせてはくれない事もわかっていたしな。

 俺が死にそうになったらなったで策があったのだろう。

 

 だが少しでも自由が手に入るのであれば俺は何でもいい。

 ビンケットは暫く、俺を見ながら悪い顔で笑いながら話し始めた。

 

 「カリルよ、今回の働きを評して貴様にいい知らせをくれてやる」

 

 ビンケットは、そう言いながら話し始めた。

 それはビンケットの直属の部下になるという話だ。

 

 風竜の精鋭軍に入るというよりは、完全にビンケットの武器としてこき使われる感じだろう。

 これを受けるか、受けないか、なんてのを俺自身に決める権利はない。

 

そして、もう一つこいつが何故あんな地下に俺を見に来たのかもわかった。

 最初から俺の下見に来ていたのだ。

 なぜ俺のことを知っていたのかは、分からないが。

 

 簡単に死ぬ奴ならそこまでだが、使える奴なら自分の物にしたほうが、武勲を立てることも出来るし、政治的にも発言力が増すといったところか?

 

 だが俺にとっては嬉しい報告だ。

 なぜなら、ビンケットが言うには俺の住んだりする場所も変わる。

 

 あの地下からおさらばできるのだ、それだったら、なんでも幸福に感じれるさ。

 しかも、それだけじゃなくて毎食しっかりと飯をくれるということだ。

 

奴隷という身分から変わることはない。

 だけど、日の元で生きてもいいということなら、もう何でもいいんだ。

 

 

 

 

 あれから、鑑定をする間もなく臥朧を取り上げられて、また箱に詰められて、荷車で移動。

 そして、目的地に着いたのか箱の中らやっと出させてもらえた瞬間。


俺の視界は日の光と綺麗な緑、花々、とても大きな屋敷。

とにかく、今の俺が簡単に入っていい場所ではない所だ

  呆然と立ち止まって見ていると、執事らしき人物に案内してもらうことになった。

 

 まず俺が住む場所なのだが、屋敷の後ろにある物置小屋のよう。

 とても小さな小屋に住んでもいいということだった。

 しっかりと、窓もあり少し古いが布団もあり、何より普通に生活するには申し分のない部屋だ。


 それから、一日三食本当に飯を出してくれるらしい。

 しかもそれだけではない、自分で洗濯をするなら、服も何着か使ってもいいという事だ。

 正直ここで、俺を懐柔しようとしているのは見え見えではある。


 だが、俺にとってどういう扱いを受けようが、どういう身分だろうが。

 今の俺にこれは贅沢といってもいい程の待遇だ。

 まぁその分この糞みたいな国でこき使われるわけだけど、少しでも、あの自由な時間があるのならもう何でもいいさ。

 

 俺の住むための小屋の掃除などをしていると、ビンケットが帰ってきたようだ。

 ビンケットは、真っすぐ俺のいる小屋にやってきた。

 隣には、俺と同じぐらいの年であろう女の子を連れている

 鑑定してみると、どうやらビンケットの娘ということが分かった。


 名前は、エリーというらしい。

 紫色のドレスを見纏い、俺のことをまるで汚物でも見ているかのように見ている。

 

 まぁ、そんな目で見られることは、慣れているのだが、この国の子供も腐っていると思うと少し、悲しくなった。

 そして、ビンケットは部屋をゆっくり見渡した後に、少し不服そうに言葉を発した。

 

 「命令だ。三日後ここに来る、ジークライア王国の聖女と共に行動し護衛をしろ。これは、王族命令でもある。決して死なせるな。分かったな」


 「はい、分かりました…………」

 

 ここにきて早速、仕事かよ。

 まぁ、ビンケットの表情を見る限り、仕方のない事なのかもしれないけど。

 

 いや、待てよ。

 この任務って、相手がどんな糞野郎でも、俺は少しでも外に出られるってことか!?

 

それは、嬉しいことだ。

 なら、そんな聖女とやらを何としても守らないとな。

 

 しかし、ジークライア王国か…………どこかで聞いたことがあるが。

 うん、忘れたな。

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