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神社と猫〜俺と猫とアイツの話〜

作者: MOZUKU
掲載日:2022/04/23

俺の名前は佐々ささき 大鉄だいてつ。高校2年生の男だ。

売られた喧嘩は買うぐらいには不良である。タイマンなら負けはしねぇ。

なのだが、只今緊急事態である。

"ビターン!!"

朝、教室に着くなり、クラスの黒髪ロングの眼鏡を掛けたガリ勉女が俺にツカツカと近づいてきて、凄い剣幕で俺の左の頬を右手で思いっきり引っ叩いたのである。

「えっ?」

俺は予測不能の事態に思わず気の抜けた声を出してしまった。周りのクラスメートも目をひん剥いて驚いている。

ガリ勉女は俺を叩いても気が収まらないらしく、キッと俺の目を睨めつけてこう叫んだ!!

「アンタ、絶対許さないからね!!」

・・・なんで?俺がこの女に何したってんだ?



女の名前は藤原ふじわら まどか。腰まで伸びた長い髪と黒縁メガネ、そして鋭い目つきが特徴的な女であり、授業中はもちろん休み時間すら勉強、その上塾にまで通っているという筋金入りのガリ勉である。

そん女が何故俺をぶっ叩いたのか分からないが、殴られた左頬がまだジンジンと痛む。

そんなこんなでショックから放課後まで軽く放心状態だった俺は、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、学校を出ていつものように神社に足を伸ばした。

長い階段を上がりながら、殴られた理由を探したが、やはり皆目検討がつかない。それにしても殴られたのにムカムカしないのが不思議だ。

神社の階段を登り終え、大鳥居を潜って、いつものように本殿まで歩いていく。いつもこの時間は人気は少なく、不良の俺でも肩身が狭くならずに済む。

そうして本殿に辿り着き、軒下を覗いてみると、いつものように黒くて小さな生き物が飛び出してきた。

「ニャー♪」

「おぅ、黒助。今日も元気だな。」

生き物の正体は黒猫であり。コイツは元は野良だったが、二年前ぐらいに神社の軒下に住み着き、神主のオッサンから首に鈴付きの首輪を付けてもらって、今ではこの神社のマスコット的存在である。ちなみに黒助は俺が勝手に付けた名前であり、人によって呼び方は様々なようだ。

俺は不良の身でありながら、毎日の様にココに来て猫と戯れている。不良にも心を安らげる時が大切なのだ。

「ニャー♪」

甘ったるい声を出す黒助。そうか、またあれをやる気なんだな。俺は両手で黒助を優しく持ち上げ、顔を近づけた。

すると黒助はいつものように俺の口にチューをしてくる。相手が猫でも正直照れくさいが、慣れてしまえばどうということは無い。

「やめろーーーーー!!」

ん?神社に響く女の怒号。誰かと思って振り向くと、そこには髪を振り乱して息も絶え絶えの藤原 円の姿があった。

「ふ、藤原?どうしてここに?」

「うるせーー!!とりあえずノワールを下に置けぇ!!」

「ノワールなんのことだ?」

「猫のことだよ!!早く置けぇ!!」

騒々しい奴だな。とりあえず俺は言われた通り黒助を下に置いた。

「で、なんでお前がここに居るんだ?」

「なんでもヘチマも無い!!アンタのせいで私は大ショックよ!!この偏差値ド底辺のバカ不良!!」

何かスゲーバカにされてるけど、偏差値ってぶっちゃけよく分からねぇから、頭にもこねぇ。

「とりあえずなんでキレてるのか教えてくれよ。勝手にキレられてるの意味分からんし。」

「そうね。アンタみたいな偏差値でも分かるように懇切丁寧に教えてあげるわよ。アンタ、平日17時〜18時ぐらいの間にここ来てるでしょ?」

「まぁ、学校終わってから一時間ぐらい居るから、それぐらいかな?」

「はぁ、それが問題なのよ。私は塾帰りの20時〜21時の間にここに居るのよ。勉強で疲れ切った体をノワールと遊ぶことで癒してもらってるの。」

「へぇ。そうなのか。」

勉強出来るやつも、出来るなりに悩みがあるんだな。

「つまり平日はアンタのあとに私が来てるってこと!!これで分かったか!?」

「それは分かったが、それの何が問題なんだ?」

「かぁーーー!!偏差値悪い上に察しも悪い!!」

よく喋るやつだな。こんなにお喋りとは思いもしなかった。

そうして藤原はとうとうキレてる理由を話し始めた。

「ノワールは誰にでもキスするキス魔なの。それは私も例外じゃない。つまりそこから導き出される結論は、アンタと私がノワールを通して間接チューしてるってことなの!!」

「あっ、なるほど。」

俺はポンっと両手を叩いて納得した。

「なるほど・・・じゃねぇ!!あぁ、乙女のファーストキスがお前みたいな偏差値低い不良とか、最悪すぎて死ねるわぁ。」

膝から崩れ落ちる藤原。

「ニャー♪」

黒助がそんな藤原にすり寄るが、心ここにあらずといった感じである。

なんだ?こういう場合は俺が慰めてあげないといけないのか?

「そんなクヨクヨすんなよ。たかが間接チューだろ?そんなのファーストキスにならねぇよ。」

「男のお前に分かるかよ。この繊細な乙女心がよ。」

繊細な乙女心?言動を見る限り、とても繊細には見えないが、とりあえず俺一個人の考えを伝えることにした。

「俺は別にお前と間接チューしてても構わねぇぜ。」

「はぁ?なんでよ?」

「今日、朝お前にビンタされたぐらいから、じわじわなんだけどよ。」

「何よ?」

「割と・・・お前に惚れかけてるかも。」

「はぁ!?」

「いや不良なんかやってると真面目に怒ってくれる奴なんか居なくてよ。それで朝ビンタされたらグッと来た。とりあえず友達になってくれねぇか?」

「えっ?はっ?うぇえええええええ!!・・・ちょ、お前何言ってんの!?い、いいい意味わからんし、バ、バッカじゃねぇの!?も、もう帰る!!」

バッと立ち上がり、慌ててて走り去っていく藤原。

それを俺は黒助と一緒に見送った。

「女ってよく分かんねぇな。」

「ニャー。」


〜十年後〜

久しぶりに神社に来てみた。まだ黒助は居るだろうか?

「わーい♪」

「コラコラ、あんまり走ると転ぶぞ。」

今日は娘を連れてきたんだが、テンション高いな。

「にゃんこ♪ココににゃんこ居るんでしょ?」

「居るか分かんないよ。もう居てもお婆ちゃん猫だろうし。」

あまり期待せずに本殿の方に歩いて行き、昔の様に本殿の軒下を覗いてみた。すると黒い小さな生き物が何匹も飛び出してきた。その正体は全部黒猫だった。

「ニャー♪」

「うわぁーー♪にゃんこがいっぱい♪」

娘は喜んでいる。10匹は居るだろうか?皆、黒助の様に首のところに鈴付きの首輪を付けている。

娘はあっという間に取り囲まれて、至るところを舐め回されている。どうやらこの猫達の口によるコミュニケーションは親譲りらしい。

「ニャー♪」

っと、いつの間にか一際大きな黒猫が俺の足に纏わり付いて来ていた。

「お前、黒助か?」

「ニャー♪」

割と感動的だな。グッと来たぜ。

「ありがとうな。お前のおかげで楽しい毎日だ。」

「ニャー♪」

俺が黒助を持ち上げると、昔の様に黒助は俺の口にキスしてきた。やはりキス魔は変わってないらしい。

「ぜぇぜぇ・・・ちょ、ちょっと、アンタら早く行き過ぎ・・・偏差値低いんじゃないの?」

息を乱しながら我が嫁が本殿の方に歩いて来た。どうやら運動不足の体には神社の長い階段は堪えたらしい。

「ほら、今度はアイツにキスを頼むぜ。」

「ニャー♪」

黒助が我が嫁に駆け寄っていく。きっとキスをするだろうな。久しぶりの間接チューだ。とくと味わえ♪



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