幕間 〜子銀狼の決意〜
幕間ですー
最初の仲間ハヤトの生い立ちを書きました。
レウコンカウダウルフと言う狼型のモンスターがいる
全体的に黒色の毛並みで尻尾は白い
生まれてから3年程で大型犬サイズにまで成長する
群れで行動し、群れの規模が大きいほど率いる長は強力な個体とされている。
そんなとあるレウコンカウダウルフの群れに1匹の子狼がいた
その子狼だけが周りの狼と違い前身銀色の毛並みだった
一緒の群れにいる狼達は気味悪がって関わろうとしない、むしろ忌避すら感じていた。
〜ハヤト視点〜
(何で僕だけみんなと違うんだ……)
僕はいつも落ち込んでいた
群れの少し後ろをとぼとぼ歩く
その隣には僕のお母さんがいた
お母さんだけが僕の理解者だった
(毛が違うだけよ、気にする事じゃないわ、大丈夫何かあっても私が守るから)
そう言うとお母さんは僕に頭を擦り付けた。
僕もお母さんに頭を擦り付け返す
僕はお母さんが大好きだった
お母さんがいるからこそ孤独を感じなかった。
(お前の毛並み見ると気持ち悪いんだよ)
ある日群れの長の子が銀色の毛並みをバカにしてきた
子分達も一緒になって威圧してくる
それは耐えられた
(お前の母親は呪いにでもかかってんだろ)
それを言った奴に僕は噛み付いていた
お母さんをバカにするのだけは耐えられなかった。
(こいつがいきなり噛み付いて来やがった!!)
怪我をした長の子が出鱈目な事をみんなに言いふらす
元々気味悪がられていて為かこれ幸いと群れから僕とお母さんを追い出す事が決まった。
(ごめんね……お母さん……)
僕は謝る
(大丈夫よ、あんな居心地悪い所こっちから出てやるんだから!)
お母さんが明るい声で言う。
(それでも……ごめんね……)
僕は今までで1番落ち込んでいた。
(大丈夫よ、あなたは私が守るから……)
お母さんは優しい声で言うと頭を僕に擦り付けたのであった。
お母さんと僕だけの生活が始まった
月日は流れ僕はお母さんに食べ物の狩り方を教わったり戦ってはいけない敵を教えられたりしてとても充実していた
なんだか毎日が楽しい
(違うそれはこうやるの いい? この先は崖があるから逃げ場が限られるから近づかない!)
心配なのだろうか僕に何回も言いつけてきた
(頑張ったわね!)
野兎を狩るとお母さんが褒めてくれる
僕はもっと頑張ろうと思った
ある日の朝今日も野兎を狩りに行く
(見つけた……)
野兎を見つけ気配を殺し忍び寄る
勘の良い兎は危険を感じたのか走りだす
僕はそれを追いかけた
油断だった。
野兎を追いかけるのに夢中で周りを警戒する事を疎かにしていた、お母さんから最初に教わったのに。
僕の前には2つの頭を持った黒くとても大きい狼がいた
牙を剥き出しにし今にも僕を襲いかかって来そうな気配だった。
(あぁぁぁ……)
怖くて声を出すことも逃げようとする事もできない
(逃げてッ!!)
そう言うとお母さんが黒狼の前に飛び出す
僕の匂いを伝って後を追って来たみたいだ
(いいから早く逃げなさい!!!!)
動けない僕をお母さんは蹴った
僕の体は動き出す
僕は暮らしていた群れに戻って助けを乞おうと一心不乱に走った
それしかお母さんを助ける手立ては思いつかなかった。
(お願いします……助けてください……)
群れの長に平伏する
長はさすがに気の毒になったのであろう優しい口調で僕に諭した
(気の毒だが1匹の為に群れ全体を危険に晒すわけにはいかない申し訳ないが諦めてくれ)
長はそう言った
(お願いします……お願いします……お願いします)
僕はそれでも平伏し助けを求めた
群れは僕の前から去っていく。
夕暮れになった
頭の中が真っ白になり
僕はお母さんがいる所に戻った
お母さんは横たえていた
お母さんに近寄る
(よか った……無事 で 強く…………生き て 1人にして…………ごめん ね )
お母さんは最後の力を振り絞り僕に言った。
(おがぁぁぁさぁぁんッッ)
僕は吠えた
いっその事お母さんの言う事を聞かないで一緒に戦って同じ所に最後に逝きたかった。
死を受け入れられずしばらくの間お母さんの元にいた
お母さんの体が腐りはじめる
死体の匂いに寄ってくる下位モンスターを倒す日々がしばらく続いた。
体が朽ちていくお母さんを見てられず浅い穴を掘って埋める事にした。
全てを終え僕はそこから離れる
お母さんに最後に強く生きてと言われ生き抜く事を選択した。
そしてまた月日は流れる
足を滑らせてから後ろ足が少し痛い
僕は休む事にした
そんな時オークが現れた、お母さんが教えてくれたまだ戦ってはいけない敵だった
後ろの草むらから2匹のオークが続く
(ここで終わりか……)
力のない僕が生き抜くにはこの自然は厳しすぎた
(こっちにくるなッ!!)
僕は大きな声で吠える
だがオークに蹴られ僕は転がる
痛みが広がる、血の味がする
死ぬ事が急に怖くなった
僕は生きたかった、死んだお母さんの最後の言いつけを守る為に
そこに身を屈めこちらを伺う誰かがいた
藁にも縋る思いで僕は声を出す
(助 け……て)
何かが僕を飛び越えオークの前に立ちはだかった
オークの悲鳴が聞こえる
誰かが僕を抱きかかえた、不思議ととても優しく感じられた。
僕は安心して意識を手放したのだった。
(ここは……)
僕は起きた
不思議と足も体が痛いのも治っていた
そして隣を見る
知らない誰かが眠っていた。
(知らない誰か……でもこの誰かが僕を助けてくれた…)
僕は誰かを見る
(ヒューマンかな?)
ごく稀に森を探索している同じ様な姿を見たのを思い出す、お母さんはそれをヒューマンと言った。
そして僕は誓う
(このヒューマンの為に僕は生きる)
お母さん以外誰にも助けられなかったが初めて他の誰かが僕に手を差し伸べてくれた事を嬉しく思い瞳を潤わせた。
(よし主を起こそう)
〜ユレンの頬を舐める子銀狼は生きる希望を見出したのだった。〜
次はエルフ!