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蒼ノ英雄譚 〜最強旅団の魔滅記録〜  作者: 暁
第2章 スタンピード編
27/28

〜人助け〜

次の都市へ向かう旅立ちの日が来た。

滞在時間は短かったが濃密な日々を思い返しながらも、ユレン達はそれぞれお世話になった人に挨拶回りに向かう。


「またヘレクレイムに来たら青魚の肴亭に泊まってよね! 安くしとくよ!」


「各地のベイリール商会とソリューションの学園講師への通達は終えましたので、困った事があれば相談してみてください、ありがとうございました旅の安全を祈っております」


「おぅ! おまえさん達にはいろいろ驚かされたな、噂を聞きつけて難度の高い指名依頼なんかも舞い込むと思うから頑張ってくれ、まぁ俺が心配せんでもおまえさん達なら大丈夫か、ガハハ」


「我が軍の兵もあなた方に少なからず影響され皆訓練に今まで以上に精を出してます、いろいろと本当にありがとうございました」


「レオナさんまた会いましょう、俺達が出会ったのは必然であり君の助けを呼ぶ声が聞こえtァぁ、痛い痛い! ちょっ何で!? 耳を引っ張らないで! ごめんなさい!」


それぞれの別れの言葉を思い返し寂しさを覚えながらも新たなる地へ歩み始めた。




ーーーーーーーーー



「ソリューションまで順調にいけば5日くらいで着くか、食料はアイテムボックスにあるから野営に的した場所さえ見つかればいいんだけどな」


「また馬車に乗せてもらえる事ができればいいね!」


「道中村がいくつかあるはずだからそこに泊めてもらうのもいいだろう」


ユレン、ハヤト、レオナは道中の計画を確認し良案を模索しながら春風が吹き暖かな陽気が照らす道を歩いていた。


休憩を挟みつつ3時間は歩いただろうか。


「ん? 何か聞こえる」


ハヤトが何かの音に気づいた。


「どうした?」


「何かキンキンぶつかり合う音……剣?」


「ユレン、とりあえず行ってみないか?」


レオナの提案にユレンは頷く。


道を外れ草木の茂みを進むと開けた場所に出る。

そこで目にしたのはは1人の剣を持った女性が4人の男達に囲まれながらも懸命に戦っている姿だった。


「クソっ! しつこいねアンタ達も!」


「うるせぇ! とっとと捕まりやがれめんどくせぇ!」


「あのガキを逃がした所で仲間がすぐに捕らえるさ、諦めな!」


ユレン達は剣を交えながらする会話を聞き耳立てる。


「只事ではないな……どうするユレン?」


レオナは不穏な空気が漂う目の前の光景を目にし、どうするかをユレンに問う。

ユレンがどうするか考えてる最中に女性は1人の男に背中を切られ前のめりに倒れる。

土まみれになった女性は下唇を噛み悔しさを浮かべた。


「ハヤト、レオナ行くぞ」


「任せて!」


「あぁ、そう言うとおもったぞ」


ユレンの言葉にそれぞれ笑みを浮かべた。


「そこまでだ!」


思わぬ乱入者に男達は一斉に振り向く。


気を取られた隙を突いてハヤトは反対方向から姿を現し素早く倒れた女性を回収しユレンの元に戻る。

すかさずレオナがポーションを女性に飲まし傷口にもかけ治療をした。


「何だてめぇら?」


不機嫌そうにリーダーと思われる男が問う。


「偶然出くわしてな、見てられなかっただけだ」


「これ見てわかんねぇかな? 関わんないほうがいいぞ」


男は腕を捲りカラスが蛇を咥えているタトゥーを見せる。


「知らないな」


ユレンがそう言うと同時にレオナとハヤトが駆け出す。

そしてユレンは魔法を詠唱する。


ハンマーを持った男がレオナの胴体目掛けて振るうがレオナはハンマーの流れに沿って横に移動し回避する、ハンマーの重さで直ぐに切り返しができない男の背後に周り後頭部に鞘に収まった剣をぶつけ男は気を失う。


ハヤトはスピードを活かしジグザグに移動しながらダガーを持った男を翻弄する、捉えきれない男は慌ててダガーを振るうが空振りになり、隙を逃さずハヤトは男の懐に飛び込み急停止からの宙返りをして後ろ足でサマーソルトキックをくらわせる、顎にクリティカルヒットをもらった男は地に沈んだ。


竜巻(トルネード)


ユレンが魔法を放つ。

竜巻は残りの男2人を絡めとり上空へ舞い上げる、少ししたあと魔法が消え落下の衝撃で2人の男も同じ道を辿った。


「これで全部か?」


「まだだ、ユーリを追ってる男がまだ1人いやがる……」


女性はまだ痛みが残る背中を庇いながらも起き上がり告げる。


「頼む、助けてくれ……」


ユレンは今にも涙が溢れそうな瞳を見返し頷いた。


「何かその子が身につけていた物は持ってないか?」


「これではダメか? ユーリが持っていたハンカチなんだが……?」


「ハヤトいけるか?」


「大丈夫! すぐに向かうね!」


ハンカチを受け取りハヤトに嗅がしすぐさま駆け出して行った。


「あのタトゥーは "略奪する烏(クロウ・グラバー)" の者達か」


レオナは思い出した様に言う。


「あぁ、見た通り訳ありでね……」


女性は暗い顔を覗かせる。


「私の名前はヴァレッタ元傭兵だ」


「俺達は冒険者だ、俺の名前はユレン、さっきの狼は従魔のハヤト」


「私の名前はレオナだ」


それぞれ軽い自己紹介を終える。


略奪する烏(クロウ・グラバー)って?」


「強盗、恐喝、麻薬、詐欺、暗殺、違法売春、違法賭博、……まぁ何でもやる犯罪組織みたいなものだな」


ユレンの疑問にレオナが答えた。


「関わってしまったものは仕方ないとりあえず気絶させたけどどうする?」


「少し外してくれないか? 私があとはやる」


「……わかった」


1時間程待ったあとに戻ってくるとそこに男達の姿はなく血を吸った地面に立つヴァレッタが居た。




ーーーーーーーーーーー


「ハァハァ……」


ユーリは息を切らし走る。

どれくらい走ったであろう、6歳の女の子ではそう長い距離を走る事はできない、だが走った時間の感覚は永遠の様に感じた。


(ヴァレッタさん……絶対私のあとを追いかけて来てくれるよね……?)


ユーリは不安の気持ちが溜まりつつも走るのをやめない。


木の根に引っかかりユーリは転んでしまい「キャっ」と声を出す、起きあがろうとするが体力はもう限界だった。


「みーつけた」


前歯が抜け脂ぎった髪が散らかっているいかにも不潔そうな棍棒を持った男が倒れたユーリの前に現れる。


「ぐへへ、かわいいなぁ、ちょっとくらいならバレねぇか……ぐへへお兄ちゃんといい事して遊ぼうかぁ」


ロリコンの男は下腹部を膨らませながらユーリにゆっくりと迫る。

恐怖でユーリは声も発せなかった。


(いや……おじちゃん助けて……)


ユーリは自分を今まで育ててくれたガサツな所もあり酒にだらしないが優しくて強かった男を思い浮かべる。

男の手がユーリに触れる直前……


「ワン!!」


お待たせと言わんばかりに颯爽と駆けつけたハヤトは伸ばした男の腕に噛みつく。


「いでででぇぇ!!」


ハヤトは怯んだ男にすかさず顔面に頭突きをくらわし、ただでさえ少ない歯を砕かれながら男は気絶した。


ユーリは唖然としていた。

絶望的な状況に颯爽と現れたのはまさかの狼のモンスターだったからだ。


「……ありがとう狼さん」


「クゥン」


ハヤトは傷ついたユーリに優しく寄り添う。

最早誰が見てもイケ犬がそこに居た。


「ワォォォーーン」


定期的に遠吠えを上げユレン達に居場所を伝える。

そしてヴァレッタを連れたユレン達と合流する



ユーリの元に向かう途中大まかな話をヴァレッタから聞いていた。



ヴァレッタは元傭兵団の一員で所属していた団は悪徳な貴族に騙され団長は捕まりどこかへ連れてかれた。

ユーリはとある戦場に居た赤子の捨て子だった頃に気まぐれで団長が拾ってきたそうだ、そこから団全員で面倒をみていた。

まだ新米だったヴァレッタは団長が捕まる直前にユーリを託される。

ベテランの傭兵仲間の助けもあって逃げ出させた。

だが団員は逃げ出したヴァレッタ以外皆殺されてしまったそうだ。

おそらくその貴族が略奪の烏(クロウ・グラバー)と結託して追跡者を送り込んだ。




「本当に世話になったありがとう」


ヴァレッタはお辞儀をする。


「ヘレクレイムの領主に手紙を書いたからこれを見せれば匿ってくれるはずだ、それかギルドマスターのザガさんに俺の名前を出して話してもいいと思うよ」


「すまない、この恩は必ず返す……」


「お兄ちゃん達狼さんもありがとう」


ユーリはハヤトをモフっている。


「じゃあ気をつけて」


ヴァレッタ達に別れを告げユレン達はソリューションに向けて再び歩きだした。


















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