〜ヘレクレイムにて〜
「すみませんでした!!」
ユレン達がヘレクレイムに着くとバラン達が駆け寄り一斉に土下座をした。
「お前らアリッサ拉致したよな?」
「は、はい……」
ユレンは睨みを効かせる。
「殺してねぇだろな……?」
「絶対してません!! 眠らせて路地裏の酒樽の中に隠しました……」
ユレンはバラン達の必死な目を見た。
(嘘はついてなさそうだな)
「まず最初にアリッサを解放したら青魚の肴亭の親子に謝れ、そのあと衛兵所に行って自首しろ」
「わかりました……」
「とんずらしたら追いかけて潰すからな☆」
ユレンは満面の笑顔を見せる。
「ヒィぃぃぃ!!」
バラン達は笑顔の奥に秘めた怒りを感じ悲鳴をあげた。
「早く行け」
「わっ……わかりましたぁぁぁぁ!!」
バラン達は足をもつれさせながらも走り出して行く。
「主、怒ると怖いんだね……」
「最後の笑顔で肝が冷えたぞ……」
ハヤトとレオナはユレンの意外な一面に目を丸くした。
「ハハハ、まぁこれくらいはね」
「よし、帰ってゆっくりしよう!」
ユレンは居た堪れなくなりそうなので話を逸らした。
ユレン達は青魚の肴亭に着く。
「あ!ユレンさん!」
アリッサの父親が駆け寄って来る。
「大変ご迷惑をおかけしました、冒険者のゴルドーさんがアリッサを見つけてくださって無事に戻りました」
父親は深々とお辞儀をして言う。
「ゴルドーさんが! あとバランって言う冒険者達は来ました?」
「先程来られました……まさか目撃者の方が犯人とは……最初は怒鳴り散らしましたが、アリッサも無事でしたし迷惑料も頂いたのでこれ以上言及する事はやめました」
「そうですか……」
「そのあとは自首するとか言って衛兵所に向かいました」
(流石に約束を守ったか)
「これもユレンさんのおかげです、今日は晩御飯を豪勢に振る舞いますので是非食べてください、もちろん代金は頂きません」
「ありがとうございます」
話を終えユレンはレオナに尋ねる。
「レオナはこのあとどうするの?」
「私も一旦宿に戻るよ」
「夕暮れになったら、またここに来てくれ一緒に晩飯を食べよう」
「わかった」
レオナはそう言ってユレン達と別れた。
そして夜になり晩飯を食べながらユレンはレオナに尋ねる。
「どうしてレオナは冒険者になったんだ?」
「……まぁユレン達にならいいか」
レオナは暫しの沈黙の後語り出す。
「私の家は代々王家に仕える騎士の家系だったが国が滅びてな……王家の者は全て打首になったんだが王が密かに逃した者が居たと後々発覚し、見聞を広めつつその方を探しているんだ」
「そうだったのか」
「皆いろいろあるんだね」
ユレンは納得しハヤトは感慨深そうにしている。
「ユレンはどうなんだい?」
ユレンはこれまで自分に起こった事を話した。
「何だその濃すぎるエピソードは……」
レオナは唖然としている。
「本当だよね、3回くらいは死んでないとおかしいよ」
「まぁ、その答えを知りたくて旅をしているんだ」
「それは誰でも知りたくはなるな……」
ユレン達は夜が耽るまで語り合い解散した。
そして4日目の朝になりレオナと合流してユレン達は冒険者ギルドに向かう。
ユレン達がギルドに入ると賑やかだった室内が一瞬にして静まり返った。
「あれが昨日のやつか……」
「本当にスタンピード終わらせた奴か? まだガキじゃねぇか」
「ばっか!! 聞こえたらぶっ殺されんぞ!! 俺は昨日この目で見てんだから」
ギルドにいた者はボソボソと噂話をする。
「はぁ……しばらくしたら次の都市に向かおう……」
居心地の悪さにユレンはため息をついた。
しばらくすると外からパカパカと馬の足音が聞こえる。
音はギルドの入り口で止まり扉が開く。
「お待たせしました」
パメラはユレン達を見つけると、深々とお辞儀をした。
「いえ、俺達も今来たばかりですので」
「それはよかった、では馬車にお乗りください」
パメラはユレン達を馬車に案内する。
そしてユレン達を乗せた馬車は領主館に向けゆっくりと歩き出した。
「やっぱり本当だったんですね」
「絶対私の彼氏にしてみせるわ!」
「人は見かけによらないんだな……」
「ヤベェ……ガキって言っちまったよ俺……」
ユレンが去ったあとギルド内はユレン達の話題で華を咲かせ騒々しくなった。




