〜始まる防衛戦〜
「ここはどこ?」
アリッサは眠りから目覚める。
閉鎖的な暗い空間にいる事は体感でわかった。
「ここから出してーー!!」
アリッサは大声を出しながらここから脱出しようと暴れる。
「ん? 何か声がしたな」
スタンピードの準備の為たまたま近くを通りかかっていたゴルドーがその声に気づいた。
「誰かーー!!」
「こっちか!!」
アリッサの声を頼りにゴルドーは進む。
そして大きな酒樽の前にたどり着いた。
「大丈夫か!?」
ゴルドーは酒樽に向かって声を掛けた。
「よかった!! 開けてー!」
アリッサは助けが来た事に歓喜した。
ゴルドーは固定されていた酒樽の蓋をこじ開ける。
「やっと出れた……」
アリッサは安堵の息を洩らした。
「何にがあった嬢ちゃん?」
ゴルドーはただならぬ予感を覚えた。
「私にもよくわからない……誰かに何か嗅がされて気づいたらこの中で寝てた……」
「詳しい事は衛兵に話すといい、とりあえず家まで送ろう」
ゴルドーはアリッサと一緒に青魚の肴亭へと歩き出した。
「アリッサ!! 無事だったか!!」
アリッサの父親と母親が駆け寄ってくる。
「心配かけてごめん……怪我とかはないから安心して」
3人は抱き合いながら再会できた事を喜んだ。
そしてアリッサは事のあらましを話した。
「アリッサを送って頂きありがとうございます」
「いや、俺は特に何もしてないから気にしないでくれ」
母親の感謝の言葉にゴルドーは自分は見つけただけだと苦笑した。
「それよりもユレンさん達は一緒ではないのか?」
父親はアリッサの捜索依頼を受けたユレン達が一緒では無い事を不思議に思う。
「え? ユレンとハヤトには会ってないけど?」
アリッサは首を傾げた。
「たしか金髪の白い軽鎧を装備してた女性も一緒について行ったわ」
母親が付け足して言う。
「それはレオナだな、最近坊主達と一緒に依頼をよく受けてたな」
とゴルドーは言う。
「アリッサが男に連れらてサガリト山の方に行ったと目撃した人が居てな、ユレンさん達はその後を追っていったよ」
「なんだと!!」
父親の説明にゴルドーは声を張り上げた。
「え? 何か問題でも?」
「いや、何でもない……」
ゴルドーは取り乱した事を誤魔化す。
(まずいぞ、あそこら辺は今大量のモンスターがひしめきあっている、生きている確率の方が低いぞ……)
ゴルドーはユレン達の悲惨な状況を想像し憂いた。
(何はともあれスタンピードを何とかする方が先決だ捜索してやりたいとこだが人手が無さすぎる……)
ゴルドーはタイミングの悪さに顔を顰める。
「とりあえず衛兵の駐在所にこの事を話に行ってくれ、すまんが俺はやる事がある」
ゴルドーはそう言うと青魚の肴亭を後にする。
アリッサ達3人はゴルドーの背に向けてそれぞれ感謝の言葉を述べお辞儀をした。
「街兵長は門兵に戦闘員以外は外に出すなと通達、パメラは各歩兵隊長、騎馬隊長に平原へ向かい隊列を組み待機を通達しろ、その後の指揮は任せる、ギルド側には冒険者の統率をザガに一任する」
カインの指示が飛び交う。
兵が冒険者が忙しなく動く、そして戦闘の火蓋は切って落とされた。
平原に兵や冒険者が並ぶ。
「この都市の存続は我々に懸かっている! お前達にもいるだろう、家族、友人、恋人、が危機に晒されている! 王国から援軍が来るまでの辛抱だ、耐え抜くぞ!!」
「うぉーーー!!!」
パメラが演説を行う。
その横にザガ、雄大が立た事によって兵と冒険者の士気は最高潮に達した。
そして偵察に向かった早馬が戻ってくる。
「まもなくモンスターの群勢が迫って参ります」
早馬の報告を聞きパメラは頷いた。
「モンスターを向かい打つ、陣形を組め!」
訓練された兵は素早く移動し始めた。
「俺ら冒険者は遊撃に向かう!! 片っ端から蹴散らせ!!」
ザガは冒険者達に指示を出し先頭に出た。
「兄貴……大変な事になりやしたね」
「あぁ、だがここは俺たちの街だ簡単にくれてやるかよ」
バランは子分達に喝を入れる。
「俺、生き残れたら入れ込んでる娼婦に告白します」
「バカ、それ巷では死亡フラグって言うんだぜ笑笑」
軽口を言い過度な緊張を解そうとするパーティメンバー達をバランは死んでも守ると心に誓う。
そして平原からそれらは徐々に姿を現し始める。
際限なく犇くモンスター達が向かってくる。
その光景に顔が引きる攣者、緊張で生唾を飲む者、獰猛な笑みを浮かべやる気に満ちてる者様々な反応を見せる。
「構えーー!!!」
「は!」
パメラの号令に攻撃態勢を取る兵達。
「Sランクパーティの実力を見せてやろう、皆!」
「はい!」
雄大の勇姿に頬を赤らめさせ返事をする4人の美女。
「お前ら生きろよ!」
「何言ってるんですか、当たり前ですよ」
ザガに軽口を言う冒険者達。
そして各々モンスターの群れに向かって走り出す。
血で血を洗う戦いが始まった。
ーーーーーーーーー
「ガァァァァァ!!」
とてつもない咆哮が場を支配する。
モンスター達も、人間も皆等しく硬直した。
1人が上空から何か近づいてくる事に気づくと皆空を見上げた。
「な……赤龍だと……」
パメラは絶望する。
20万を超えるモンスター達を食い止めるのもギリギリなのに、赤龍の相手など完全に予想してなかった。
「あの竜までこちらに来やがった……」
バランはユレン達を襲ったら満足して帰ると安直な考えでいたがその事を後悔した。
そして赤龍の口にとてつもなく凝縮されたエネルギーが集まるのを只々誰もが見てるしか無かった。




