〜魔法の習得〜
早めに更新してきますー
夢を見ていた。
黒い凶々しい竜と、白い翼を背に生やした人々が戦っている。
場面は変わる。
6枚の翼を持つ人が何かを言っているのを薄らと聞こえた、聞いたことある声だが顔がボヤけて誰か特定はできなかった。
場面はまた変わる。
黒竜の背後から漆黒の闇が侵食し翼人達を飲み込んでいく。
6枚の翼を持つ人が背後を振り返り何かを呟く、その後全身から光が溢れ出し、闇の侵食を食い止める。
ボヤけた顔は不思議と悲しみながら微笑んでる様にそれは見えた。
頭上から滴る水滴に頬を打たれ、ユレンの意識は覚醒してゆく。
「ん……あぅ……」
思考ができるまで意識は覚醒し、ユレンは少し前まで最悪だった状況を思い出した
そして慌てて体を起こすが力が入らなく、足がもつれ地面に体を投げ打つ。
ユレンはどうやら自分が今いる場所は魔水の湖ではなく、どこかの川の岸だと気づき陸地まで体を這いずる。
陸地に着いたユレンは辺を見渡した。
そこは洞窟の中ではあるが湖のあった空間より狭く、天井の岩の隙間から光が差し込み草に囲まれた川があり背後には何処かに続いてるであろう空洞があった。
「ここは……どこだ……?」
ユレンは混乱しすぐにでも動き回り、自分が置かれた状況を確認したいが体が言うことを聞かない
そこでまずは体力回復を図るために、食べ物を探す事と手足のストレッチを優先する事にした。
体に外傷や体調も悪くない為ユレンはほっとする。
手元にある石にへばり付いていた貝と、岸に打ち上げられていた小魚を取って口に運ぶ。
「不味い……でも食べられるだけマシか……」
そう愚痴をこぼしながらもユレンはストレッチ始めた。
食べながらユレンは嫌でも考えてしまった。
(バグログさん達は確実に死んでしまったよな……)
悲惨な後悔を思い出し胃液が逆流してくるが食べた物を吐き出さない為唾液を飲み込む。
(俺は何故生きている……?)
体に取り込まれた光玉に助けられたと安易に予想はつくが、その正体が全くわからない。
(あの夢はいったい何だったんだろう……)
あの様な不思議な夢を見る体験が初めてだったからか鮮明に記憶に刻まれていた。
考えを振り払うかの様にユレンは手足のストレッチを始める
3時間くらいストレッチをし立てる様にはなりユレンはゆっくりと歩き出した。
不幸中の幸いか周りにモンスターの気配が全くなく、川の水を飲むが飲み水としては問題なかった
そして空洞の中へと歩き出した。
空洞の奥に行くと階段があった、どうやら上に行ける様だ。
ユレンは歓喜する、階段があるという事はここに人が出入りしているという事を考えて。
焦る気持ちを抑えつつゆっくりと階段を上がり階段を登りきるとそこには扉があった、そして扉を開ける。
そこは誰かが生活してたであろう部屋があった。
岩壁の隙間から光が差し込み中は明るい、机がありその上には乱雑に置かれた本とその横には本がびっしり詰まった本棚、すぐ後ろには木製の古びたテーブルと薄汚れたシーツが履かれたベットがあり床には割れたフラスコと試験管が散らばる。
部屋には扉がもう一つあった
どうやらそこから違う部屋に行ける様だ。
「誰かいませんかー?」
返答がない事にユレンの気は落ち込む
とりあえずユレンは今いる部屋の探索をする事にした。
乱雑に置かれた本の一つを手に取りページを捲る。
ユレンは幼いころ両親に読み書きはある程度教わっていたがそこには知らない文字が書いてあった、大陸共通語ではなかったのだ。
「下位火魔法の術式構成について」
ユレンはその文字が読める事に驚愕した。
「俺の体どうなったんだ……」
ユレンは怖くなり本を元の位置に戻す
本関係を調べるのは後回しにしようと一時的な現実逃避に走る。
続いてベッドやテーブルを調べるが何もなかったので次部屋に行く事にした。
次の部屋に入るとそこには鉱石、薬草、非常食、武器、骨董品が置いてある物置きだった
奥には床に描かれた魔法陣とすぐ横には鍵が掛かった扉があった。
ユレンは探索を始める。
鉱石や薬草を手に取るが種類がわからない。
武器は鯖は少なく使えそうであった。
非常食はまだ食べられそうだった。
骨董品を見ると一際は気になった水晶を手に取る
水晶の中に数字の0が浮かび上がっていた。
少しして水晶が光だした
ユレンは驚き水晶を落としてしまい慌てて拾う
水晶の中の0の数字が消え15000000という数字に変わった。
「なんだこれ?」
ユレンは答えの緒すらない考えても仕方ないと思い水晶を戻し物色を再開する。
姿見を見つけ自分の姿が視界に入る
「うわッ!! なんだこれは!!」
ユレンは鏡に映った自分の姿を見て大声を出した
元々髪と瞳はブラウンだったが、髪は群青に瞳は透き通った空色になっていたのだ。
劇的な変化に戸惑い考え込む
暫しの沈黙の後ため息を出して物色を再開する
答えがわかるわけもなく、体調に変化はなくなんとかなるだろうと空元気を出すしかなかった。
他には古びた袋や開かない装飾の綺麗な箱等があったが用途がわからず物色をやめた。
奥にある魔法陣と扉の前に行く。
恐る恐る魔法陣を踏むが何も起こらない、隣の扉も案の定開かなかった。
探索を終え最初に来た部屋に戻った。
後回しにした本を手に取る。
「問題はこれだよなぁ……」
思い切って本を読み切ってみる事にした
何かこの先役立つ事が書いてあるかもしれないと思い
水と非常食はあるので時間の猶予もあった。
本を読み終える。
「結構わかりやすいな」
補足や解説も丁寧に書かれていた為理解はできたとユレンは得意げになった。
いきなりユレンの脳内にアナウンスが流れた。
「※下位火魔法を習得しました※」
ユレンは何事かと驚いた
今日という日は驚きに満ち溢れすぎて耐性がついたのかすぐに我に戻り冷静に考える。
(もしかして……火魔法覚えちゃった感じ……?)
確認をしにユレンは地下に降り川に行く
ダメ元で手を前に突き出しファイアボールと唱える
掌から野球ボールサイズの火球が放たれた。
川に着弾した火球が水を気体に変える。
「魔法……できた……」
続いて同じ下位火魔法のファイアアロー、ファイアウォールも発動させるが問題なくできてしまった。
ユレンは暫しの沈黙の後歓喜する
これで生き延びれると
黒狼に追い詰められた時はすんなり死を受け入れたがユレンは自殺志願者ではない、ただ人生が変われる切っ掛けがなかっただけだったのだ。
ユレンは思ったこれはチャンスだと
生まれ変わる、力が手に入ると
ユレンは急いで本のある部屋に戻った。
「この本全部読む!!」
ユレンは一心不乱に本を読み漁る、食料は3ヶ月分はあるので食料が尽きそうになるまで本から学ぶ事にした。
並行して日を数える
物置き部屋にあった木の板にナイフでX晒しを書きカレンダー代わりにする事にしたのであった。
そして月日は流れる……
次回は外に出る回にします