〜冒険者登録とDランク試験〜
「主、こっちは終わったよ!」
ハヤトとユレンは一体ずつレッドベアと闘っていた。
「ちょっと待ってて」
ユレンはレッドベアの突進を横にずれて回避と同時に、樹剣で胴体を一閃する。
レッドベアは臓物を撒き散らし絶命した。
森の中はやたらとモンスターと遭遇する確率が高く、戦闘の連続でアイテムボックスはモンスターから取れる素材と魔石でいっぱいだった。
「毛皮と爪は素材になるな魔石を忘れずにと……あとは晩飯の肉も回収しとこう」
「ハヤト!ちょっと解体するから周り警戒しといて!」
ユレンはハヤトに周りの警戒を促す。
「わかった!」
ハヤトは敵が来たらすぐに動けるよう感覚を研ぎ澄ませた。
解体も終わりユレンは夜になる前に野営の準備をする。
枯れ木に火をつけ、アイテムボックスからフライパンと鍋を出し、レッドベアの肉と香辛料、少々の野菜を取り出す。
「今日はレッドベアのステーキと野菜のスープな」
「やったぁ!」
ユレンはハヤトに献立を教えるとハヤトは涎を垂らしながら喜んでいた。
夜になり晩飯を食べ終え寝床につく、明日には森を抜ける予定だった。
(もうすぐ出口だ、3日かかるとはどんだけ広いんだここは笑)
心の中で苦笑しながらもゆるやかにユレンは眠りにつく。
朝を迎えユレンは森の出口へと再び歩きだす。
最後の山を降り森を抜けるとそこは平原だった。
心地よい風がユレンの肌を撫でる。
「やっと出れたな!この先にある商業都市ヘレクレイムが1番近い町だからそこに向かうぞ!」
「わかった!初めての場所だから油断せずに行こ!」
ユレンとハヤトは平原を歩く。
しばらく歩くと小さな村がありそこの村人が馬車でヘレクレイムへと商いをしに行くと言うので、ユレン達は森で狩ったレッドベアの毛皮と交換に馬車に乗せてもらう事にした。
「いやぁ、楽ちん楽ちん……」
ハヤトがだらけながら呟く。
ユレンはその姿を見て微笑み、今後の予定を言う。
「ヘレクレイムに着いたら、まず冒険者登録をしようと思う、登録したらギルドからタグを貰えるんだがそれが身分証明の代わりにできるらしいよこの先の旅路でかなり役に立つ、あとハヤトも都市に入れる様に従魔登録もしないとな」
「忙しそうだね主は……」
「バカ、お前もついてくるんだよ笑」
2人は笑い合う、馭者に乗る村人はユレンは誰と喋ってるのかわからず首を傾げるのであった。
しばらくしてヘレクレイムに到着し、ユレンとハヤトは堅牢な外観に驚く。
石の外壁は高く、人々が行き交う門はとても立派だった。
「すごいね!あんな高い石の壁見た事ないよ!」
ハヤトは目をキラキラさせていた。
村人にお礼を言い、ユレンとハヤトは門に入る列へ並ぶ。
(冒険者や商人が多いな、ギルドの依頼の数も多そうだ、それだけ需要と供給がある栄えた都市なのだろう)
ユレンは門に並ぶ人々を観察しそう考えた。
ユレンに順番が回ってきた。
「何か身分証明はあるかい?」
門兵はユレンに問う。
「持っていません、この都市で冒険者登録をしようと思っています、あと従魔登録をしたいんですど、どうすればいいですか?」
ユレンは門兵に答える。
「身分証明がない場合銀貨1枚を徴収する、冒険者登録を済ませたら入り口に待機している係の者に身分証明を見せれば銀貨1枚は返却される、あと従魔登録は外の脇道を沿って行くと小屋があるからそこで受け付けをしてくれ」
門兵の説明を聞き、ユレンは銀貨1枚を渡す。
そして従魔登録を済ませる為に小屋へ向かった。
小屋へ入り受付嬢に従魔登録の申請をする。
「従魔が問題を起こした際全て飼い主の責任になります、従魔の事故、盗難にあった際ギルドは一切の責任を取りかねます、あとは従魔が暴れて飼い主も手をつけられないとこちらが判断した場合は討伐対象になりますので気をつけてくださいね」
「大丈夫でしたらこの紙にサインと血印をしていただきます」
受付嬢の説明を聞きユレンはサインと血印を押す。
受付嬢は引き出しから腕輪の様な物を取り出す。
「従魔にこの輪をつけてください、これが従魔の証となります、仮にどの都市の中でもこれをつけてなかったら、罰金か最悪その従魔は討伐対象になりますので、気をつけてくださいね」
ユレンはハヤトの左前足に輪を取り付けた。
輪は収縮しハヤトの足にぴったりなサイズになる。
「なんかこれかっこいいね!」
ハヤトは何故か気に入った様だ。
「この輪は壊れたりしないんですか?」
ユレンは受付嬢に聞く。
「特殊な製法で作られている為滅多なことでは壊れません、取り外しはボタン一つで簡単にできますよ」
受付嬢は笑顔で答えた。
ユレン達は従魔登録を終え次は冒険者ギルドへ向かう。
ギルドの扉を開けると中は賑やかだった。
酒場で酒を飲み上機嫌な人
依頼書を見る人
パーティ同士で話し込んでいる人
パーティに入れてもらえる様自分を売り込んでる人
ナンパされて困ってる受付嬢
見ない顔からかその人達はユレンに一瞬注目するが各々の行動に戻る。
「主、なんか緊張しちゃうね」
「確かにな笑」
ユレンとハヤトは歩き方がカチカチになり田舎者丸出しで受付へ向かう。
「あの冒険者登録をしたいのですが」
ユレンは受付嬢に尋ねる。
「はい、まず初めに登録料銅貨五枚必要ですが今日はお持ちですか?」
ユレンは持ってると頷く。
「ではこちらの紙にいくつか記入していただきますが字は書けますか?」
ユレンは書けると頷く。
「では記入をお願いします」
名前 ユレン
年齢 15
職業 魔法使い 剣士
従魔 有 名前 ハヤト 種族 レウコンカウダウルフ亜種
ユレンは記入を終え銅貨5枚と一緒に受付嬢へ紙を渡す。
「はい、確認しました」
次に受付嬢の説明が始まる。
「まずはランクの説明をします、ランクはS、A、B、C、D、Eとあります、最高ランクはSで最低ランクがEになります、今の自分より上のランクの依頼は受けられません、ですが指名依頼、ランクを問わない依頼は受注できます、あとはEの冒険者は駆け出しとなりますので必ず月1回は依頼を受けていただきます、依頼受注が無かった場合は冒険者登録を剥奪になりますのでご注意くださいね、また依頼を失敗した場合は罰金になりますので、ちゃんと依頼書を読んで受注してください」
「細かいルールは冒険者のギルドの手引きを渡しますのでまずはしっかりお読みになってください」
受付嬢に小冊子を渡されとりあえずユレンはそれを読む。
「重要そうなのは……」
冒険者同士の諍いにはギルドは介入しない。
虚偽の依頼内容、依頼遂行中に何らかのアクシデントで依頼内容を超える難易度になった場合は罰金は無い。
ランクアップは依頼の達成数、ギルドの貢献度、依頼者の評判を主に査定し、問題なかった場合ランクアップ試験を受けられる。
ギルド内や依頼遂行中での悪質な行為を発覚した場合厳重な処罰をする。
実力に自信がある場合は登録試験を受け合格する事でDランクからスタートできる。
「この辺かな……」
ユレンは小冊子の説明をみて呟く。
「なんか説明が多くて混乱しちゃうね」
ハヤトはすでに理解するのはユレン任せだった。
(この都市に長居しないかもしれないし、Eランクのままじゃめんどうか……Dランクにはなっておきたいな)
ユレンはそう考えるとハヤトに問う。
「Dランクからなれる試験受けようと思うけどハヤトはどう思う?」
「大丈夫なんじゃない?結構僕ら強くなったしね!」
ハヤトはやる気満々な様だ。
「よし!じゃあやるか!」
ユレンはそういうと再度受付へ向かう。
「すみません、Dランクからスタートできる試験を受けたいんですけど」
「わかりました、少々お待ちください」
ユレンの言葉を聞き受付嬢はバックヤードに行ってしまった。
しばらくすると試験官らしき人が近寄って来る。
スキンヘッドで頬に傷があり無駄の無い筋肉ですでに見た目で強そうだった。
「おめぇさんが試験を受けるユレン君かね?」
試験官はユレンに問う。
「そうです」
ユレンは頷く。
「俺はこの試験を担当するゴルドーだ、先に言っておくが公平な審査をするから、甘くしてくださいとかは無しだぜ」
ゴルドーはニカっと笑ってユレンに告げた。
「もちろんです!」
ユレンは気合充分だ。
ユレンとハヤトはギルド内にある修練場に連れて行かれる。
「ふむ、おめぇさんは魔法と剣両方使えるようだな……基本はどちらかに専念するもんだが、とりあえず両方確認していいかい?」
「わかりました」
ゴルドーの質問にユレンは頷く。
「では先ずは剣からな、おめぇさん剣はどこに持ってるんだい?」
ゴルドーは愛用のロングソードを肩に担ぎ不思議そうにユレンに尋ねる。
「ここに」
ユレンは義手に魔力を込め、樹剣を作り出す。
「な! このパターンはタダもんじゃねぇな……こりゃ」
ゴルドーは驚き苦笑する。
2人は剣を構える。
先手はゴルドーだった、トップスピードでユレンに近づき上段から豪快に剣を振るう。
ユレンは上段切りを樹剣で受け止め後方へ衝撃を流す。
ユレンはその反動を利用しくるっと一回転してゴルドーの脇腹に横薙ぎを入れる。
ゴルドーは反射でそれを察知し剣で受け止める。
ユレンは樹剣を引くとゴルドーの死角に半歩移動し、突きの体制に入る。
「あぁ、わかった、わかった、剣は合格だ正直驚きだぜ」
ゴルドーはユレンを称賛した。
ユレンはお辞儀をする。
「んじゃ次は、魔法な、あそこの藁でできている人形に向かって、何か魔法を放ってくれ」
「わかりました」
ユレンは詠唱を始める。
「火球」
火球は藁人形に当たり貫通した、空いた穴には焦げ跡が残り、薄っすらまだ燃えていた。
「ただの下位魔法が何て威力をしてやがる……」
ゴルドーは呆れていた。
「文句なしの合格だ」
ゴルドーはユレンの背中を叩きながらそう言った。
「ありがとうございます!」
ユレンは嬉しくなりついガッツポーズをしてしまう。
「あれ? 僕の出番は?」
やる気満々だったハヤトは自分の番がない事に気を落としユレンに励まされるのであった。
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