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蒼ノ英雄譚 〜最強旅団の魔滅記録〜  作者: 暁
第1章 深緑の森編
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〜ユグドラシルからの報酬〜

ユレンは前回の夢で見た真っ白な空間にぽつんとある椅子に座っていた。


「この地は救われました、天の因子を持つ者よ、ありがとうございます、目が覚めたら眷属の妖精を遣しますので、私からのささやかな御礼を受け取ってください」


綺麗な女性はそう言ったあと消えていった。


ユレンはゆっくりと瞼を開け目を覚ます。


「ここは……」


ユレンはエルフの里で借りている家のベットにいた。

床にはハヤトが寝ていた。

どうやら時間帯は深夜の様だ。


「クゥン……?」


ハヤトは目を覚ます、そして目覚めたユレンを見てゆっくり立ち上がりユレンの頬を舐めた。


「ははッ……くすぐったいよハヤト」


甘えるハヤトを撫でようとするが右手が肘から先が無く、自分の体は所々包帯で巻かれていた事に気づく。

腹に空いたはずの穴は何故か塞がっていた。


「そうか……俺は……」


ユレンはジェネシスとの戦いを所々覚えていた。

そして右腕を失った事を思い出した。


「チェルシーが救えただけでも良かった」


ユレンはそう呟き黄昏れる。


「ハヤト、俺はもう一眠りするよ、また明日」


ユレンはハヤトにそう言うと眠りにつく。


「クゥン……」


ハヤトはユレンが完全に眠りにつくまで寄り添うのであった。


そして朝を迎える。

ユレンは目を覚ます

その時ちょうど玄関の扉が開く音がした、誰か来た様だ。


「ユレン……」


やって来たのはチェルシーだった。

そして持っていたバスケットを放り投げユレンに向かって駆け出し抱きつく。


「ユレン……生きてた……よがっだぁうぅ……」


チェルシーはユレンに抱きつきながら泣き出した。


「チェルシーも無事で良かった……」


ユレンはそう言うとチェルシーの背中を優しく摩った。

ユレンに付き添っていたハヤトは2人を黙って見守っていた。

2人は落ち着くと朝食を摂る。

昼頃にセネクスとロイツが様子を見に来ることをチェルシーはユレンに告げた。


そして昼になりセネクスとロイツがやって来た。


「とりあえず元気そうでよかったのぉ」


セネクスは微笑みを浮かべユレンに言う。


「あの、俺どのくらい寝てたんですか?」


ユレンはふと気になり聞いてみた。


「4日眠っていた」


その問いにロイツが答える。


「4日……」


ユレンは驚く、感覚的には1日眠っていたぐらいだと思っていたからだ。


「事のあらましはチェルシーから聞いておる、今はゆっくり体を休めるといい」


セネクスは優しく言う。


「チェルシーを守ってくれて本当にありがとう」


ロイツは深々とお辞儀した。


そう言って2人は部屋を後にした。


「ユレン……あの力は何だったの?」


チェルシーは恐る恐るユレンにジェネシスを倒した力について聞いてみる。


「ごめん、自分でもよくわからないんだ……」


ユレンは素直にそう告げた、説明したくても自分でも全くわからない。


「そう……でもユレンはユレンだから」


チェルシーはユレンに向かって優しく微笑んで励ました。

チェルシーはユレンの身の回りの世話を終え帰って行った。

体を動かす為にハヤトを連れ外に出る。

日差しが眩しい、ユレンは自分が生きている事を再度実感した。


里の人々が集まってくる、ユレンとハヤトはすでに里の英雄だった。

悪しき者を倒した事は里中に知れ渡っていた。

里の中を歩くたびにエルフの人々からお礼を言われ食べ物を渡され、ユレンの方手は貢物でいっぱいだった。


「一回家に帰るかハヤト」


ユレンは困った顔でハヤトに言う。


「ワン!!」


ハヤトは返事をしユレン達は家に戻った。

ユレンが家に戻ると居間に何かがいる気配を感じた。


恐る恐る居間に近寄るユレンとハヤト

居間を覗くとそこには拳ほどの光球が浮かんでいた。

光球はユレンに近づく、そして人の形になる。

それは羽の生えた男の子の妖精だった。


「やぁ、君がユレン君と隣は相棒のハヤト君かい?」


妖精は問う。


「そうだけど……君は……?」


「ワン!!」


ハヤトは妖精に返事をし、そしてユレンは警戒しながら聞く。


「僕はユグドラシル様の遣いさ!」


妖精は胸を張って言う。


「それで、どんな用なんだい?」


ユレンは妖精に問う。


「あれ? 夢でユグドラシル様が報酬を渡す事を伝えてなかった?」


妖精は首を傾げた。


「あ、そういえばそんな夢を見たな」


ユレンは思い出す。


「もう! ユグドラシル様のお告げを忘れないでよ!」


妖精はプリプリと怒っていた。


「んじゃぁ、先ずはハヤト君からね!」


妖精は怒るのをやめハヤトに近寄る。


「クゥン?」


ハヤトは何かあるのと言いたげに首を傾げる。


「ハヤト君にはユレン君との意思疎通のパスを繋げるのと、氷魔法を使える様にするよ!」


妖精はドヤ顔でハヤトに言う。


「ちょっと待って、それどういう事?」


ユレンはさらっと妖精がとんでもない事を言ったのに対しすかさず聞く。


「用はハヤト君とユレン君はパスを通じてお互い喋れるようになるって事、氷魔法はそのままの意味ね!」


そう妖精はユレンに説明した。


「ヤバいなそれ」


ユレンは思わず笑ってしまった。


「ハヤト君はその力を授かるけど大丈夫?」


妖精はハヤトに最終確認する。


「ワン!!」


どうやらハヤトはOKの様だ。


「それじゃあ、行くよ!!」


妖精の指先から小さな光が放出しハヤトの額に入っていく。


「できたよ! 少しユレン君に向けて喋ってみて!」


どうやら終わったようだ、ハヤトに力の確認を促す。


「主! 聞こえる!?」


ユレンは驚愕した。

少しフリーズした後口を開く。


「ハヤト、体調が悪くなったとかないか?」


ユレンは少し心配気にハヤトに聞く。


「大丈夫!! やった!! 主と喋れる!!」


ハヤトは嬉しくてぴょんぴょん跳ね回った。


「じゃあ次はユレン君ね!」


今度はユレンの番だ。


「ユレン君には失った右腕にユグドラシルの種子を入れる、種子はユレン君の魔力を吸いすぐに成長し義手になるよ、肌の質感や関節の動き等全く見分けがつかない人間の腕そのものになる、あとは "精霊王のローブ" を授けるよ、強力なアーティファクトさ!」


妖精は満面の笑みでユレンにそう告げた。


「それにはそれぞれどんな効果があるんだい?」


ユレンは当然の疑問を妖精に問う。


「まず、義手に関しては装着すると世界樹魔法が使えるよ! 世界樹魔法と言うのは樹を生成できる能力で、義手からユグドラシルの樹でできた剣、盾、槍など様々な武器を作ったり、地面に樹を生やして操作したりと、攻撃の幅が格段と広がる素敵な魔法さ!」


妖精はユレンの疑問に答える。


「それはすごい……じゃあ精霊王のローブは?」


ユレンは再び妖精に問う。


「精霊王のローブは魔法防御力と魔法の威力が格段に上がる、あと気温の変化に適応するんだ、そして即死攻撃を1度だけ無効化できる優れものさ!!」


妖精はこれでどうだと言わんばかりのドヤ顔でユレンに言う。


「本当にいいの? 貰っても?」


ユレンは破格の報酬に尻込む。


「君らはそれだけの事をしたんだ! だから貰ってくれなきゃ僕がユグドラシル様に怒られちゃうよ!笑」


妖精そう言って笑った。


「じゃあ授けるけどいい?」


ユレンは頷く。


「じゃあ授けるよ!」


ハヤトと同じ様に指先から光が放出されユレンの右肘に溶け込む。


右肘に入った種子はユレンの魔力を吸って成長する、樹の根がウネウネと絡み合い腕や手の形に変形しポッと光るとそこには失う前と大差ない腕ができていた。


ユレンは腕を動かしたり、手を握ったり開いたりする。

何も違和感が無かった。


「体の成長に合わせて義手も成長するから、大人になっても小さい手のままとかは無いから心配しないでね!」


妖精は補足をする。


「試しに剣を出してごらん! 欲しい武器を頭に浮かべると自動で右手から剣ができるよ!」


ユレンは剣を思い浮かべると、右手から樹が生え絡み合い樹製の剣が生まれた。


「切れ味は抜群だから試し切りと樹の生成も含めて後で外で試してみてね!」


「ありがとう」


ユレンはそう言って妖精にお辞儀をした。


「照れるなぁ笑 まだあと精霊王のローブがあるからね」


妖精は照れながらまた指先から光を出す。


光は膨らみ実体化する

そして一着のローブが顕現した。

それは綺麗な青いローブだった、背中には枝分かれした木の様な紋章が刺繍されていた。


「着てみてよ!」


妖精はユレンにローブを着るよう促す。


ユレンは着てみる

肌触りも良く、少し暑いかなと感じた部屋が快適な温度へと変わる、とても良い品だと一瞬でわかる。


「髪の毛の青色と相まってとても似合ってるね!」


妖精は似合ってよかったのかそう喜んだ。


「本当にありがとう、ユグドラシル様には直接は会えないのかい?」


ユレンは本人にも直接お礼を言いたくて妖精に聞く。


「ユグドラシル様は力を取り戻すにはまだまだ時間がかかり顕現できないんだ、ごめんね」


妖精は気を落としユレンに言う。


「いや、大丈夫だ、ユグドラシル様にお礼を伝えておいてくれ」


ユレンは微笑みながら妖精に告げた。


「わかった! じゃあ僕の役目は終えたからそろそろ帰るね!」


そう言って妖精は窓から外に出て消えて行ったのであった。


「ハヤト、ありがとうな一緒に来てくれて」


ふとユレンはジェネシスとの戦いでハヤトが共に戦ってくれたお礼を言ってなかった事を思い出しハヤトに言う。


「これからもずっと一緒さ!」


ハヤトはそう言ってユレンを見るのであった。












次回旅立ち

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