〜始まるvs闇魔人〜
朝になった。
とりあえず昨日の事をありのままに話そうとユレンは決める。
朝食を食べ支度をする、10時にセネクス、ロイツ、チェルシーが家にやって来る予定だ。
時間になり玄関の扉からノック音がする
扉を開けるとセネクスが言う。
「時間通りじゃな、体調は大丈夫かい?」
ユレンは答える。
「お騒がせしました、体調は大丈夫です、上がってください」
ユレンはそう言い居間に案内し話始めた。
「ワン!」
ハヤトは床で寝そべりながらいらっしゃいとでも言った様に吠えた。
本が発光し強制的に読まされて気絶した事、スキルを習得した事、夢の事を順に話した。
話を聞き3人とも呆気に取られた顔をする。
「すみません、突拍子で自分でもよくわからなくて……」
ユレンは申し訳なさそうに言った。
「いや、気にしなくていい」
ロイツが言う。
「そうよ!全部本当だってのは目を見ればわかるわ!」
チェルシーが続けて言った。
「ふむ、すまんが本の事と覚えたスキルについてはワシもわからないのぉ、じゃがユグドラシル様が夢で出てきたのは恐らく只事ではないはずじゃ」
セネクスが難しい顔で言う。
その時玄関のノックの音が響く、誰か来たようだ。
扉を開けるとそこには見張り塔にいる兵士だった、セネクスさんに用事があるみたいだ。
「実は西の里の者が急遽長老に会いたいらしくどうしたものかと長老に聞きに来ました」
兵士は困った顔で言う。
「わかった、話を聞くからここに連れてきておくれ」
セネクスはそう指示した後兵士は駆け足で門まで戻って行った。
しばらくすると兵士は西の里のエルフを連れ戻ってきた。
中に入って話を聞く、ユレン達も同席して大丈夫なようだ。
「実はオーガの大群に襲撃に遭いまして甚大な被害が出た為お力添えを貸してもらえないかとお伺いしました」
西の里のエルフはげっそりしていた
それを聞きその場にいる全員が驚く、どうやら他の里も襲撃に遭っていたみたいだ。
「これはこの森の緊急事態かもしれん……」
そうセネクスは呟く。
「ここ最近で何か変わったことはないですか? どんな些細な事でもいいです」
ロイツが言う。
「んー? 強いて言うなら山の土砂崩れが多くなったとかですかね?」
と西のエルフは言う。
「それってユレンが見た夢と関係あるんじゃない?」
それを聞いてチェルシーが言う
そこでセネクスは考える
「そもそも土砂崩れは地面に木が根を張ってれば防げるのじゃが、木を伐採しすぎたり木が育たないみたいな事があれば、土砂崩れになりやすいのぉ」
「そういえば何故か木が枯れていたのをちらほら見ました、その時は不思議に思ったくらいで良く考えてませんでした」
西のエルフはそう思い出して告げた。
「とりあえず西の里の支援で食料や生活用品を分ける、護衛で小隊を組む事にする、隊長にロイツを指名したいんじゃが負傷中じゃから誰を代役にするかのぉ」
セネクスは頭を悩ませる。
「私はその小隊について行くわ!」
チェルシーは意気揚々に言う。
「大丈夫なのか?」
ロイツが心配する。
「私だって日々訓練を受けて研鑽してるんだから護衛くらいできるわよ!」
チェルシーは声高らかに言った。
「あの、俺も同行します」
ユレンが続けて言う、昨日の夢に大地からユグドラシルの力をなんらかの形で吸収してると考え、確かめる為でもあった。
「それはありがたいのじゃ、では隊長はユレン君に任せようかのぉ、その実力と胆力があるんじゃ誰も文句は言うまい」
セネクスは満足そうに言った。
今日1日は準備と休息をして出発は明日の朝になった。
そして朝になり出発をする。
大きな荷車を押すエルフが3名
護衛にはユレン、ハヤト、チェルシー、ロイツが選んだ精鋭の兵士3名だ。
西の里のエルフも戦えるというので充分な戦力になり、道中モンスターと戦闘になっても何ら問題はないとセネクスは太鼓判を押した。
道中は度々モンスターと遭遇するが問題なく倒す。
注意深く木をみると確かに枯れている木がちらほらと見えた。
夕方になる頃に西のエルフの里に到着する。
夜はそこで過ごし、明日の朝帰る事になった。
そして朝になる。
「本当にありがとうございました」
西の里の代表が感謝の気持ちを告げる
「困ったときはお互い様よ!」
チェルシーは明るく言葉を返した。
里総出で見送られるユレン達、その時近くの山の麓から黒い柱の様な物が現れた。
「なんだあれは?」
近くで木を伐採しに来たとあるエルフが黒い柱に近づく
近づいたエルフは本人もいつ死んだのか気付かぬままミイラ化して死んだ。
「あれは何故かわからないけど、とても良くない物のような気がする……」
ユレンに謎の悪寒が身体中に走った。
「グルルルゥ」
ハヤトは黒い柱に何かを感じてるのか唸り続ける。
黒い柱に変化が起きた。
黒い柱から闇が吹き出し広徐々に広がっていく。
西の里のエルフ達は何が何だかわからず見ていることしかできない。
(あれを止めて!!)
ユレンの耳元で急に声が聞こえた。
ユレンは驚き辺を見回すが他の者達は聞こえてないみたいだった。
「あの柱まで行ってくるよ」
ユレンは言う。
「そんな……流石に危ないわよ!!」
チェルシーはその言葉を聞き心配する。
「あれは……たぶんこのまま放置しておくと大変な事になると思うんだ」
あの闇をユレンは知っていた、夢の中で見た闇そのものだった。
ユレンは闇に向かって駆け出す。
ハヤトもユレンについて行く。
どうしようもできないチェルシーはただ黙って見送るしかできなかった。
闇に近づくユレンとハヤト
そこに2つの闇がユレンとハヤトの前に顕現した。
それは人と獣の形になり実体化する。
「なるほど、面白い奴がいるとは思ったが天の因子をもつ者か……」
それは白髪の初老の男だった、フード付きの真っ黒いローブを着て瞳は赤い。
「グルルゥ」
次に現れたのは2つの首を持つ黒狼だった
ユレンを追いつめハヤトの母を殺した狼だった。
ユレンは目を見開き驚く。
「グルルゥ……ワン!!」
ハヤトは憎い相手の前に唸り吠える。
「おまえは何者だッ!」
冷や汗が止まらないユレンは男に問う。
第6感があるとするなら、それはすぐさま逃げろと警告し続けてるとユレンは思った。
「これは失礼……我が名はジェネシス、隣の黒狼はヴァイアスだ」
ジェネシスは笑みを浮かべて言う、ユレンはその笑みが逆に何故か不気味に思えた。
「俺の聞く答えになっていない!!」
名前だけ聞かされて肝心な事は分かっていないユレンは声を荒げる。
「まぁ闇に仕える者とでも言っておこう、あと残念だが君はここで消えてもらうよ天の因子をもつ者よ」
ジェネシスは笑みを浮かべた顔から真顔になる。
「なッ!! フレイムラッ@a#jg/@あ」
ユレンはジェネシスの言葉を聞き反射で魔法を発動しようとしたが、ジェネシスが一瞬にして懐に入り掌底をユレンの腹に当てユレンが吹き飛ぶ。
「ヴァイアスはその銀狼の相手をしてあげなさい」
そう言ってジェネシスは吹き飛ばされたユレンの後をゆっくり歩いて追うのであった。
「がっアハぁッ……」
ユレンはうまく呼吸ができずに悶えるがそんな事は言ってられない、すぐまたジェネシスが来ると思って立ち上がった。
「本気で攻撃したのだが立ち上がるか」
ジェネシスはユレンを見て少し驚く。
「ハァハァ……甘く見るな……」
ユレンは短剣を持ちいつでも魔法詠唱できるよう構える。
「甘く見てるのはどっちかな? 近接攻撃をしたが私は魔法の方が得意でね」
「闇の波動」
ジェネシスは闇魔法を発動する
重力が倍になったような衝撃が頭上からユレンを襲う。
ユレンは紙一重でそれを避ける。
「火炎放射」
すかさずユレンは魔法を返す。
「闇の守護盾」
闇でできた盾がジェネシスを火炎から守る。
「なかなかできるではないか」
ジェネシスは玩具を見つけた子供のような笑みでユレンを褒めた。
ハヤトとヴァイアスは互いに攻撃をするが2匹とも決定打に欠けた攻撃を繰り返していた。
こうしてユレンとハヤトの戦いは幕を開いた。
次回 ハヤトvsヴァイアス




