プロローグ 〜終わる日常〜
初めまして暁と申します。
初投稿になります、読んで頂けたら幸いです。
至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
ファブリシア王国、そこは多くの冒険者、商人、傭兵が成り上がりの一攫千金を夢見て訪れる豊かな国である。
そんな国のスラム街に、何の力もない生涯搾取される側の人生で終わるだろうユレンという少年がいた。
両親は冒険者でとある依頼に行ってから死んだのかわからないが帰ってこない、そこから最悪の日々が始まった。
安い賃金で日雇いの労働をし、労働が終われば、悪質な黒パンを買い食べて、路地裏の隅で寝る生活、ユレンは12歳という若さで人生を諦めていた。
同じ様な日々が今日も始まると思った朝、仕事を探そうとスラムを歩いていたら3歳上のスラムの孤児のまとめ役であるローグに声をかけられる。
「おはようユレン!今日なんか仕事見つけたか?」
ユレンは
「見つけてない」
と首を振る、ローグは続けて言う。
「実は冒険者から依頼の付き添いで荷物持ちを探していて適当な人物を探してるから誰かいないか聞かれたんだけど、俺今日はもう仕事あって体力に問題なさそうな奴に声をかけてんだけど、ユレンやってみない?荷物の運搬と後は火を焚いたりとか飯の片付けとか雑用を任せるみたい、それなりに儲けてる冒険者だったから賃金は多めに出すみたいだぞ!」
ユレンはローグの好意と賃金は多めに出ると聞いて首を縦に振る。
「わかった、今日はまだ見つけてないからやるよ」
ローグは満面の笑みで
「冒険者に伝えてくるからスラムの入り口で待ってて!」
と言うと駆け出していった。
ユレンは特に準備もないので、スラムの入り口に向かい待つ事にした。
少し経って4人組の冒険者がやってきた
片手剣と盾をもった戦士の背の高い男
弓を持ち矢の入った矢筒を腰にさげてる狩人の細身の男
ナイフを持ち小柄なシーフの男
黒いローブを着た魔法使いの痩せた糸目の男達だった。
片手剣を持った戦士がユレンに声をかける。
「俺がこのパーティのリーダーである、バグログという者だよろしく頼む、弓を持ったのがクレイ、ナイフを持ったのがブロウ、ローブを着た奴がガイだ、ここから1日かけて森を抜けた先にある山へ行き、そこにある山の洞窟にある鉱石を取って持ち帰る依頼だ、行きと帰り込で多めにみて3日はかかるだろう、賃金は大銅貨4枚だ」
ユレンはわかったと頷く。
何でも借りていた馬が怪我をして治療中らしく仕方なく人を探してたらしい、そこに安価で頼めるであろう孤児のまとめ役であるローグを尋ね、ユレンに話が来た形だ。
では行こうとバグログが2枚の空の麻袋と食料が入った袋をユレンに渡し歩き出す、それに続いてパーティのメンバーが続き、その後ろにユレンがついて行く。
しばらく歩いて森に着く、森に入ると野生の猪やゴブリン中型犬サイズのワールウルフ等の雑魚モンスターが現れるが冒険者は慣れた手付きで倒していく
夕暮れが差し掛かった頃バグログが告げる
「そろそろ野営の準備をしよう、ユレン荷物を置いて適当に薪になりそうな木を集めてくれ、ガイが火をつけるから火の管理も頼む」
ユレンは薪を集め、ついでに食べられる木のみも見つけたので詰んでバグログの元に持っていく、ガイが火をつけた後消えない様に追加で薪をくべる、ブロウが簡単なスープを作り、クレイが周りを警戒し、バグログとガイが簡素な寝床を用意する、夕食になりバグログから黒パンと干し肉、簡単なスープを渡され食べ終えたら、見張りの当番を決める話し合いが行われる、そこにユレンも加わり最後の順番で見張りを任された。
特に異常もなく朝を迎え鉱山に向かう、どうやら昼前には着くみたいだ。
山に着きブロウが洞窟の中に入りモンスターが住み着いてないかの確認をして鉱石集めを始める、バグログ達4人が鉱石を集めユレンが袋に詰めていく役割分担だった。
鉱石を採取している最中ブロウが洞窟の壁から謎の光が出てるのを見つけバグログに報告する、それを見に行くとバグログが言うと残りのメンバーも後に続き、それにユレンも後ろについて行く事にした。
確かに壁は光っていた、ユレンは不思議だなと思いつつ見ていると壁の光が球体に集まりものすごいスピードでユレンの胸部に飛んで来て体の中に入った。
ユレンは驚き、胸部を触るが穴が空いて血が出たり、体調が悪くなったりと異変は感じられない。
「何だってんだこりゃ」
バグログが言う、壁は消えそこに道が続いていた、未発見のダンジョンかもしれないとバグログが言うとバグログの指示でブロウが先行しそれにつられて残りのメンバーも道の奥に進んでく、15分くらい歩くと広い空間に出た。
そこには濃い青でキラキラした水が溜まっている湖の様な場所がありその奥には祭壇の様な物があった、ブロウが水に触れようとするとガイが慌てて止めて言う。
「これただの水ではなく高濃度な魔水ですよ」
魔水とは錬金に用いられる魔力を帯びた水であり、濃度が高いほどいろいろな用途に使える水だ、色が濃いほど魔力が強いとされている。
ただ濃度が濃いほど直接触ったりすると皮膚が爛れたり高い魔力が体に入り体調が悪くなったり最悪には高魔力が体に入ったショックで心臓発作になる事例があるという。
錬金に詳しい知り合いが教えてくれたとガイは言った。
ブロウが冷や汗をかいているとクレイが異変気づく
「来た道から何かヤバいのが来る!」
狩人で耳がいいクレイは何か高速で向かってくる足音に気づき叫ぶ、戻る道は一本しかないのでここで迎え打つしかない、パーティメンバー達はほぼ同時に武器を構えた。
ユレンはパニックになって迷惑にならない様不安な気持ちを抑えつつ湖の側まで下がるしかなかった。
「グオォォォォォォ!!!!」
耳を押さえたくなる様な大きな咆哮が響きそれは現た、鋭利な牙と4メートルはあるだろう大きな体2つの首を持つ黒い狼だった。
バグログの顔が引き攣る
「こんなの見たことねぇぞどっから来やがった……勝てなくてもいい逃げきれんのか俺達は……」
だが道は一本しかなく黒い狼が塞いでいるため、戦ってる最中に隙を見つけ全力で逃げるしかない。
バグログが盾と剣を構え狼を惹きつけ、クレイが弓を放ち、ガイが魔法の詠唱、ブロウは素早い動きでナイフで斬りつけたり、秘蔵の炸裂弾を惜しみなく投げつける。
ガイが炎の槍を狼に当たるが物理攻撃も魔法もどれも効いてる様には見えない、単純にどれも火力不足だったのだ。
「くそッ!! 隙も作れねぇのかよッ!!!」
額に脂汗を流したバグログが言う、4人の顔が徐々に絶望に変わっていく、狼はスピードも早く傷を負わせないで逃げてもすぐに噛みつかれ命は儚く散るだろうと全員が悟っていた。
ユレンはその光景を見ていて嫌でも感じた、自分はここで終わりだと、だが両親はいなく才能もないこの先搾取される側の人生だと思っていてすでに諦めていたからこそ、不思議と覚悟はすぐにできた。
最初にクレイが爪に裂かれ死んだ
ブロウはパニックになり道の方に逃げると狼の口から火を吹かれ焼死した
ガイはもう一つの顔に噛まれ咀嚼され死んだ
そしてバグログは膝をついた、無常にも黒狼は前足を掲げ爪がバグログの首へと迫って行く、首を飛ばされバグログも後を追った。
狼はユレンに向かっていく、そしてユレンの前に立ち嘲笑うかの様に弄ぶかの様に犬歯を剥き出す。
ユレンは目を瞑る、来世があるなら幸せになりたいと思って。
狼が飛びかかろうとした瞬間胸部が光出す、暖かい光が全身を包み込み、体が宙に浮き湖の方にゆっくりと動き出す、狼は警戒して一歩後ろにさがった。
そしてユレンは意識を失い魔水の湖に落ちたのであった。