番外編.アドラー視点 ライラとの関係(2)
ど、どどどどうしましょう、3話に分けられません……!4話になってしまいます……!4話……番外編で、4話……仕方ない。
新入生代表の挨拶が終わった。
ライラはしっかり聞いてくれていたのだろうか。
「ライラ、ちゃんと聞いていたか?」
「えっ、も、もちろんですわ!聞いていないわけないじゃないですか、おほほ……」
なんか怪しい。
「本当か?……どこが、良かったのだ?」
わからない。そう言われたら俺は立ち直れないと思う。
「その、『僕たちはこの学園でたくさんのことを学び、これからの人生に活かしていきたいと思います』というところです!アドラー様の誠実さがよく分かりました!」
ライラにそう言われて、素直に嬉しかった。他の人に言われても、曲がった解釈をしていたのに。
それはライラに裏表がないからだ、と結論付けて、俺は頭に浮かぶ考えを振り払う。
「そうか……。ちゃんと聞いていたのだな?」
疑うようなことを言っても、ライラは怒りもせずに無邪気に笑っている。この笑顔が、この絶妙な距離感が、俺の記憶と重なる。それが、何故かとても嬉しかった。
「は、はい……。それが、どうかしたのですか?」
「ん?……いや、なんでもない、ただ、ライラがいずれ俺の婚約者になるなら、その器があるかどうか……あ、すまない。偉そうなことを……」
「さすがアドラー様ですね!」
『さすが』
『素晴らしい』
『お美しい』
『次期皇帝に』
そんな言葉を聞くたびに、俺はうんざりしていた。
『さすが』、それは、自分の見る目があった、期待していた、なんて意味の言葉。
『素晴らしい』、それは、俺の外の面しか見ていない奴が発する言葉。
『お美しい』、それは、俺の顔にしか、家族とよく似たこの顔にしか、褒めようと思う点がない、なんて意味の言葉。
『次期皇帝に』、それは、優秀な第一王子である兄上がいるのに俺に媚びを売る、状況の見えてない奴が発する言葉。
ずっとそんな風に思っていたのに……。
ライラからその言葉を言われると、今までの努力が認められたような、たまらなく嬉しい気持ちになる。
「そ、そうか……?」
「そうですよ。……あ、もうすぐクラス発表の時間ですね。一緒のクラスになれたらいいですね」
こんな俺でも、ライラは同じクラスになれたらいいと思ってくれているのか。5年前から、ライラに冷たく接している俺に。
「あ、私もアドラー様もAクラスですね!知り合いがいて良かったです!」
知り合いと思われていたことには軽くショックを受けたが、仕方なかった。むしろ、彼女の知り合いという立場であれることがまだマシなのかもしれない。
こんなに俺が人の言動で一喜一憂することはなかったのに、ライラは俺の心の中に赤子の手をひねるように簡単に入ってくる。
さっきから心臓がどきどきと高鳴っているという事実を認めたくなくて、俺は慌てて話題を変えた。
「し、知り合い……。あぁ、そうだな。……ところで、マリー・スコットとは誰だ?聞いたことがな
い家名だな」
「そ、そうですね……。会えば、分かるでしょう。同じクラスなのですし……」
話題を逸らすことは成功したようだ。
それより、マリー・スコットという生徒の名前を聞いた瞬間、わずかにライラの顔が曇ったような気がして、過去に嫌なことでもされたのだろうかと思ってしまった。
まあ、それは結局のところ、俺の勘違いだったわけなのだが。
「それもそうだな」
俺とライラはこうして、講堂を後にした。
お読みいただきありがとうございます。
先日、友人になろうにて小説を投稿していると言ったところ、それ以外何も言ってないのに「あの、『評価していただけると……』みたいなやつあとがきに書いたら?」と言われました。よし、一応書いとくか。そんなに効果があるとは思えないんだけどな……?
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