番外編.アドラー視点 ライラとの関係(1)
アドラー視点ですね……
俺、帝国の第三王子アドラー・ライルは昔……確か、俺が6歳の時に、この国で1、2を争う歴史と財力を持つ公爵家の娘、ライラ・メルヴィルとの婚約が決まった。
ライラの第一印象は引っ込み思案な令嬢、だった。最初は物凄く人見知りで、全然しゃべらなかった。けれど、時が経つにつれ、心を開いてくれるようになって、仲良くなった。その、たまに見せてくれる笑顔を見るだけで、何故かとても安心した。
そうして、週に1回は会っていたライラと俺だったが、年齢を重ねるごとに会う機会が2週間に1回、1か月に1回と段々減っていった。忙しくなったからだった。
今思えば、その時くらいから、ライラの俺に対する態度がまた硬くなっていたのだ。
何故か?表舞台に立って初めて、皆が俺に優しくする理由を知って、ちょっとした人間不信になっていたからだった。それで、俺のライラへの態度が冷たくなってしまったから。
皆が俺に優しくするのは、俺の権力や金が欲しいから……?
幼いながらその事実に気づいてしまった俺は、ひどく動揺した。
じゃあ、今まで俺がライラの警戒心をといてきたのって……無意味なこと、だったのか?彼女も皆と同じ。俺の権力や金にしか興味がない。幼かった俺は、そんなことを考えてしまって。
そう思った瞬間、俺は全てが崩れ去ったような音を確かに聞いた。他の人と同じ様に冷たく接した時のライラの顔を、俺は忘れることが出来ない。
だから、父上からライラが俺と一緒に入学式に行きたいと言っていると聞いた時、俺は久しぶりに動揺した。
ライラと会うのは、なんだかんだで1年半ぶりだった。
「久しぶりだな、ライラ」
なれなれしかっただろうか。
あんなに冷たく接していたのになんで急に、なんて思われていないだろうか。
「お久しぶりですね、アドラー様。入学式、緊張します。……アドラー様は、新入生代表が誰なのかご存知なのでしょうか?」
疎遠になっていた彼女があまりにも自然に笑うから、まるで今までのことを忘れたように話すから、ついこちらも彼女に笑いかけたくなる。
そして、ライラが新入生代表が誰なのか知らない事実に、正直とても驚いた。疎遠になっていたことがここまで影響しているとは思わなかった。
「……ん?あぁ、知っているが……ライラは知らなかったのか?」
「はい……。無知で恥ずかしいです。どなたがなさるのでしょうか?」
「俺だ」
「ふぇ?」
「俺がする」
「え、えっと……。……ごめんなさい!仮にも婚約者なのに、知らなくて……!」
間抜けな返事をして必死に謝るライラが可愛くて、俺は久しぶりに声を出して笑っていた。
「ふっ……。あははっ!あはははっ!…………こんなに笑ったのは、久しぶりだな。最高だなお前」
あっ。変なことを言ってしまった。引かれていないだろうか。
ライラの方を見ると、ふら……と倒れていた。どういうことだ!?
「おい!?ライラ!?」
ライラは学園に着く1分くらい前にメイドに起こされていた。そのメイドを見るライラの瞳が信頼で溢れていて、とても羨ましいと、そう俺は思ってしまった。
お読みいただきありがとうございます。
ライラから引かれていないかと心配で仕方がない俺様王子(笑)でした。あと2話分もあります、どうしましょう。明日にしよかな。
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