後日談 フィリップ・ライル
フィリップも結婚に悩んでますね……。
というか、なんか後日談の順番を間違った気がします。ヤンデレ化してるのは気のせい?キャラぶれてる……。
これにて後日談も完結です。
「陛下、そろそろお妃様をお迎えした方がよろしいかと」
第三王子だった、今は補佐をしてくれている頼りになる弟、アドラーの声が聞こえる。それはここ数年もう何千回と聞いた、アドラーの助言だった。
その隣にいるアドラーの愛する妻、ライラがこちらをちらりと見る。その紅い瞳には、確かな不安が浮かんでいた。
学園時代、興味を持ち、それから気付かぬ間に執着し……もう何年も想い続けてきたけれど、彼女はアドラーと愛し合っていて俺の入る隙はない。子供も産まれていて、本当に幸せそうだ。……けれど諦めきれないから、俺は曲がった気持ちを彼女に持ってしまう。
ライラの頭の中を、たとえ一瞬でも俺が占めていたということに昏い喜びを感じながら、俺はいつものように返事をした。
「そんなに焦ることもないだろう?アドラー、ライラ」
確かに俺ももう27歳。過去にここまで未婚だった王も王族もいたことがない。だいたいは学園卒業後、準備が出来次第結婚式を挙げるのだ。
といっても、婚約者はいるのだ。ただ迎えていないだけで。
けれど、その婚約者が最近、俺の勤務が忙しいからといって他の男性と密会しているとかなんとか。別に悲しくもなんともないし、興味もないのだが、そんなやつを王妃にするわけにはいかないということでまた選び直しになった。
手間を取らせるなよと思いつつ、俺は手元にあった資料を適当に手に取り、目を通す。
それは、婚約者候補の情報だった。考え会話にしていた内容だけに、思わず故意的かとアドラーに疑いの目を向けてしまった。必要な情報なのでとりあえずざっと目を通していった。
第1候補。リナ・キニア。キニア大国の第二王女。カリスマ性がある。妖精のようと噂。大国と縁を結べるため、政略結婚ではこの上ない良縁だと思われる。現在25歳。
25。女性にしては結構な行き遅れだ。カリスマ性があるということは、政治方面で役に立ってもらえるかもしれない。
第2候補。侯爵家の長女であり、少々傲慢な性格。なんでもまんべんなくこなす。……
……
第8候補。エイプリル・メルヴィル。アドラーとライラの子供。成績は優秀であり――
「……ってはぁぁ!?ちょ、アドラー、何でエイプリルが入っているんだよ!?」
「それは、年の差はありますがエイプリルは優秀で、カリスマ性もあり、美人で器量もよく――」
説明が娘自慢になりそうだったので、俺は手で止める。そうするとアドラーはすぐ止まった。
「これはなしだ。年の差の問題もあるし、本人の意思もある」
「かしこまりました、陛下。………では、第1候補のリナ王女がよろしそうですね。手配をしておきます」
アドラーと見つめ合いにっこりと笑って、アドラーの代わりにそう告げる想い人に、俺は珍しく素直に、胸の中の気持ちを再確認しながら、叶わぬ想いに少しその胸を痛めていた。
◇◇◇◇◇
俺は執務を終えると、明かりも付けずに私室に入り、四角い窓からもうすっかり暗くなった空を眺めた。
「君のことが好きなのにな」
柄にもなくという自覚のもと呟いた言葉は、誰もいない私室で、漆黒の闇に溶けていった。
お読みいただきありがとうございます。
なんだこの最後。ちょっと暗い。絶対順番間違いですね。
とにもかくにも、これでこの作品は完結です!新連載は今準備中です。
ここまで走りきれたのも、読んでくださった皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました。
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