後日談 シャーロット・ニコラス(シャーロット・ダーヴィン)
小説を書いていて一番作者のメンタルがいろいろ削られた回でした(笑)
途中でシャーロットが語るときは「です・ます」だったなぁと思い出し、慌てて修正いたしました。
「王妃様、陛下がお呼びです」
「そう」
私――シャーロット・ダーヴィン――結婚後はシャーロット・ニコラスは、隣国――今は自国ですが――での信用の置ける侍女、アーシャの言葉に頷き返します。
隣国に来てから私は、家族とは離れましたが、それでも自分で満足と言える、充実した生活を送っていました。
「何でも、帝国の第三王子だったアドラー様と、メルヴィル公爵令嬢のお子様が産まれたらしいですね」
ロイの部屋へ向かう途中に、アーシャがそう話しかけてきました。
帝国の第三王子だったアドラー様とメルヴィル公爵令嬢といえば、学生時代に仲良くさせてもらっていた友人の2人です。まだ卒業してからたった1年ほどしか経っていないのに、こうも懐かしく感じるのはなぜなのでしょうか。
2人のお子様、ですか。王侯貴族とはいえ隣国であるこちらにも情報が伝わってくるということは、出産されてからそれなりに時間が経っているということでしょう。
第三王子であったアドラー様は、他人からも見てもわかりやすいほどに婚約者であるライラ様に懸想していました。
一方でライラ様は、そんなアドラー様の気持ちに全く気付かずに、ただその魅力で人を虜にしていき、アドラー様は少なからず慌てていました。
その様子は、見ていて微笑ましいものがありました。私は昼食でご一緒にさせてもらうだけでしたが、それだけでも楽しかったのを覚えています。その2人のお子様ということを考えると、なんだか感慨深いです。しみじみとした気持ちが胸に染みていきます。
私は学園卒業と同時に、当時のライル帝国の隣国――ニコラスの王太子であったロイの自国に来ました。そして5か月後に王妃教育終了と同時に急ぎで結婚式を挙げ、王妃として、国母としてロイを支えていくことを、王妃になることを決心したのです。
他にもアーシャと色々な話をしているうちに、ロイの部屋の前に着きました。
アーシャがコンコンとノックをして、中のロイの「入れ」という返事を聞き扉を開きます。
「陛下、どのようなご用件でしょうか」
玉座に座っているロイにそう問いかけると、ロイは手で人払いをしました。
侍女や執事が出ていきます。いつものことなので、特に訝しむこともなく退出していきます。
私と2人きりになると、ロイは今までの態度を崩して私に黒い瞳を向けます。
「シャーロット、いつもの」
そう言ってロイは私に長い腕を伸ばします。一国の王ということも事実ですが、それと同時に私より1つ下の少年であるということも事実なのです。甘えるような目に、私は優しい抱擁で応えます。
最近は毎日やっている、仕事で疲れたロイに要求されたハグです。
しばらく経って、ロイは顔を上げました。真っ直ぐに美しい顔で見つめられて、私は少しドギマギしてしまいます。
「ロイ」
「シャーロット、好きだ」
珍しくロイが甘えてきます。仕事で辛いことでもあったのでしょうか。少し強く抱きしめると、ロイは満足したようにふっと力を抜きました。
「ん、もう大丈夫だ」
どうやらもう復活したようです。少しだけ残念に思いながらも、私は手を離して先ほど考えていたことをロイに話します。
「今度、ライル帝国に行きたいのだけれど」
私は楽しみな気持ちを声に出して、ロイにそう言いました。
お読みいただきありがとうございます。無理きつい。甘い。次回で後日談も終わりです。
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