後日談 ミサ・ベアード(ミサ・ジャーディン)
ルイス様は意外に恋愛では押します♪
祝・七万字!
「ルイス様ルイス様!今日も美しい……そんな少し憂うような顔も好きです!」
ルイス様が好きで、好きでたまらなくて、私は毎日のようにルイス様に話しかけ、アタックしていた。
彼はそんな私に対して、少し困ったような笑みを浮かべるか、黙って美しく微笑むかだ。
ルイス様――ルイス・ベアード伯爵令息。黒い髪に碧い瞳の、それはそれは美しい少年だ。
何を隠そう、前世の乙女ゲームの中の私の推し様で、いつも最初に攻略していた。台詞は全ルート完璧に覚えていて言えるし、声優さんも背の高さも誕生日も全て覚えている。ルイス様は、お母様の犯罪によって悩むことになるのだ。
ある日、美しいルイス様の顔は、いつにもまして憂いに満ちていた。
何があったのだろうと思い、とりあえずいつものようにアタックする。
「こんにちはルイス様。今日も今すぐ結婚したいぐらい美しいですね」
「そうですね」
「……え?」
「結婚しましょうか、僕たち」
「……はい?」
ちょっと待って意味が分からない。なぜそうなったのだろう。もしかして、お母様の犯罪に関わっているのだろうか。それにしてもなぜに私よ?頭が混乱する。
「それは本当に心惹かれる提案ですし、すぐにでも結婚式を挙げたいところなのですが、生憎そういうわけにもいかなくて……そもそもなぜわたくしなのです?」
混乱して、いろいろ心の声を漏らしてしまったが大事なことは言うことができた。
「それは、僕のことを好きだとはいっても実際には無理だということですか?」
ずるいルイス様は私の質問をほぼ無視して、こちらに質問を投げかけてくる。ルイス様の碧い瞳が、さらに悲し気な雰囲気を醸し出す。まさにワンコ系美少年といったウルウルした目に、好きな人の悲しい顔に耐えきれなくなって、慌てて私は弁明する。
「違います違いますそんなことあるわけないじゃないですか何を言ってるんです?……ただ、わたくしはルイス様に相応しくないなって」
私がそう言うと彼は、なぜか更に寂しそうな顔をして、こう言い私に――私の額にキスをする。
「自分を卑下しないでください。僕は……俺は、世界で一番貴女のことが好きですよ」
ルイス様の声が上から降ってくる。その、さっきまでとは違い満足そうな顔とは対照的に、私の心の中では疑問符が飛び交っていた。
意味が分からないという疑問と同時に、もし本当ならどれだけ幸せだろうという思いが私を支配する。
しばし黙考していると、また上からルイス様の声が降ってきた。
「俺のことが好きなら、何も考えなくてもいいんですよ」
学園卒業時に、ルイス様と結婚することになった。ライラ様とアドラー様より少し先に、ルイス様と結婚式を挙げるのだ。
未だに疑問符は消えない。けれど、幸せならもう、不可解なことがあっても放置しておけばいいのではないかという結論が出た。それが、人とは違う私の、私なりの解決方法だった。
結婚式は盛大に……は行われなかったし、子爵令嬢である私に不満が上がることもあったけれど、私が前を向いてルイス様の傍に胸を張って立って、ルイス様が私に、自分が決めたことであること、ルイス様のお母様が捕まったことで経済的な不安もあること、そして自分が世界で一番愛している人であることを伝えることで、その不満も少しずつ消えていった。
「ルイス様、今も思うけれど、結婚式であんなふうに言う必要はなかったんじゃないですか?」
結婚から半年後、私は自宅でルイス様にそう聞く。
「じゃあ、ミサは嬉しくなかったの?」
結婚してから、ルイス様は私に砕けた口調で話すようになっていた。
「い、いえ本当に、心の底から嬉しかったですよ?」
「じゃあいいの。……ついでに言っておくと、あの日悲しそうな顔をしたのは、どうやったら君が俺にプロポーズしてくれるか考えて、自然な流れで君と婚約するためだったんだけど」
「……え、はい?」
「ずっと前から好きだったんだ、ミサ。君以外となんて考えられない」
そう言ってルイス様は私の首にキスをした。最近キスマーク的なものが付けられている気がするのは、たぶん気のせいではない。
私は混乱しながらも、推し様――今は旦那様とのふれあいの時間を心行くまで堪能していた。
あの時ありのままの気持ちを口にしていて、本当によかったなぁと思う。
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