後日談 マリー・スコット
それぞれのキャラの後日談です。というわけでトップバッターはマリーちゃん。次はお兄様でございます。
「ライラ様、誠に残ね――コホン、旦那様がお帰りです」
わたしは、自身が仕える、学園時代からの付き合いである尊い主――ライラ様のそばで、大変憎たらしいことだが、彼女が愛する人――彼女と同じく学園時代からの付き合いであるアドラー様の帰宅報告をしていた。
「まぁマリー。いつもありがとうね」
「身に余る光栄に存じます」
ライラ様に褒められて、わたしの気分は最高潮に達する。さっきまでアドラー様にイラついていたのにすぐ気分が浮上するなんて、我ながらわかりやすいと思う。
わたし――マリー・スコットは、卒業式でアドラー様がライラ様に「結婚しよう」と言った日に、それならわたしも、と思いライラ様の侍女として働くことを決意した。
勢いに任せた決意ではあったけれど、あの時に選択をわたしは今悔いていない。
アドラー様とのいちゃつきや、これ見よがしなアドラーの得意げな顔にはイラつきしかないが、それでも敬愛する人に仕えられる仕事なんて、少しでも役に立つことができる仕事なんてこれ以外ない。
両親には、精一杯自分のベストを尽くしてきなさいと言われた。義弟が継ぐことになった実家は、普通に安定して保たれている。愛する奥様も見つけて幸せなようだ。
一方わたしの恋愛事情は、結論から言うと全く進展とか恋とかない。わたしももう25歳、行き遅れと後ろ指をさされるような年齢だ。
昔、学園に入学する前は、白馬の王子様とかに憧れてて――それこそ、初めてアドラー様と話した時、少しばかりときめいていたが、今はそんなことも全くなく。仕事を達成することに喜びを感じることはあっても、イケメンを見てドキドキすることはない。
「お母様、お父様が帰ってましたよ」
6歳の2人のお子様、エイプリル様がそう言ってライラ様に抱きついた。アドラー様がすると殺気の対象にしかならない動作も、子供がすると可愛らしいもので、見ているとこちらも和む。
……さすがライラ様のお子様。可愛らしくて、ライラ様の次に美しい。
「マリー、もうそろそろ結婚を考えたらどう?」
エイプリル様に構いながら、苦笑を見せてライラ様はわたしに問う。それはずいぶんと前から聞かれていて、ずっと先延ばしにしてきたことだ。
正直今の生活でいいと思っているし、恋愛なんてする気分ではない。
「そうですね。わたしは今の生活で満足していますが、さすがに結婚しないとライラ様や旦那様の評判にも関わりますし……」
「マリーの結婚についてか。いいと思うぞ」
「マリーは魅力あふれる女性だから、きっといい縁談が見つかると思うよ!」
そこに帰ってきたアドラー様が参戦し、年齢よりもだいぶませているエイプリル様がそう言う。
「そうね。マリーは本当に素晴らしい女性だもの、きっとすぐに見つかるわ」
ライラ様の最上級の褒め言葉に、わたしはそんな機会を作ってくれたエイプリル様に感謝した。
結婚とか正直先送りにしたいけれども、このことでわたしは、だいぶ恋愛に対して前向きになった。我ながら現金である。
「ありがとうございます。……わたしの一番はライラ様ですので、他に敵う人はいませんよ」
「まぁ」
ありのままの気持ちを伝えると、主は嬉しそうに頬を染めた。
尊敬する主とその幸せな暮らしを支えることができて、わたしは今、充実した生活というものを実感していた。
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