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33話.卒業式と断罪イベント

実質これで完結なんですが、あと1話、二人の後日談がありまして……それで、本編終了となります。

最終話でも相変わらずの文字の少なさ、これが福山でございます(←おい)

長くしたら三分の一くらいの話数になります。(三話分が一話……)




「……。僕達は、この学園で、様々なことを学びました。そして――」




 今は卒業式の、卒業生代表による答辞の時間だ。入学式と同じように、代表はアドラーである。



 私、ライラ・メルヴィルは、Sクラスの最前列(卒業式の並びは身分順である)に佇んで、婚約者の答辞に耳を傾けていた――ように周りは見えるだろう。




 ……え?ちょっと待って、断罪イベントはこの答辞の後、舞台に立っているアドラーにライラが呼び出されるところから始まるのよ。もうすぐ。この答辞が終わった後、マリーちゃんも呼び出して、お兄様が私を捕らえて、断罪よ!ああああぁぁぁぁ!近い。もうすぐだよ!いやマジで3年間無駄になるかもとか無理怖い!誰か背中守って!意味わからんけど!




 実際は、入学式と同じように、全く聞かずに、断罪イベントのことを思い出し、心の中で絶叫したり青くなったり、迫りくる恐怖に発狂したりいたりしていた。



 そして、長い答辞は進み――



 終わりかけた頃、アドラーがこっちを向いた。




 ……え?お前断罪してやるからなってこと?こわ。イケメンの鋭い視線(被害妄想)、こわっ!




 そして何の問題もなく終わった。




 ……ん?いきなり雷落ちて卒業式中止か、感染症流行って卒業式なしにならない?無理だよね無理。わかってるけどさぁ。




「ライラ・メルヴィル公爵令嬢!少しこちらに来てくれないか?」




 来た。



 婚約破棄の台詞とはほんの少し違うけれども、場面は同じだ。



 顔が赤いのは、感情の浮上からか、それとも最近上がってきた気温に、生徒が密集していることで、物理的に体温が上がったからなのか。



 ドキンドキンと鳴る自分の胸の音が聞こえて、私は心を落ち着ける。




すぅぅぅぅ…………




 周りに聞こえないように、小さく深呼吸して、私は舞台上へと向かった。



 普段の卒業式ではこんなことないので(ないよね?)、みんな、顔には出さないが、何が起こるんだろうという好奇心が雰囲気から滲み出ている。




「なんでしょうか?」




 全てを覚悟の上で、私はあえて静かに、動揺など伝えないように、そう聞く。




「…………………………結婚しよう」




「…………………………………………………………………………は?」




 思わずそう言ってしまった私は悪くなかったはずだ(悪い)。




 ……んちょっと待って意味わからないんだけどマジでなんなのいや嬉しいけどさここまで来て何でそうなるのというか婚約破棄されなかったら当たり前じゃないの?え?




「「「「「きゃあぁぁぁぁ―――――――――――――――――――っ!!」」」」」




 さっきまで大人しかった女性陣が湧いた。急展開についていけない。




「ライラ……俺のこと、やっぱり嫌いだったのか?」




 悲しそうな顔で、アドラーが小声で聞いてくる。たぶん、さっきの私の反応からだろう。




「ち、違います、嫌いというわけじゃなくて……」




 そう答えるも、アドラーはさらに悲しそうな顔で疑いの目を向けてくる。




「本当か?……じゃあ、す、好きと声に出して言ってくれ」




 自分で言ったにもかかわらず、これ以上ないくらいに顔を真っ赤にして、アドラーがそんな、私にとったら羞恥地獄(何それ?)に陥ること間違いなしなことを言った。




 ……何その公開処刑スタイル。いやみんなには聞こえてないと思うけどさ。思うけどね?恥ず。めっちゃ恥ずい。




 それでも疑われないために、最後の勇気をふり絞って、私はアドラーを見上げる。




「わ、私は、アドラー様のことが、その、大好き、ですよ?」




 そう言うと、アドラーはもっと顔を真っ赤にして、それから極上の、喜びの笑みを私に向けた。









 ……結局、婚約破棄はされなかったなぁ。マリーちゃんは、私達にすっごい怖い目を向けてたけど。




 転生して、「詰んだ!」ってなって、次々ヒロイン達やヒロイン達の恋愛対象に会って、破滅フラグのこと考えて、慌てて、毎日楽しく過ごして、アドラー様に恋して、ちょっとシリアスになって……。



 

 結局はいらぬ心配だったけど、それでも、ついさっきは本気で心配だったのだ。


 そんな時間も楽しかったなぁ、と心の底からそう思う。みんなと過ごす毎日が、私は一番楽しかったのだ。



 雰囲気に流された感も拭えないかもしれないけれど、それでも私は、今幸せだ。




 ……いろいろ意味の分からないことがあったけど、破滅回避して、みんなと仲良くて、好きな人と結ばれて、今幸せだから――終わり良ければすべて良し、でいいよね!




 安直な結論――けれど、大事なことだと私は思う――にたどり着いて、私は大きく幸せの溜息を吐いて、幸せへの第一歩を踏み出した。





お読みいただきありがとうございます。


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悪役令嬢は断頭台で、生まれて初めて微笑んだ←マリーちゃんの関係者が出てくる短編です!
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