30話.恋心を自覚しましたが私は悪役令嬢ですどうしましょう
焦れの回。
祝、六万字!!
短めです。
『その、………………………私、アドラー様が思っているよりずっと、アドラー様のことが、……す、好きですよ?』
あの、フィリップに会って、私がアドラーにそう言った日から、私の心の中はいろいろな感情で埋め尽くされていた。
言葉にしたその瞬間から、自分の本当の――今まで目を背け続けていた――気持ちに気づいてしまったのだ。
……私、アドラー様のことが好きなんだ。
違う世界の、アイドル的存在としてではなく、同じ世界にいる、私と同じ1人の人間として。
……はぁ。
最近ずっと、このことで悩んでいる。暇さえあれば――今だったら寝る前に――考えて溜息を吐いてしまう。
今は、3年生の冬。卒業まではあとひと月ほどで、それがまた私を悩まさせる原因の1つになっていた。
断罪イベントまであと少しなのだ。ハッピーエンドまで、あと少し。
断罪の心配もある。今まで築き上げてきた関係が、たった一瞬で壊れるなんて、思いたくもなかった。
けれど、たとえ断罪を免れても、アドラーとマリーの関係と、マリーのハッピーエンドは免れない。
自分で導いたことのはずなのに、ハッピーエンドになることを躊躇ってしまう自分が嫌で、私は自分の両頬を思い切り叩いた。
「お嬢様、最近ずっとそんな調子ですが、何かあったのですか」
同じ部屋に居たミラに話しかけられる。ずっと話しかけたかったけれど、いろいろ察して先送りにしていたらしい。
「私、悩みがあるんだけど。欲しいものがあって、それは他の人が持ってるんだけど、私はどうしてもほしいの」
うぅ、我ながら説明下手。
けれどこれで、ミラは私が何を欲しいか、何を言おうとしているかがわかったらしい。優秀すぎてちょっと怖い。
「それならば、当たって砕ければどうでしょう?思い切ってやってみることが、なにか成功に繋がるかもしれません」
当たって砕けろ、か。恋の悩みでよく聞くフレーズに、私は一理あるかもしれないと思い、しばし考える。
……そうだよね、アドラー様がマリーちゃんのことが好きでも、いやだからこそ、想いを伝えてフラれた方が、マシだよね……?
けれど、本当にそんなことをしていいのだろうか。
少し浮上して、また落ちた気分を紛らわせるように、私は大きく背伸びをする。
……最後くらいは、私、ライラ・メルヴィル悪役令嬢、精一杯役目を務めさせていただきますわ!
そう思って、とりあえず寝ることにした。
お読みいただきありがとうございます。
ミラ:(これでアドラー王子と上手くいけばよいのですが……。いろいろアドラー王子、不憫でしたから……)
ライラ:(想いを伝えるくらい、いいよね……?)
見事にすれ違っています。気分は失恋ものを書いていた時。
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