27話.ピクニック
「ライラお嬢様、アイラ様、いってらっしゃいませ」
ミラの声が聞こえる。この内容から察せられる通り、私とアイラは今から出かけるのだ。
それも、アドラー、マリー、ミサ、アーノルドと一緒に、ピクニックに。
……もう私は驚かないよ。いろいろありすぎて感覚が麻痺してんの。……え、このくらい普通でしょ?
なぜこうなったかというと、またまたマリーが、「今度こそ2人きりでお出かけとかしたいです!」って言って、それにアドラーとミサとアーノルドが反応して、みんな行くって言って、それをアイラに言うと「俺も一緒に行く」ですよ。はぁ。
ちなみに、行先は流れで、近くの山にピクニックに決まった。
今から片道30分(普通に近い)かけて、アイラと馬車で行く。現地集合なので、他のみんなは自分の家の馬車で来ているはずだ。
屋敷の門を開けると、なぜかアドラーがいた。
………………んん?現地集合、じゃなかったっけ?
二度見する。やはりいた。
…………おかしいな。いるんだけど。
仕方なくアイラが声をかける。
「アドラー王子、現地集合ではなかったでしょうか」
アイラがそう言うと、アドラーはわざとらしく驚き、首をかしげた。
「……え?あ、あ。そうだった!すみません、間違えたみたいで」
そう言ったアドラーは、あくまで純粋な青少年を演じていた。
……これは絶対わざとだ。
え、ちょっと待って。またあのギスギスした雰囲気の2人に挟まれるの?
アドラーの方を見る。馬車はなかった。外からガタガタという音は聞こえてこなかったので、帰らせたわけではなさそうだった。ご丁寧に歩いてきたらしい。意味がわからない。
◇◇◇◇◇
到着した。まぁ馬車の雰囲気は前みたいなやつだ。それでわかってくれ。30分はマジで長かった。
天気はまさにピクニック日和!と叫びたくなるような快晴で、風も吹いているが、心地よい程度だ。
「ライラ様!少し遅かったですね――………………………は?」
到着と同時に出迎えて(?)くれたのはマリーだ。
しかし遅かったとは。私、これでも10分前には着いたんだけど、貴女いつ来たの?
マリーはアドラーを見ると固まった。そしてしばしアドラーを睨みながら、手を頬に当て微笑む。
「アドラー様、あとで少しこちらに来てくださいません?」
わかりやすい嫉妬の言葉に、私は頬が緩むのを感じた。相変わらず仲良しで何よりだ。
「ん?あ、あぁ」
アドラーは戸惑いつつも、素直に了承の返事を口にしていた。
◇◇◇◇◇
全員揃ったところで昼ごはんだ。
私はお弁当の蓋を開け、その匂いを楽しむ。
他のみんなのお弁当を見ると、やはり前世の普通のお弁当より数倍は豪華だった。
ちなみに私は料理人に頼んで、前世のお弁当らしいものを作ってもらっていた。
「まぁ、ライラ様。それはどのような味なのですか?」
早速質問してきたのはマリーだ。
「食べてみればわかりますよ」
私はそう言って玉子焼きをマリーに渡す。マリーが美味しそうに頬張っている横で、ミサが物ほしそうに玉子焼きを見つめているのがわかった。
「ミサにはこれね」
ミサにはたこさんウィンナーをあげた。その形には料理人がとてもこだわっていたので、とても可愛らしいたこになっている。
「ライラ、俺にもくれ」
そう素直にねだったのはアイラ。兄妹といってもお弁当の好みは違うので、中身は違うのだ。
男性には肉がいいよなと思い、肉団子をあげる。
「……」
子犬のようなウルウルとした目でこちらを見つめてくるのはアーノルド。だからキャラ変わりすぎだろ。役者が向いていると思った。
仕方なくあげる。といっても、もうおかずの種類がないので、切り干し大根をあげた。アーノルドは少し不満そうだが、切り干し大根は美味しいのだ。私が最後に食べようと思っていたのに。
「ライラ」
アドラーに呼ばれる。あ、そういえばあげてないやと思い、もうおかずの種類がないんですよと言おうとして振り向くと、アドラーにキスをされた。
……は?
お読みいただきありがとうございます。私は切り干し大根と玉子焼きが好きです。
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