26話.お兄様とアドラー様はなぜ張り合っているのです?
あ、もうすぐ40話ですが、あれです、番外編は含まないので。このやり方だと、今はまだ26話なのです。(けど、3分の1が番外編という……)
祝、五万字!
はい、なぜか突然ヒロインとヒーロー様が私の屋敷にくることになりました。なお、その件について私のことを大嫌いなはずのお兄様が荒れています。一体どうなってしまったのでしょうか。
おお、既にラノベのタイトルになりそう。『~』入れたら普通にありそう。
うん、ふざけてると思われそうだけどこれで全て説明したんだよ。まぁ正確に言うと、突然というか、なんというか、1週間前に、マリーと話してたら、「今度は私一人でお屋敷に行きたいです!」と言われ。そして通りがかったアドラーが「抜け駆けはいけないぞ、スコット男爵令嬢。俺も行く」となり。2人の圧に耐えきれず、仕方なく招くことに。
そして、それをアイラに言うと、なぜか様子がおかしくなった。小説の中の穏やかな感じとは違いいつも冷静沈着なアイラが、よそ見して柱にぶつかったり、ぶつぶつ呟いて鬼のような形相で空を睨んだりすれば、おかしいと思うのは当たり前で。
うん。おかしい、明らかにおかしい。
そして屋敷に来るのが今日、時刻はもうすぐ……直前報告(何それ)ですみません。
シャララララララッ。
玄関のチャイム……というか鈴が鳴った。お母様とお父様が、変なところでこだわって、選りすぐっているので、その音質はとても良い。
それより……いよいよ、ヒロインとヒーロー、主要メンバー陣が来た。
「お、おおおお邪魔しますっ」
「失礼します」
玄関からそんな声が聞こえてきた。マリーはもう2回目になるはずなのに初めて来たかのようにとても緊張した声。アドラーはいつも通り、帝国の王子として相応な、落ち着いた声だった。
「いらっしゃいませ、アドラー王子、マリー・スコット男爵令嬢」
なぜか、なぜかミラではなくアイラが迎えているのですが。アイラが、少し尖った声で歓迎しているのですが。
うん、なぜだろう。尖った声はまだわかる、マリーのことで、アドラーに対抗意識を燃やしていると考えれば。それだけ2人の仲が進展していると考えれば、むしろいいことだと思う。……けどさ、なぜにあなたがおむかえしたのですか?
まぁいい、前にもう、この世界は意味のわからないことで埋め尽くされている、って勉強したばかりだし、気にしない気にしない。
◇◇◇◇◇
「あ、お茶を淹れてきましたよ」
珍しく――と言っては失礼だが――ミラが気を利かせてお茶を淹れてきたとやんわり話しかけても、2人の間に満ちるピリピリとした空気は和らがなかった。
「じゃあ、この問題をやってみて、ライラ」
なぜか本の中の穏やかモードで、なぜか会話に参加しているアイラが、なぜか勉強会となった我が家の居間で、なぜか少し尖った声で私にそう言う。
私が解くと、またその穏やかモードでアイラが私を大袈裟に褒める。
「さすが僕の妹だね、鼻が高いよ」
そう言ってアイラは私の頭を撫でてくる。率直に言って怖い。
そして、なぜかその言葉にアドラーはすごく反応し、アイラを睨みつけている。率直に言わなくても怖い。
「僕の婚約者でもあるんですけどね?」
なぜそこで張り合った。怖い。
そして、マリーは2人の雰囲気からいろいろ察したらしくミラとしゃべっている。さすがヒロイン。気遣いのできる子だ。けれど、その気遣いを私にもちょっとは向けてほしかったなと思う。挟まれるのは辛い。
「マリー、私ともしゃべりませんか?」
「え、いいですよもちろ――……」
そう、了承しかけたマリーは、後ろを見てぴたりと固まる。
恐る恐る振り向くと、そこにはまさに鬼だとしか思えないような顔のアドラーとアイラがいた。そういうところだけ仲良しだ。怖い。
「わ、わたしはいいのでお2人とお話ししてくださいませ!」
すぐに前言撤回をしたマリー。
うん。身分差からそう言うしかないのはわかる。……けど、怖いから私も混ぜてほしいなぁなんて。
マリーがそう言うとアドラーとアイラはにっこりと微笑んだ。とても綺麗な笑みであるはずなのに、なぜかとても怖い。
「さすが、メルヴィル公爵家令息の、妹ですね?僕もよく、彼女の気遣いに救われるんですよ」
「そうでしょう、義理の婚約者にも丁寧な対応ができるんですよ、僕の家族は」
何を張り合ってるの?怖い。
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