24話.この世の中は意味のわからないことで埋め尽くされている
まさかのあの人とデート回♪です。
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「ライラ、か、買い物に行くぞ」
新学年突入から5日が経った、学校お休みの今日の朝、なぜか上ずった声でアイラが私にそう言った。
……はて。買い物とは。
「はぁ、わかりました」
私はそう言って了承したが、そもそもその買い物とは何をするのかわからない。
私達に必要なもので、大抵……というかほとんどのものはメイド達が買ってくる。つまり、私達が店に行って買いに行かないといけないものなど、本当に、魔法に必要な超高級品くらいしかない。……それでも、家に商人を呼べば一発OKだというのに。
だから実質、高位貴族が街に買い物に行く必要などこれっぽちも、一ミクロンもないのだ。
……それなのに、お兄様はどこに何を買いに行くんだろう。
メイドはアイラとお出かけということで張り切っている。派手にしたら身元がバレるのでは?と思わなくもないが、まあメイドの判断なので私があれこれ言う必要もないだろう。
「ライラ、それはさすがに……」
着飾りすぎでは?と続けようとしたアイラの気持ちはめちゃくちゃわかる。
だって私、あの新入生入学祝いパーティーくらい派手というか、なんか着飾ってるのよ。
上品なんだけど、超目立つだろって恰好なわけよ。
街を歩くなら、一応お忍びなのに、こんなに目立っていいのかなって感じの服装。
私がアイラを見ると、なぜかアイラは赤面していた。
なぜだ。なぜそうなった。あれか。破廉恥だったのか。そんなに胸元も開いてないし、足も露出してないんだけど。
それとも、またあの、アイラ十八番の『メルヴィル公爵家の恥……』ってやつか。どれが正解なんだ。
今気づいたんだけど。……これって、ラノベでよくある、俗に言う”お忍びデート”というやつなのでは?
◇◇◇◇◇
「ライラ、あれを食べよう」
「口にクリームがついてるぞ」
「はぐれないように、つ、つかまっておけ」
おかしい。これは絶対におかしい。なぜアイラが私に、お忍びデート鉄板のあれこれを言ってるの!?
「あれを食べよう」だなんてお忍びデートイベントの台詞定番中の定番だし、「口にクリームがついている」と言ってとってあげるのとか、「はぐれないようにつかまっておけ」と言って腕を組むのなんてあくまつの番外編のアドラーとマリーのお忍びデートで見た。
あ、わかった!これは、盛大なドッキリですね!?お兄様が普段の私の言動に嫌気が差して、こんなことをしたんですね!?
そうとわかれば、だ。
私、ライラ・メルヴィルは、騙されているフリをしてあげようじゃないか!
そう、改めて思えばバカでしかないことを決意した私は、演技派女優になってやるぞと無駄に意気込んでいた。
◇◇◇◇◇
「ライラ、危ない!」
石につまずいて転びかけた私を、アイラが抱きかかえ、支えてくれた。
…………………………ん?
石につまずいて転びかけた私を、アイラが抱きかかえ、支えてくれた。そしてそのアイラは今、こちらを向いてなぜか赤面している。
………………………………………ん?
石につまずいて転びかけた私を、アイラが抱きかかえ、支えてくれた。そしてそのアイラは今、こちらを向いてなぜか赤面している。私はその、近くに見えたアイラの顔を、不覚にも、「かっこいい」と思ってしまった。
…………………………………………………ん?
あれぇ、おかしいなぁ、なんかいろいろおかしい。
支えてくれた?お兄様は悪役令嬢を見放した方がいいんじゃないの?
そしてなぜ赤面してるの?あ、最近ちょっと暑くなってきたもんね。謎は解けた。
けど、なんで私がお兄様のことを、「かっこいい」と思っているのだろうか。支えてくれたからかな?
わからないことが増えすぎたので、私は考えることを放棄した。
アイラを見上げると、目が合った。お互い目を慌てて逸らした。どこかギクシャクとした雰囲気になる。
私とアイラは、そのギクシャクとしたぎこちない雰囲気のまま、屋敷に帰った。
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