番外編.ローズ視点 500年前
「もう、何やってんだか……っ!」
罪を犯し処刑された幼馴染を見て、思わず令嬢に相応しくない声が出てしまう。
最後は美しく、儚く微笑んだ好敵手の姿に、体が勝手に動いてしまった。
……闇の魔法【封印されし記憶】。
心の中で呪文を唱え、私は教会に集まっている人々に手をかざす。
それは、私の記憶さえも封印してしまう、禁断の魔法だった。
☆☆☆☆☆
「こんにちは、ローズ・メルヴィルさま。本日はお招きいただきありがとうございます」
私とミランダが五歳だったころ、私のお茶会にミランダが招かれた。
幼さは残るものの、淑女として完璧なカーテシーをして見せたミランダの存在は、まさに青天の霹靂だった。
五歳にしてここまで礼儀作法を身につけるなんて素晴らしい、と褒められていた私より完璧なカーテシーをしたミランダに、負けず嫌いだった私が対抗するのも、また仕方のないことで。
「ふふん、今回、わたくしはなんと、九十七点でしたのよ!」
「見なさいよ、この私の、優雅で完璧なダンスを!」
「私は新入生から十八本もバラをもらったのよ!」
今思うと迷惑だった言葉を私はミランダに言いまくり、何でも張り合いその度にことごとく打ち負かされていた。
ミランダは聖女を目指していた。ミランダが目指すなら私も、と思い目指そうとしたが、私には無理だった。
私は、”闇”の属性を持っていたから。光や聖の属性と対照的な関係にある、呪いの類が多いとされる属性。禁止されている魔法もいくつかある。だから闇の属性は聖女に相応しくないとされていて。
そして、そのミランダの目標は”聖”の属性を手に入れることだった。
……けれど、ある日。とある男爵令嬢が聖の属性を持っていると発覚した日から、ミランダは変わった。
男爵令嬢は、婚約者のアラン王子が現を抜かしていて、しかも幸せな家庭で育った子だった。
ミランダの家に特殊な事情があるのは知っている。けれど私はあえて、普通に接していた。きっと特別に扱われるのは嫌だと思うから。
ミランダはその日から男爵令嬢をいじめるようになった。そんなことをしてもミランダの得にはならないと思った私は、いじめをやめさせたかった。
「またそんなくだらないことをしているの?メルヴィル公爵家も落ちたわね!」
素直になれない私はそんなことを言い、いじめをやめさせようとした。
けれど、結局ミランダがいじめをやめることはなく――聖女をいじめた罪で、断頭台で処刑されることになった。
最後に、何を思ったか――美しく、儚く微笑んだ、好敵手――幼馴染――いや、もう認めよう、私の友達の姿に、私の感情が動く。
そして、自らの記憶もを封じ込めようと、禁断とされている魔法を使った。
ごめんなさいっ!置いてきぼりになってる方々、本当に申し訳ございません!ただ、異世界にするならこれは絶対書きたかったという自己満です。本当にすみません……
明日からやっと本編です。ちょっと恋愛要素高くなるかも……。
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