番外編.マリー視点 貴女は前も(1)
あああああ、やっと書きたかったとこだ……!ここまで書けた……!
ライラ様が落ちていく。
「え……?」
ライラ様を突き落とした令嬢――正確にはわたしを突き落とそうとして失敗した――が驚いたような顔でその風景を呆然と眺めていた。
なぜこんなことになったかというと――理由は少し前に遡る。
☆☆☆☆☆
「スコットさん、少しこちらに来てくださいません?」
クラスメイトの伯爵令嬢が、お淑やかに歩いてきて言う。その後ろには取り巻きさんがいて、ああ、これは恋愛小説によくあるアレだなと即座に理解した。
と言ってもわたしは男爵令嬢なので誘いを断ることなんて出来るわけもないので、大人しくついていく。
なぜかトイレの裏――しかも崖になっているところに連れてこられるや否や、わたしはその令嬢と取り巻きさん達から罵声を浴びた。
「スコットさん……わたくし達の言いたいこと、理解しておられますよね?」
ライラ様と仲良くしているからという話だとは思う。ライラ様の魅力が伝わっているのはいいことだと思うが、こうやって人を集団で囲んで圧をかけるような人はなるべく近づけたくない。
だからあえて空気を読まずに黙っておいた。
「男爵令嬢ごときがメルヴィル様と仲睦まじくしゃべるなんて厚かましいのよ!」
「ドレスまで作らせて……メルヴィル様が少し汚したからって弁償してもらうなんて醜い根性してるわね!!男爵令嬢には汚れたドレスがお似合いよ!!」
「だいたい名前まで呼んで……恥ずかしいと思わないの!?」
こういうときは黙って静かに耐えておくのが正解だと知っているので、わたしは黙っておく。けれど、まるでライラ様が悪趣味というような発言はいただけないなと思った。
そして、何を思ったか――伯爵令嬢がわたしの体をドンッと押した。ちょうど崖になっていたので、
わたしの体は真っ逆さまに落ちていこうとしていた――が、と、そこに、いつから見ていたのかわからないが――ライラ様がいた。そしてライラ様は、わたしの体を跳ね除けて、代わりに自分が落ちていった。
――――――そして冒頭に戻る。
……なんでライラ様はわたしを庇ったんだろう?
その疑問がわたしの頭の中で渦のようにぐるぐると回る。
わたしを庇って、ライラ様は落ちた。ライラ様は今大丈夫だろうか?
わたしがそんなことを考えていると、その伯爵令嬢と取り巻きさん達が慌てたように集合場所に戻っていった。何事もなかったことにするつもりらしい。
……それだけは絶対に許せない。
わたしは、ライラ様のことを語り合う仲になった、殿下に話をすることにした。
ライラ様のことを殿下に伝えると、殿下は急いで先生に伝えに行った。
「ライラ様……っ!」
ライラ様が崖の下から上がってきた。その姿はボロボロで、わたしの目には思わず涙が浮かんだ。
どうしようもなく感謝の気持ちが溢れてくる。
「ライラ様、本当に、ありがとうございました」
わたしは感謝の気持ちを込めて、深々と頭を下げた。
お読みいただきありがとうございます。タイトルからお察しの通り、(2)まで行きます。
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