3話.待ちに待った初の会話です
あとは……作戦だけど、まあ、周りの人に事情聴取してからのほうがいいよね?
ちなみに、私が最初に起きた時に顔を覗き込んでたお兄様だけど、もう少し休むと言ってお仕事に戻ってもらった。まぁ、あのイケメンフェイスにずっと見られているより、使用人さんにあれこれ聞きまわったほうがよほど有意義な時間を過ごせるはずだ。
うん、たぶん謹慎くらってるんだろうなと思う。『あくまつ』の世界のライラは、問題を起こすたびに謹慎くらって、お兄様を呼び出して、わがまま言ってたし。お兄様、私はそんな子じゃないです!
え、そこにいる美人な使用人さん……ライラ視点で出てきてたライラの右腕みたいな人じゃない?確か……ミラ、だったっけ?ふう、良かった、名前知っている人いて。貴女の名前は?なんて聞いたら、本当に頭おかしくなったのかと思われちゃう。
じゃあ、皆様お待ちかねの、私、ホントに悪役令嬢に転生したのかな?確認コーナーですよ!話しかけて来ます!
私はベットの中にすっぽりとおさまっていた体を起こして、ミラのいる方を向く。都合のいいことに、今はミラ以外の使用人はいない。
「あの、ミラ」
「なんでしょうか、お嬢様」
うっひゃ――!お嬢様だって!お嬢様呼びだよ!?前世ではそんなの呼ばれたことないから、アラサーはしゃいじゃう!
うん、おふざけはここまでにします。それより、まずは名前確認だよ!まあ、ミラの名前が合ってたんだからさすがにライラじゃないってことはn……
「なんでしょうか、ライラお嬢様」
ミラにネタバレされたぁーー!!
反応がなかったから名前でもう一度呼ぶのはいいことだと思うけど、ネタバレはダメだよネタバレは!私が付け足すところがあるとすれば、ライラのフルネームはライラ・メルヴィルだということくらいだ。
気を取り直して次は……謹慎の理由、かなぁ。バリバリ日が差してるし、ただ単に昼寝をしていた、というわけではないだろう。
「あの……今から変なこと聞いていい?」
「……?いいですけど……」
さっきまで……普段もとても無表情であろうミラの顔が、普段はやかましくてわがままな私が急に大人しくなったことを疑っているような、変なこととはなんだろうと勘ぐっているような、疑惑に満ちたものに変わる。薄い氷を張ったような美しい水色の色の瞳が、静かにこっちを見つめている。
……ミラさん、そんなまるでここが修羅場みたいな顔しなくても。
「なんで、私、昼間なのに寝てたの?」
ミラが考え込むような仕草をする。私にどう伝えようか考えているみたいだ。
私に言えないような理由なのかな?なんか緊張してきた。ていうかさっきからミラの仕草の描写多いなおい。なぜだ!?やっぱり、ミラが美人だからか!?なんて、そんなわけないよね~。美人でいったら、ライラも一応は美人なわけだし。
ミラさん、私に何ていうか決まったみたい。
「お嬢様……。それは、明日から魔法学園に入学することに興奮したお嬢様が、朝風呂をすると言い、昨日は雨だったのですべりますよと言ったにもかかわらず、すべった責任を侍女に押し付け、当主様がお怒りになり、休養と謹慎の意味を込めて半日部屋にこもらせよと命令なさったからです」
うわぁ……すべったって……なにその理由。恥ずかし。
……ん?ミラさん、なんか最初の方に大事なこと言わなかった?なんか、入学がどうこうって……。うん、言った。魔法学園に、明日から入学?
前世で頭がおそまつで基本的にライトノベルしか読んでいなかった私にはその言葉を理解するのに数秒かかった。
……はい?
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