20話.お兄様
一ついいたいこと:お兄様は違いますから!(((何が?
とりあえず一番忙しいと思われるところまでは予約投稿できて安心です。
「お兄様、どうかされましたか?」
家に帰って課題をしていると、アイラがずっと私の方を見ているので、仕方なく手元を止めてアイラに質問した。
「いや、最近、お前は変わったなと」
「そうですかね?」
いや、そりゃ変わったと言えば変わっただろう。だって、心が違う人間になったのだから。けれど、ここはあえて空気を読まずそう言っておく。
「あぁ、変わった。前のお前は、勉強も真面目にせず、口を開けば立場が上の人間に媚びるか下の者に怒鳴り散らすかで、我儘ばかりで、教養もなく、服の趣味も悪く、嫌われ者で、メルヴィル公爵家の恥さらしで、そして、」
なぜかアイラの言葉はそこで止まる。
……それにしても、聞けば聞くほど前の私ってひどい人間だったなぁ。
「…………そして、俺のことが嫌いで、暴言を吐いていた」
ぽつり、と、言葉を紡いだアイラの声が、表情が、姿が、どこか悲しげで――
「お前は今も、俺のことが、嫌いだろう?」
そう、どこか自嘲するような悲しげな笑みでアイラはそう言った。
「……お兄、様?」
……『義妹であるライラが(お兄様は元々侯爵家の息子だったがお父様が優秀さを見込んで養子にした)お兄様を見下してさんざんわがままを言ってきたからだとか。』
脳裏をよぎるのは、転生した時思い出した、アイラの過去。
そっか、お兄様は、いつも、私に、振り回されてきて……。
――『相変わらず趣味が悪いな』
――『メルヴィル公爵家の恥になるから――』
――『何でいつも俺がこいつを運ばないといけないんだよ』
そう不満をこぼしながらも、いつも公爵家のために、そして大嫌いな私のためにアイラは行動してくれた。
そのアイラに、前の私が失礼なことを、本当に愚かなことをしてしまったというのなら――
「申し訳ございません。本当に無礼な行いをしていました。深くお詫び申し上げます」
私がしなければならないのは、アイラへの誠意のこもった謝罪だ。
「ラ、ライラ、別に今のは、謝罪を求めて言った訳じゃない」
その謝罪を聞くと、アイラは少し慌てたような声でそう言った。
「お兄様、前の私がどうだったとしても、今の私は、メルヴィル公爵家のために、大嫌いな私のために行動してくれるお兄様が、だ、大好きですから」
そう言って微笑めば、アイラは驚いたような、不思議そうな顔をして、こっちを見つめてきた。
その後ずっと上機嫌だったんだけど……何があったんだろうね?
お読みいただきありがとうございます。
ミラ:「お嬢様、ああいうことを殿方に軽々しく言うのではありません。しかも婚約者のいる身ならなおさらです……」
ライラ:「え、そんなにダメなことだった?」
メイド&執事一同:「はぁ……」
明日はお兄様視点の予定。また長くなるかも……。あ、午前6時投稿です。
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