番外編.ミサ視点 公爵家へのお招きとメルヴィル様と推し談義(3)
「わたくし、とある本の悪役令嬢なのですが……破滅フラグを回避すべく日々頑張っているのです」
そのメルヴィル様の言葉に、驚きと小さな疑いでまた体が強張った。
「え……?にわかには信じられませんが……本当なのですよね?転生者じゃない人が乙女ゲームや日本のことを知っているはずもないですし……。それにしても、悪役令嬢ですか、いいですね」
私はその、以前ハマっていた乙女ゲームの主人公だった。主人公が悪役令嬢に転生してバッドエンドを回避する小説を読んでいたため、逆にざまぁとかされて断罪されるのではと思っていたので、悪役令嬢に転生したというメルヴィル様が逆に羨ましい。
「悪役令嬢がいいなんてとんでもないですよ!?私なんて日々破滅と戦ってるんですから!」
「けれど、大体回避出来るじゃないですか!私なんて主人公に転生してしまったから、逆にざまぁされないか怖くて怖くて……」
「それは本の話です!本当は回避とかほぼ無理ですよ!無理ゲー!私なんてですね、転生してから半日で入学式だったんですよ!?準備期間も魅力もないのに、どうやって回避しろと!?と神様を恨みました」
準備期間が半日……めっちゃきつそうでびっくりした。本だとどんなに短くても1年くらいはあるのに。
「まぁ、それはそれは……。けれどこの世界それにしてもイケメンパラダイス(死語)ですよね!第一王子や第三王子見た時には吹きました!イケメンすぎて!攻略対象のアーノルドも超美少年だし、やっぱり主人公っていいですよね!」
「あぁ、羨ましいです……私前世ではアドラー様推しだったんですっ!だから、婚約者であれて本っ当に嬉しいことなんです!推しの婚約者ですよ!?いつも登下校一緒ですよ!?ダンスの時めっちゃ密着したんですよ!?ヤバかった!本当にヤバかった!」
共感できる部分ばかりで、私はちょっと胃を痛くしながらもメルヴィル公爵家の屋敷に来た甲斐があったと私は思った。
「へぇ、推しの婚約者……私の推しは、ワンコ系美少年と言われていた、ルイス様だったんですよ!いやもう尊すぎて尊すぎて。私今、全力でルイス様にアタックしてるんです!」
「大丈夫、ミサさんならきっと大丈夫だわ!けれど、ルイス様ってどちらかと言えばマイナーな方でしたよね?」
「えぇ!?確かにそうですけど、あの尊さ!あの体から滲み出る尊さ!半端じゃないです!」
「……え、うん、そうね。ところで、ミサさんはいつから転生していたの?」
こんな話に共感してくれる同志がいることが、嬉しくて仕方がない。
「えぇっとですね、私は5歳の時から――」
私は、ミラさんの、「身分差を忘れずに」という注意を忘れて話に夢中になっていた。
……メルヴィル様、見た目によらず気さくな方だったな。推し談義は物凄く有意義な時間だったし。またしゃべれたらいいな。
お読みいただきありがとうございます。次回からはライラ視点に戻ります。まぁ、そのすぐあとにお兄様視点になったりするんですが……ごにょごにょ。
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