番外編.ミサ視点 公爵家へのお招きとメルヴィル様と推し談義(2)
(3)まで逝きます……じゃなかった、いきます……
「うわぁ、豪華なお屋敷……」
私は放課後、メルヴィル公爵家のお屋敷の前で、思わずそんな言葉を漏らしていた。
庭だけで私の家より何倍もあって、迷子になりそうなお屋敷。
豪華だが、上品さを忘れない装飾。
門に立って辺りを見回すだけでこうなのだから、中はもっと広くて豪華に違いない。
「ミサ様、ようこそメルヴィル公爵家へ」
「ほわぁ……」
門に立っていると、上品で美人で物静かそうなメイドさんが来て、屋敷を案内してくれた。
……わあ、「様」呼びだよ「様」呼び!めっちゃくすぐったい!
「では、ライラお嬢様のお部屋はこちらです」
……はい?
……え、ちょっと待って聞いてないけど!?お部屋に招かれるとか聞いてないけど!?せいぜい客間にご案内とかだと思ってた!何それ!?
驚きで硬直している私に、メイドさん――ミラさんは、更に爆弾を落とした。
「そして、ライラお嬢様には、2人きりでミサ様と話したいと言われています故、わたくし達メイドはお部屋に入ることが出来ません。お客様にこんなことを言うのは心苦しいのですが、くれぐれも、身分差を忘れないようにくださいませ」
……うん、身分差は、当たり前だよね。
けど、なんで、2人きり!?え、ちょっと待って、本当に意味わかんない。殺されたりしないよね?
さすがに、日本でもマイペースと言われていた私でも、動揺せざるを得ない展開になってきたんだけど。
◇◇◇◇◇
「ジャーディンさん、いいえ、ミサさん、貴女も……転生者、なのでしょう?」
そう言ってのけたメルヴィル様に、私は驚きを隠せない。なぜメルヴィル様がそれを知っているのだろうか。思わず顔が強張った。
『日本』『悪役令嬢』『乙女ゲーム』『ごく普通の乙女ゲームです!』
さっきメルヴィル様が言った言葉は、私が前世生きていた世界で、住んでいた国で、使われていた言葉。
「日本」は私が住んでいた国の名前で、「悪役令嬢」は流行っていたライトノベルで出てくる一種の職業みたいなもの。「乙女ゲーム」とは恋愛シミュレーションゲームのことで、ここにはない。「ごく普通の乙女ゲームです!」とはその私が一番ハマっていた乙女ゲームのタイトル。
どれも、日本にいた人……ではなくても、あの世界にいた人じゃないと知らないことだ。それを知っているということは、メルヴィル様も……
「わたくし、とある本の悪役令嬢なのですが……破滅フラグを回避すべく日々頑張っているのです」
そう続けたメルヴィル様の言葉は、にわかには信じがたいものだった。
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